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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第1章 水の行方 (アイ視点)
4/16

4 自由ということ

SFですが、ちょっと重めな設定かもしれません。

でも、なんとしてもハッピーエンドにしてやる! と思って頑張って書きます。

どうぞよろしくお願いします。

 ハルを部屋まで送り、私は図書室に行った。


 カイとミクラがいた。

 ササキは次の次がコントロール室のシフトだから、少し仮眠すると自室に戻ったそう。


「んじゃ、ミアも?」

「そうだね」

 ミクラが当たり前のように答える。

「ちゃんと休んでるのかな……」

 私は呟いた。


「何の話だった?」

 カイが我慢できないように聞いてきて、ミクラが苦笑いして私を見た。


「妊娠出産が可能になってきたから、方法と相手の希望を聞かれた。

 なければ、先生が決めるって」

 なんとなく可能になったとは言いたくなくて、ぼかした言い方になった。

 ハルはこれからなんだから、嘘ではないよね。


「もう書いたの?」

 ミクラが聞いてくる。

「ううん、まだ考えたいと保留にしてきた」


「じゃあ、俺もまだ可能性ある?」

 カイがグイっと身を乗り出してくる。


 カイはいつも元気だな。

 たぶんこの制限がある世界の中でもそれなりに楽しんで生きていけるタイプなんだろう。

 後悔しないように、いつも全力で……。


「うーん、わかんないんだよな……。

 みんな、好きだし。

 それで言うならハルだってミアだって気に入ってるし、好きだよ。

 自分が妊娠とか出産とか、繁殖とか……、想像すらできないってところがある」


「……アイらしいっちゃ、らしいけど……」

 カイまで苦笑いする。


「ハルも私が男だったらいいのにって言ってた……」

「ハルが?」

 ミクラが驚いたように言う。

 聞き返されたのかと思ったので、もう一度ミクラに言った。


「うん、ハルに言われた。

 私が男なら良かったのにって。

 なら、私にタイプが似ているのってミクラかな?

 私が男ならカイみたいにごつくなるかもって言ったら笑われた」


「それは……、笑うわ」

 カイは笑ってから真面目な顔をして言った。

「アジア系というか、アイとミクラはもっと細かく日本人だから。

 アイが男でもミクラみたいな感じなんだろうな。きっと」

「そうかなあ。

 ハルもそうだから、かな?

 カイはヨーロッパだっけ?

 ササキは南米の日系で、ミアはアメリカだけど中国系だよね」

「そう言われてみると、東洋系が多いな。

 このグループ」

 カイが気がついたように言った。


「だからカイ以外はごつくなくて穏やかな感じなのかもよ」

 ミクラがからかった。


 カイがちょっとどや顔で言う。

「俺も少しアジア系入ってるんだけど」

「そうなんだ。

 じゃあ、意識的にアジア系を集められてるグループなんだろね」

 私はなんとなくハルのことを考えながら言った。


 私が男なら、ミクラみたいな感じ?

 ということは、ハルはミクラが好きなのか?




   ☆ ☆ ☆ 




 ハルに初潮が来た。

 生理痛がひどいらしくて、部屋から出てこない。

 私はハルに付き添っていてあげたくて、カイに頼んでシフトを代わってもらうことにした。

 ここのところ固定男女ペアでシフトが組まれていて、ミアは空いてる時間をマークと合わせていたみたいでダメで、それでカイに頼んだ。


「じゃあ、今度ハルのところにアイが入ってよ。

 それが条件」

「わかった。

 じゃあ、今回のシフトは私とカイがチェンジで。

 次のシフトが、あ、連勤になるな……、その次ね。

 ハルと私のシフトチェンジしとく」

「ん、了解」


 カイと一緒にタブレットでシフトの書き換えをした。

「ありがと! じゃあハルのところに行くね!」


 私は医務室に行き、痛み止めをハルに処方してもらう。

 出るとミクラに会った。


「アイ!

 シフト交代って?」

「ハルが体調良くなくて、ちょっとついててあげたいからカイと代わってもらった」

「で、次の次がハルとなんでチェンジ?」

「それがカイの希望だから」

「カイの?」

「先に私の希望で代わってもらったんだから……」

「それでいいわけ?」

「うん、ハルのこと心配だし。

 ハルも、ミクラとなら大丈夫でしょ?」

「……なんか変なこと考えてないよな?」

「何が?」

「ハルに何か言われた?」

「何って……。

 特に、今はハルが弱ってるから、彼女が辛くないように過ごせれば……」

「ハルのためなら、自分はどうでもいいと?」

「うん?

 自分て私のこと?

 どうでもよくはないけど。

 あ、繁殖のこと?

 どうせ人工繁殖を選べば、相手は濃縮洗浄された白い液体みたいなもんだし。

 そうなれば、誰のでも良くない?」


「人工って……。

 俺は?」

「ミクラは好きにすればいいじゃん。

 先生方は何故か人工繁殖を勧めてくるし、実験なのかも。

 ひとりでもそれを選んどけば安心するんじゃない?

 そうすればミアもハルももう少し自由に選択できるだろし」

「だから、それが自分はどうでもいいってことだろ?!」

「違うよ、私は……」

『中央コントロール室に移動を始めて下さい』

 ミクラの左手首のAIが警告音とともに言った。

 ミクラは低い合成音声を使っている。

 なんだか怒られてるみたい。


「ほら、早く行かないと!」

「終わったら話そう」


 ミクラが困った顔で言うと急いで移動して行く。

 私はハルの部屋に戻った。


「ハル、痛み止め貰ってきたよ」

「ありがと、お腹やっぱり痛い……」


 薬を渡してから、キッチンに行き、コップに水を入れ、戻ると口に薬を入れたハルに手渡した。


 水と薬を飲んだハルからコップを受け取り片付ける。

 ベッドに戻ると、横になるハルの背中を擦ってあげた。


「アイ、シフト……」

「カイが代わってくれたから大丈夫。

 ハルが寝るまでそばにいるよ。

 それと、次の次ね、ハルと私がシフトチェンジだから。

 ミクラとなら大丈夫でしょ?」

「ごめん、ありがとう。

 ミクラ怒っているんじゃない?」

「何でミクラが?

 怒ってなんかいないよ。

 特別アンケート……、私は人工繁殖で提出しようと思ってる。

 だから、ハルは好きに書きな」


 びっくりした表情のハル。

「いいの?」

「うん、ハルがいいようにしなよ。

 ハルが辛くない方が私もうれしいし」

「……ごめん」

「何で謝るの!

 痛み止め効いてきたんじゃない?

 少し寝なね」

「うん、ありがとう……」


 ハルが寝たのを確認して部屋を出ると、私はそのままミセスの部屋へ向かった。

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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