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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第3章 すべての水の集まるところ (愛視点)
14/16

14 目が覚めて  

コールドスリープとクローンを組み合わせたSFの物語です。

重い設定で始めましたが、何とか無事にハッピーエンドになりました。

もう少しで完結です。

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 短い間だったけれど、夢を見ていたような気がする。

 水面に波紋がたくさん重なり、拡がっていくように意識がどんどんはっきりしてきた。


 コールドスリープが解除されたんだ!

  

 一体、今はあれから何年後なんだろう?


 隼人がすべてを注ぎ込んで造り上げた宇宙船は、スペースコロニーは、無事なのか。

 なにか不具合やトラブルでコールドスリープが解除になったとかではないのか?


 意識がはっきりしてくるたびにどんどん悪いことが頭に浮かんでくる。


 隼人は?

 晴樹は?

 同時期に解除になっているのだろうか?!


 恵は……。


 私は身体が温かくなるのを待った。

 身体が十分に温まれば、このハッチは自動オープンするはず。


 そうすれば何もかもはっきりするはず。


 私のハッチが開いて、目の前に防御服を着た人物がいるのに気がつく。

 指に計測器を付けられ、口にマスクのような形の硬いものが10秒ほど押し当てられた。


『025番 おはようございます。

 確認のためお名前をお願いします』

「篠塚愛、です」

『確認できました。

 健康状態、感染症などのチェックしています。

 ……オールクリア。

 おかえりなさい。篠塚愛さん』

「今はいったい、何年で、その……」


『これをお読み下さい』

 ファイルのようなものを渡される。

『しばらくすると案内の者が来ますので』


 防御服の人は次のカプセルに行ってしまった。


 不安になる。

 解除の順番は?

 いくつかパターンがあったはず。


 それにしてもファイル?

 紙媒体を使うなんて、なんで?


 ファイルを開くと、恵からの手紙が目に飛び込んできた。


「恵?!」


『お姉ちゃんへ

 元気に目覚めたかな?


 今、この手紙を書いているのは地球を飛び立ってから25年後に乗組員である私のコールドスリープが解除され、そこからもう30年経ったところよ。

 だから、地球を飛び立ってから55年後、でも、まだ58歳の私が書いている手紙です。


 お姉ちゃんのクローンのアイは隼人さんのクローンのミクラと無事に結婚しました。

 またお姉ちゃんが……、ちがうね、別人格なんだから、でも、アイがミクラと違う子をくっつけようとしたりと暴走したりして、大変だったんだから。


 それはファイルにその時の報告を挟んであるから、後で物語としてでも楽しんで。

 アイとミクラには、我が家の篠塚姓を名乗らせています。

 シノヅカは他にいないので、もしその時点でシノヅカ姓がいたら、ミクラとアイの子孫かも。

 私は結婚して、ホワイトという姓になりましたが、娘はササキ姓に嫁いでいます。』


 ここまで読んだところで案内の防護服の人が来て、手を貸してくれてポッドから外へ出る。


 うん、しっかり立てる、大丈夫。


 ファイルを抱きしめて、案内の人に導かれ、温かい光に満ちた部屋に入った。

 何人か解除後の人かな? と思われる人がいる。

 みんな、ファイルを持っている。

 そこからさらに誘導されて個室に入る。

 病室のような感じでベッドがあり、そこで休みながらファイルを読んでいるように言われた。


 すぐに防護服ではない人が来た。

 病院の職員や医師に近い服装だなと思った。


「025 篠塚愛さん

 初めまして、担当医のカエラ・ササキです。

 どうぞよろしく」


 その女性はにこやかに微笑んだ。


「今はいったい、どれくらい年数が……」

「はい、お話ししましょう。

 ファイルはどこまで読みましたか?」

「まだ、妹の手紙を読んでいる途中で……」

「では今の年数を。

 地球を出て、25年後に宇宙船が高速飛行をやめてスペースコロニーへ変形しました。

 そこをスタートとして……、地球の年に換算すると1051年後になります」


「1051年、じゃあ25年を足して。

 約1076年間コールドスリープ状態に……」

「はい、愛さんは身内の妹さんが最初の乗組員にいたのですね。

 その方がかなり詳しく初期の記録を残してくれています。

 その後は定期的な記録ですが大きな出来事などはファイリングされていますのでじっくり読んで下さい。

 では読み終わったら……」

「あの! 

 隼人は……、コールドスリープしていた御蔵隼人はまだ目覚めていませんか?」

「あ、婚約者さんでしたよね。 

 それも確認してきます。

 これを飲みながらお過ごしください。

 読み終わったら、このボタンを押してお知らせ下さい」


 蓋のついたマグのようなものを渡される。

 水筒?

 中には温かいお茶が入っていた。


 カエラ・ササキ……、もしかしたら恵の子孫?

 うーん、ササキ、なんか記憶にあるような……。


 私はお茶を飲も、ファイルを開いて続きを読み始める。


『そう、ササキはカルロス・ササキのクローンです。

 私の娘の舞はササキと名付けられたカルロスのクローンと結ばれました。

 もし、カルロスに会うことがあったらそう伝えといて下さい。』


 私は驚いた。

 考えてたことがそのまま書いてあったから。

 

『ササキ・ササキなんてふざけた名前だと思うだろうけど、まあ、この話は置いといて。』


「置いておくのかいっ!」

 私は思わず楽しくなって突っ込んでしまった。

 これを書いている恵の姿を思い浮かべた。

 でも、その姿は20代の恵の姿で……。


『ハル、晴樹のクローンも幸せになりましたよ。

 私的には邪魔してない……と思うけど。

 ミクラとアイを結び付けるのにちょっと強引な手も使わせてもらいました。』


 恵、一体何したんだ?!


『目が覚めたら、ちゃんと隼人さんに会って話をするんだよ。

 では、またね。

 とはいかないけど、私達の子孫と仲良くね!   

 

 出来の良すぎるわりにとんでもない欠点のあるあなたの……、かわいい妹の恵、より』


 良かった……。

 だいぶ幸せな生活を送ることができていたようだな。

 私は声を出して笑ってしまった。

読んで下さりありがとうございます。

この先どうなるのか(いや、もうハッピーエンドと言っちゃってますが)、と思いましたらブックマークや評価をしていただけたらうれしいです!

後2話で完結です。(3章は2話でおしまいなので)

最後までどうぞよろしくお願いします。

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