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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第3章 すべての水の集まるところ (愛視点)
15/16

15 再会

コールドスリープとクローンが出てくるSFです。

最初はなんて暗い設定にしてしまったんだ! と思いつつ、絶対ハッピーエンドにしてやるからな! と挑戦と思って書いてました。


本当にハッピーエンドにできて、良かった……。

今はほっとしています。

これで完結ではなく、まだエピローグがあります。

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 ファイリングされている新聞記事のようなものを年代順にざっと眺めてから読んでいく。


 クローンの人類への融和もトラブルなくスムーズに行われたようだし、その後、人口増加の浮き沈みなどは少々あったみたいだが、内乱とか争いとかそういうものは起きずに平和的に過ごせていたようだ。


 今の時点でスペースコロニー内には400人前後の人間が生活していて、人類が生息可能な惑星を見つけ、じっくり調査してから着陸に成功し、準備をしっかり整えてから手動でコールドスリープが解除されたようだ。


 このコロニーがそのまま基地となり、500人ぐらいまでなら生活が何とかできるそう。

 ということはすでにキャパはいっぱいということ。

 早急に外への開拓を進めないといけない。

 きっと、何か手伝えることがあるだろう。


 恵が残してくれた私と隼人のクローンの話は個人的な話っぽいし、後で読もう。

  

 私は呼び出しボタンを押した。


 カエラ・ササキがにこやかに部屋へ入って来た。


「全部読まれました?」

「私のクローンの話だけはまだ読んでいません。

 今は外への開拓など急がなければならないみたいだし……」

「大丈夫ですよ。急がなくて。

 スペースコロニー内の住人ですでに大規模開拓が始まっています。

 順調に進んでますから、大丈夫。

 愛さん、今は情報をしっかり頭に入れることに専念しましょう。

 それに……、婚約者さん、来てます」

「えっ?」


「後ろの番号から目覚めているんです。

 何故かそういう仕様になっていて」

「そうですね。

 手動でスリープ状態を解除するとそうなるはずです。

 100人ともなると全員一緒というのは無理で、早い番号から少しずつスリープに入りましたから。

 でも、1000年以上となるとあんまり差はなかったですね……」

「はい、で、婚約者さんはもう目覚めてまして、あなたに会いたいとお待ちです」

「はい……、私も会いたいです」


 ちょっと笑顔が強張るのを感じた。

 隼人は私のことを怒っているかもしれない。

 でも、会いたいと言ってくれているなら……。


 カエラが頷いてから出て行き、入れ違いに隼人が入って来た。


「……久しぶり、愛」

「えっと、そうね、最後は3年くらい会ってなかったから……。 

 それに私の方が早くコールドスリープに……。

 隼人の方がもっと後の番号だったから、そうだね。

 その、久しぶり、です。

 その、ごめんな……」

「あの時はごめん!」

 私の謝罪の言葉と隼人の謝罪の言葉が重なった。


「いえ、あの、私の方がひとりで怒って……」

「いや、研究のために、この計画の成功のために、君は……。

 悲しく辛い思いと決断をさせてしまい申し訳なかった。

 でも、俺は君と一緒に生きたいから、こうして追いかけて、また再会できた。

 研究を完成させて、成功できたから、こうやって再会できて謝れて、またプロポーズできる。

 今度こそ、俺と結婚して下さい!」


「……晴樹は?」

「邪魔させない。

 もう晴樹には話をしてあるし、最初から本当に、関係ないから!」

「そうなの?」

「クローンの話、読んでないの?」

「まだ……。

 でも、大丈夫。

 恵からの手紙は読んだ。

 うん、隼人と結婚したい。

 こんなバカな女でもいいの?」

「うん、愛がいい」

「バカなというところは否定しないんだ……」

 私と隼人は顔を見合わせて笑った。


「恵が残してくれたクローン達の報告読んでみなよ。

 愛がクローンになっても、バカなことまたやってるから……」


 私は隼人が見守ってくれる中で、恵の書いたクローン達の報告を読み始めた。


「私と隼人と晴樹とカルロスのクローンが同じグループ?!

 すごく……、恵の意志を感じるんだけど……」

「それはまあ、でも……、そのおかげで……。

 まあ読んで」




   ☆ ☆ ☆




 私と隼人は結婚し、ミクラとカタカナ表記の姓を名乗ることにした。

 シノヅカ姓はまだ続いているそうだ。

 ササキもいるし……。


 何故タブレットなどのデジタル機器に電子データでファイリングされてなかったのかというと、もし、何か事故やコロニー内の人間がひとりもいなくなった状態で自動的に着陸した惑星で自動でコールドスリープ解除された時のことを考えて、紙ベースの物と電子ファイルの物と両方残されていたそう。


 電子ファイルの物は、後でタブレットを支給され見ることができるようになった。

 恵は写真や動画のアルバムも残してくれていて、私の過去の写真も、アイとミクラ、そして恵の娘の舞とササキの結婚式の写真や産まれた子どもの写真や動画など、たくさん残してくれていた。


 私は恵が自分より大人で年上になっているのに、当たり前なんだけど、画像を見て、衝撃を受けた。

 本当に不思議な感じ……。


 アイもミクラも私達によく似ていて……。

 クローンなんだからそれも当たり前なんだけど……。

 でも、アイが恵と一緒に過ごしてくれていたことが、なんだかとても安心できたというか、ほっとしたというか、心が温かくなった。


 カルロスと晴樹にも再会することができた。


 それぞれ、自分のクローンがどのような一生を送ったかの報告が読めるようになっていたそうで(私は特別に関わったクローン達のことが多めに書かれてたみたい、恵サンキュー!)、その内容を読んで晴樹は隼人をすっかりあきらめる気になった、と笑った。


 恵、何書いたんだろう。


 まあ、恵のことだから、性格とかかなり細かく分析して記入してたんじゃないかと思う。

 姉の私の報告にも気をつける欠点として、耳の痛いことがかなり書かれていたし……。

 

 カルロスは学校の先生になっていて、自分と同じササキ姓の生徒がいた、と穏やかな笑顔で教えてくれた。


 晴樹はハルが同じクローンのカイと最終的には結婚して幸せに暮らしたと読み、気になったカイのオリジナルに会いに行ったら、向こうも晴樹を探していて、会うなり電撃的にプロポーズされ、今は動物学者のカイト・バーニンの妻になっているそう。


 その後、恵のことを詳しく調べたら、クローン(プラネットチャイルド)達を人間として扱い、コロニー内の人類との早くからの融合政策を推し進めた第一人者と書かれていて、夫との間に娘の舞を授かり、クローン同士の子のヒラリーを養女として育て、クローン達に母のように慕われ、幸せな一生を送ったとわかった。

 

 恵からの報告の中にアイとミクラが結婚して、姓が必要になった時、恵がシノヅカ姓を名乗るように勧めたと書かれていた。

 子どもは4人授かったそう。


 報告は途中から次の担当に切り替わり……、アイとミクラは中央コントロール室勤務を続けていたが、50代の時にミクラが船外活動中の事故で足に障害を負ったが、命は助かったので、ふたりとも仲良く老後を暮せたとのこと。

 

 なんだか、うれしい。

 自分の子どもでもなく、もうひとりの私でもない。

 私の知らないところで生を受けて生きてた……私。

 いうなれば存在を知らなかった双子みたいな感じかな。

 それぞれ独立した各個人なんだけど……。


 でも、幸せに暮らして一生を終えたと考えると、とても救われるような……。

 心が温かくなって、目頭が熱くなるような、もういないことに寂しさを感じるけれど、幸せに過ごせたことにうれしい気持になる。



 この開拓中の星の名前は、船の名前だった『アーク』と名付けられた。


 私はこのアークで、恵やアイに負けないくらい幸せにならなくちゃと思う。

 彼女達が繋いでくれた命と愛を大切に、この世界を生きる。

 愛する人と一緒に、あなた達のように!


 ありがとう。

 恵、そして、アイ。


 私はアークの美しい海を眺めながら、そう思った。

 みんなの命が思いや愛が繋がって、この海に流れ込んでいる気がした。


 そして、私と隼人も最後はここに流れこむのだ。きっと。

読んで下さりありがとうございます。

この次のエピローグで完結です。

エピローグは第1章の後、違う人の視点で書き出して、これここ違う! と没にした原稿です。

新たに第2章を恵にして書き始めた途中で、第3章は愛にして、エピローグにこれ持ってくればいいんじゃね?! と思いつきました。

次で完結です。

最後までお付き合いをよろしくお願いします。

そして、最後まで読んで頂けたら評価をどうぞよろしくお願いします。

前完結作品『ギルティなギルロッテ様』の後書きにも書きましたが、全作品ともいまだにどなたからも感想を頂いたことがないんですっ!

一言でもいいので頂けたらとてもうれしいですっ!

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