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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第2章 過ちをくり返すのか (恵視点)
13/16

13 未来へ

コールドスリープとクローンと宇宙開拓のスペースコロニーと舞台はSFです。

重めな設定でしたが、無事にハッピーエンドにできました。

後もう少しでラストです。

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 アイとミクラは自然繁殖のパートナーとなった。


 まず第2グループの他のメンバーに伝えると、ミアとササキは飛び上がって喜び、カイは複雑そうな顔をして、ハルは無表情になった。


「もう、自然にしたの?」

 ミアが興奮気味に聞いてくる。


 苦笑いしながら頷くと、ミアは「わー、もう無理だね」と言いながらハルを見た。


「な、何よっ!

 なんのこと?!」

 ハルが怒ったような口調で言うが、言いながらも何か違うことを考えているような感じがした。


 これからどうするか、どう振舞うか、誰とどのような関係になるのがベストか考えているのだろう。


 若い時はそんな彼女のしたたかさが嫌いだったけれど、今となってはその逞しさに拍手を贈りたくなるほどだ。


 ハルにも晴樹にも……、幸せになって欲しい。



 第1グループのシフトの休みをもっと増やすための要員として、16~18歳の子ども達がこの中央コントロール室に研修に来ることになった。


 最初のグループは6人。

 この子達は今日のオリエンテーションを終えたら、曜日で1泊ずつ泊るような形でシフト体験をしていく。

 そして、1カ月、つまり4回ほど体験してみて、続けてみたければ延長。

 興味を持てなければ、そこで研修終了。

 新たな研修生がやってくることになる。


 1番最初のグループが肝心。

 私達はあえて、このスペースコロニーで管理側の上役である保護者の子ども達を意識して選んだ。

 この家庭の子ども達が偏見を持たなくなってくれれば……。

 それにそのような職業の保護者の方がクローンについての知識もあり、家庭での話し合いも活発になるのでは思われたから。


 そのグループには我が家の長女の舞を入れた。

 

 舞はみんなとの顔合わせを終えると不思議そうな顔をしながら帰って行った。


 私が帰宅すると「ねえ……」と言いながら近寄って来た。


「ただいま」

「あ、おかえり……。

 あのさ、あのアイって子、どっかで見たことがあって……。

 思い出したの。

 お母さんの子どもの頃のアルバムにいたよね?」


 私は「よく覚えてたわね」と言うと、彼女の持っているタブレットを見た。


 16歳の愛と13歳の私が、海中都市の端っこで海中を背景に撮った動画が静止画の状態でスタンバイしてる。

 舞は動画をスタートさせた。


『おねーちゃん!

 見て!

 あそこ!』

 13歳の私の声が響き『どこよー?!』と笑いながら答える16歳の愛。

 ふたりでカメラに背を向け背伸びしながら上の方を指差して、それから振り返り『お父さん、近すぎ!』と私が顔をしかめて、慌てて遠ざかろうとしたように画面が揺れて、ひっくり返り、驚くふたりの顔を通り過ぎた画面は青い海中だけを映した。

『お父さん?!』

『大丈夫?!』

 ふたりの声が響いて、笑い声に代わり、停止した。

 動画の中の私の声が幼く響き、アイのAIチビアイの声に似ていてドキリとした。


 この頃はちょうど周囲からの姉との比較が気になり始めた時で、でも、まだそこまで深刻ではなく、家族旅行の楽しい思い出だ。


「この動画の子はショートカットだけど、顔似てるよね?

 この子は誰?」

 

「私の姉よ。

 今日、舞が会った子は……、私の姉のクローンよ」

「アイ、だよね」

「そう。

 姉の名前は篠塚愛、長期コールドスリープ組にいるわ」

「じゃあ、今日会ったあそこに元々いる人達は、みんな……、えっと元になる人がコールドスリープしているの?」

「……ええ」

「このスペースコロニーを維持するために造られた命ってこと?」

「そうね。

 そうとも言えるけど、私は、そう思わない。

 彼や彼女、誰一人として、オリジナルのスペアじゃないし、生きてる。 

 この世界に生み出された命だわ」

「……そうだね。

 うん、なんかわかった。

 教えてくれて、ありがとう」


 舞を後姿を見ながら、思った。

 オリジナルのスペアじゃないと言いながら、こだわっているのは私の方かもしれない。


 

 舞を入れて、3人が続けてみたいと残ってくれた。

 舞に聞いたところ、週1回のお泊りだし、クラブ活動みたいな感じで楽しいそう。


 特にアイとササキのふたりと仲が良くなったと教えてくれた。


 うん、あのふたりなら問題ない。

 ……先生として、の発言だとアウトかもしれないけれど、そう安心してしまった。



 そのまま仕事として中央コントロール室に在籍することを選んでくれる子も増え、マークとミアは妊娠を機に社会で生活することになり、結婚という制度を使えることになった。

 このふたりなら大丈夫だろう。


 そして、ミネヴァも理解ある伴侶を見つけ、社会に生活の場を移したが、仕事は週の半分は植栽の管理、もう半分はここに通ってくることになった。

 

 アレクとマリンはお互いに少し離れていろいろな異性を見たことで、お互いの良さを再確認した様子。

 再びパートナーとなり、中央コントロール室メインで残ってくれることになった。

 ただ、月2回の病院や学校での仕事は続けている。

 

 ハルとカイはパートナーとなった。

 カイは体格も顔もよく、性格も優しく男らしいところもある。

 研修に来た女性からの人気もあり、それに改めて気がついたハルが動いたという感じだ。

 フリーなのはカイとササキだけだったわけだし。


 ササキは穏やかで素敵だと思うんだけど、うーん、この良さが若い子にはわからないか……。


 アイが妊娠した。

 アイとミクラもこれを機会に結婚ということになった。

 でも、ミクラとアイで話し合って、中央コントロール室の仕事を続けると決めたそう。

 確かに医者とエンジニア、中央コントロール室向きの知識かもしれない。


 そしてササキにもパートナーができた。

 相手は舞だった。


 カルロス……、子孫どこじゃなく、ササキは私の娘と出会っちゃったわよ。

 私はカルロスの顔を思い浮かべて微笑んだ。

 本当に、あなたっていう人は!

 

読んで下さりありがとうございます。

次はラストの章になり、視点が変わります。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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