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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第2章 過ちをくり返すのか (恵視点)
11/16

11 くり返しにはさせない

SFです。

ちょっと重めな設定で始めましたが、ハッピーエンドまで書き終えました!

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 そう、約束したんだ。

 姉の愛に。

 ここでアイを幸せにしないで、どうする恵!


 私はミセスAに話した。

 アイは、周囲のことを気にし過ぎて、自分が犠牲になればと考えている。

 

 ミセスAもそれには同意してくれた。

 彼女達のAIからはどのような接触、会話がなされたか分析されたものがこちらに届いている。

 

 ハルがアイを揺さぶって、自分の要求を悟るように仕向け、動かそうとしている。


 ハルはカイからミクラにパートナーを変更しようとしている。


 ミクラに働きかけても相手にされなかったから、アイに対する執着のような甘えが見られるようになっていた。

 考えてなのか自然な自発的な行動なのかわからない。

 つまりアイに執着することで、アイをミクラから遠ざける作戦に出た訳だ。


 これはかなりグループ内の輪を乱す、危険な心理状態だ。

 

 ミアはその状態に気づいているようだが、彼女は彼女で新たな恋に(こちらも私達の頭を悩ませるには十分だったが……)夢中で、介入などできようがない。


 ミクラとカイとササキには、女性の個室で起きていることまでは介入できない。


「まあ、これも成長なのかもしれないわね」

 ミセスAがため息をついた。


「アイとハルを引き離すのであれば、グループを一緒にして、ミアとハルを第1グループの方に近づけたらどうだろう」

 ミスターBが提案した。


「アイをどのような理由でひとりにするのか?」

 ミスターAが考え込む。


「人工繁殖を希望しているのはアイだけです。

 それが理由にはならないでしょうか?」

 私の言葉にミスターBが言った。

「ミクラもアイとなら人工繁殖でもいいからパートナーになりたいと言っているが……」


「あなた方は本当に人工繁殖を、あの子達にさせるつもりなんですか?」

 私は低い声で言った。


 確かに、性的なことを恋愛というものから切り離し、繁殖という作業のような言葉に置き換え、彼らに怖いものだというイメージを与えた。

 故に、本当に愛していなくてはお互いに大切に思っていないとできないものだと。

 そう思って欲しかった。

 

「それは……」

 ミスターBが何か言いかけてやめる。


 少しの沈黙の後、私は言った。

「まず、アイを人工繁殖を希望しているということでグループから離しましょう。

 もしかしたら、アイもハルと離れることで落ち着いて、希望を取り下げるかもしれない」

 ミセスAが頷いてくれる。

「ハルが騒がないように、第2グループの男性は動かさないようにしましょう。

 そして、いつやめたいと言ってもいいように、少しずつ、ですがアイの人工繁殖のプランを進めていると周知しましょう。

 この様子だと、相手はミクラで。

 みんなそう考えていると思っていいかしら?」


 私達は頷いた。


 ミセスAが微笑んだ。

「アイの気が変わることを祈りましょう」


「無理かもしれません」

 私は呟いた。

「あの子は、また、そんなやりたくないことを自分で選ぶなんて……」


 ミセスAが私のところに来て頷いた。

「私もオリジナルの篠塚愛に何が起きたか、知っています。

 だからと言って、彼女の意思は尊重しなければ」

「彼女は今、自分の意志を自分で押さえつけて、気がつかないようにしている!」

「でも、押さえつけているのも彼女の意思でしょう。

 ここで変に介入すると、ああいうタイプは変に意固地になる。

 とことん自分で気がつくまで付き合いましょう。

 大丈夫。

 彼女は気づけると思いますよ」

「そうでしょうか……。

 姉は最後まで行ってしまいました……」

「それは……、あなたが妹だったからです。

 今回は私達は保護者であり、母親です。

 最後まで付き合って、それでも気がつかなければストップをかけることもできます」


 私は頷いた。


 ハルとミアが第1グループの個室に移り、アイが私達の指導部屋のそばに移動した。

 ハルとミクラと第1グループとの関りを、ミア、カイ、ササキに相談して制限する方向へ出たようだ。

 

 新しい合同グループの方は、様子見という感じだ。

 アレクにとって新たな女性はハルしかいないし、ハルはミクラが無理ならばと、カイかササキに戻ろうとしているようだ。

 カイとササキはハルがアイとミクラにしたことを知っているので、のらりくらりとかわしている。

 だからといってカイとササキにとって、ミネヴァとマリンをパートナーにというのも……。


 私はミスターBに考えていたことを話してみることにした。


「最近の彼らの様子を見て考えたのだけれど……、プラネットチャイルド、つまりクローンという扱いをやめることはできないでしょうか?」

「それは、彼らを人間として認めるということか?」

「ええ、もう地球からは離れ、地球のことわりや定義を変えてもいいのでは?

 この船には動物のクローン培養施設はあるけれど、あえて人間用の物は積み込んでいない。

 それは用意されているクローンが私達人類に吸収されていき、増やす必要がない、もう造ることはないと考えられているからで……。

 それを早めることはできない?」

「うーん、つまり、私達の居住スペースに彼らを迎え入れるということか?

 最初から、クローン同士ではなく、人類と繁殖させる?」

「ええ、繁殖で産まれた者は人類と定義されるならば、前倒しして彼らを迎え入れることはできない?

 そうすれば、彼らは自分達でパートナーを得ることができる」

「それは……」

「確かに危険な任務に当たるのは彼らという前提はなかなか変えることはできないと思います。

 彼らの命はひとつだけど、オリジナルのスペアのように思われてしまうものですから。

 でも、第1グループの子どもふたりはすでに人類として数えられていますし……」

「……君の姉のクローンがアイだからか?」

「いえ、それだけじゃありません。

 カイとササキとハルと、ミネヴァとマリンとアレク。

 このままだと、パートナーを見つけられないまま、何年も過ごすことになるかもしれません。

 それは……、人間らしく生きられない、生物として厳しく、むなしい生を強いることになりませんか?」

 

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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