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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第1章 水の行方 (アイ視点)
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7 人工繁殖の処置

SFですが、ちょっと重めな設定かもしれません。

でも、なんとしてもハッピーエンドにしてやる! と思って頑張って書きます。

どうぞよろしくお願いします。

 部屋の入れ替えがあって、私はミセスの部屋のそばの個室に移った。

 これは大変ありがたい。

 

 ミアとハルが第1グループの空き個室に入った。


 第2グループの男性はそのまま個室を移動せず、シフトでペアを固定せずに回していったり、食事を一緒に取るようにしたりしていくらしい。


 私はミアとカイとササキの時のみシフトに入れてもらうことにした。

 ハルとミクラと第1グループとはあまり関わりたくないと思ったから。

 何、言われるかわかんないし……。

 ハルにはまたいろいろ言われて、勝手に泣かれても困るし……。


 それで、ミアとカイとササキからグループの様子を聞いたりしてたけど……。


 カイとササキは絶対にハルとミクラとはシフト交換しないと約束してくれた。

 ハルが私のことを勝手だとか冷たいとか、守ってくれないとか、無視されてるとか、私の愚痴というか、もう悪口をたくさん言っているそうで、本当に私と関わらせない方がいいなと思ってくれたみたい。


「ハルって、あんなことも言うのな」

 カイはミアと私の話も聞いてるから、まあ両方の話を突き合わせて、驚いたみたい。


「あまりにもアイのことを悪く言うから、みんなもう聞きたくなくて、シフト終わりや食事が終わるとすぐ部屋に戻るようになっちゃってさ。

 それについても文句言ってて。

 いいかげん、みんなうんざりしてるよ。

 でも、何でミクラと代わるのもダメなの?」

「うん、変わったことが知れたら、ハルにさらに何言われるか……」

「それもそうだな」


 ミアもハルとミクラには断ってくれてたけど、一度だけどうしてもと頼まれて……と謝られて、アレクとシフトになったことがあった。


 その時は自然繁殖に切り替えてパートナーになってくれないかと単刀直入に言われたけど、もう繁殖スケジュールが決まったので無理です、と説明して断った。


 ごくたまにハルには出会うけど睨んでくる。

 こちらから挨拶だけはするけど、私は睨まれる筋合いはないっての!


 ミクラも何もなかったかのように普通だ。

 でも、私は挨拶しかしない。


 合同グループのパートナー決めが長期戦の様相を見せていた中、第2グループは16歳になったそう。

 私達に誕生日という概念はないけど、普通の人間なら誕生日が大切なものだという認識はある。

 16歳になったことで、私の人工繁殖処置の日が予定された。


 チビアイが私の生理周期と体温や体調など把握管理しているから、生理周期のデータが揃ってきて排卵予測が立てられるようになったんだって。


 その前日、ミアとカイが話をしに来てくれた。

 さすがの私も不安になって、緊張して、落ち込んでた。


 ミアに抱きついて、ちょっと泣いてしまった。


 カイがびっくりしてて「何で?」と言うので……。


「カイだったら平気?

 いくら麻酔掛けられてるとはいえ……。

 身体の中にカテーテル通されてさ……。

 それも、うーん、カイだったら、尿道にカテーテル入れられるようなもんだよっ!

 そう考えたら、怖いじゃんか!」

「確かに、怖い……、考えたくない……。

 考えただけで痛そう……。

 でも、前に知ってるから平気だって言ってたじゃん!」

「言ったよ、言ったけどさ……。

 知ってても、怖いものは怖いよ……」

「じゃあ、やめれば?」

「やめないよ! 死ぬ気で我慢する!

 あー、頑張る……」


 ミアとカイは処置が終わったら、お菓子を持って部屋に見舞いに行くから、頑張れよと言って帰っていった。


 当日……、ミセスBに付き添われて処置室に行った。

 風呂に入り手術着に着替えてくるように言われる。

 何で風呂? と思ったけど、顔に出てたみたいで「身体を温めてきて」と言われた。

 そういうものなのか?

 まあ身体は冷やさない方がいいけど……。

 銀色に光る、金属の処置台を見て、私はゾッとした。


 液体状の飲み薬を渡される。

「麻酔の効きが良くなる薬だから、飲んで」


 そんな薬あったかなあ。

 でも、錠剤やカプセルじゃないから、薬の名はわからない……。

 私は躊躇した。


「人工繁殖、やめる?」

 ミセスBに期待したようにそう聞かれて、反射的に薬を飲み干した。


 まずっ。

「う……、うがいしても大丈夫?」

「ええ、飲み込んだならうがいしても水を飲んでも大丈夫よ」


 風呂の洗面台でめっちゃうがいしてから、シャワーで頭と体を洗い、湯船に浸かっていたら、猛烈に眠くなってきた。

 あれ、これ、何か……。

 まだ、前段階の導入の薬のはずなのに、効き過ぎてるんじゃ?!

 私の体質に合わなかったとか?


 ヤバいと思って、湯船から出ようとして、座った状態で手を外に出そうとして、ふらついて壁を叩いてしまった。

 身体に水の浮力を感じる。……身体に力が入らなくなってきてる。

 ずるっと足とお尻が滑って、仰向けになり、頭が、髪がお湯に浮く感覚がした。

 

 頭の中に……、水に漂うオフィーリアの絵画が浮かんだ。

 ハムレットの話、あまり好きじゃない。

 オフィーリアが好きだから、俺を忘れて幸せになれじゃなくて、誰とも愛し合うなと尼寺に行けと言った、ハムレット……。

 オフィーリアが死んでから、愛してたって言ったって、さぁ。


 私がここで死んだら……。

 でも、私はオフィーリアじゃない。

 私はハムレットだ。

 あ、じゃあオフィーリアはミクラか……。


 でも、ミクラは死んでない。

 私が死んでも悲しまないよね。

 それは良かった、のか。


 ん、私はミクラを愛してたのか?

 あれ?

 

 水滴が水に跳ねる音がして、波紋の夢を思い出して、目が開かなくなる。


 湯舟に沈む前に、誰かが私の頭を抱え上げたのはわかったけど……。

読んで下さりありがとうございます。

人工繁殖のイメージですが、普通の人工授精ではなく、卵管造影(造影剤を注入して子宮と卵管のレントゲン撮影をする)みたいな処置という感じで書いています。

実際は麻酔しなかったです。

あの治療はもう本当に絶対受けたくないと、今でも思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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