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宇宙の方舟 ~妹とクローンが繋いでくれた愛~  作者: 月迎 百
第2章 過ちをくり返すのか (恵視点)
10/16

10 別の道

SFです。

何と最後まで書き終えてしまいました。

無事にハッピーエンドになりました!

最後までお付き合いいただけたらうれしいです。

どうぞよろしくお願いします。

 2年後、宇宙船の完成に目途がつき、出発のための準備が始まった。

 コールドスリープ候補者からクローンを造る人選をしている時に、私は愛と隼人と晴樹とカルロスの名をリストに見つけた。


 順番的に、愛が申し込みが一番早い。

 たぶん、この番号だと隼人と別れると決めた直後に申し込んでいたのだろう。

 そして、クローンを造る許可もOKとなっていた。


 そして途中に隼人とカルロスの番号があり、最後の方に晴樹がいた。


 私は意識して、彼らのクローンを同じグループにしたのだ。

 そう、その後のことを知っていたから。


 愛は、結局、隼人と晴樹とは会わずに逃げおおせた。

 連絡も取っていない。

 でも、話し合いもせずにそのまま逃げたようなものだから、婚約者という関係はそのままだった。


 晴樹は隼人から仕事以外では関りを持ちたくないと大勢の人の前で言われたが、それでもめげずに周囲を味方につけて隼人をあきらめなかった。

 たぶん、ここまでしても手に入れられない隼人が、本当に欲しくなったのだろう。


 そのため、愛がコールドスリープに申し込んでいることを知った隼人が追いかけるように申し込んだことを知って、自分も隼人を追いかけることを決めたようだった。


 愛とカルロスだけにはクローン胚を作るための生体検採取の時に会って話をしたけれど……。


 愛は隼人と晴樹が別れたというか、最初から付き合うこともしておらず、隼人が断ったことは知っていたが、それでも連絡を取ることはしないと言った。


「本当に頑固だね。お姉ちゃんは」

 私がぶつぶつ言うと、微笑んだ。

「しょうがないよ。

 それが私だから」


 カルロスは研究所前で私と別れた後、隼人の所に行き、私の言葉を伝えてくれたそう。

 それで、隼人と話をして、監視カメラの映像も確認したそう。

 晴樹が私達姉妹にしていたことを知り、罪滅ぼしの気持ちもあってコールドスリープに申し込んだとのことだった。


 カルロスは穏やかな笑みで私に言った。

「まずったなあ。

 ちゃんと確認してから申し込めばよかった。

 恵は違うコールドスリープなんだね……」

 

 私は頷いた。

 私は乗務員側のコールドスリープ要員だ。

 姉のクローンを育ててみたかったから。


「僕達も別の道か……。

 でも、未来では君の子孫と僕が出会えるかもしれないしね。

 未来でそれを楽しみにしておくよ」


 私は彼の書類を見て笑った。

「呼び名……、姓にしたの?

 なんで?

 ちょっと笑える」

 カルロスは微笑んだ。

「面白いでしょ。

 これなら他の人と絶対被らないかと思って」


 うん、確かに、自分のクローンには下の名前を付ける人が多い。

 男性で数人、姓で呼んで欲しいと希望した人がいたけど、隼人もそうだけど……。

 ササキはちょっと、どうなの?


「ササキのこと頼んだよ」

 カルロスが微笑んだ。



 こうして私達は別の道を行くために同じ『宇宙の方舟』に乗り込むことになったのだ。


 姉達はその後、申し込んだ順番にコールドスリープに入っていく。

 その間にクローン達を造り、5歳まで集団で保育と教育。 

 グループごとにコールドスリープにしていく。


 私はコールドスリープに入った姉の年齢を追い越し、乗務員のコールドスリープに入った時には20代の後半になっていた。


 目覚めて、クローンの教育を担当するミセスと呼ばれる教官になった。


 最初の6人はかなりやんちゃで、でもそのぶん、とても自然な感じがして、私はいいと思った。

 自分自身もコロニー内で結婚して、自分の子どもを授かり、余計にその思いを強くした。


 でも、第1グループの繁殖はほぼ失敗。

 しかも、人間関係にも溝ができ、ひとりは船外活動の事故で命を落とし、そのパートナーは精神に異常をきたして、自死するという結果になった。


 次のグループのアイ、ミクラ、カイ、ハル、ミア、ササキにはその轍を踏ませないためにかなり厳しく、自由を特に性的なことを抑制的に育成することになった。


 自然繁殖、人工繁殖というまあ、脅しを与えて、性的行為=繁殖に対するイメージをある程度、禁忌のようにコントロールしようとしたのだ。


 第1グループとも時々交流させていたし、まさか本当に人工繁殖を希望するような子がいるとは思わず……。


 そう、途中までアイとミクラはこのままベストパートナーになると思われた。

 ハルはカイが気に入ったようだし、勝気なミアと穏やかなササキの組み合わせもいい感じだった。


 オリジナルの記憶など全く引き継いでいないはずなのに……。

 何が彼らをまた同じような状況にしてしまうのだろう。


 アイがミクラから離れようと、自分に対して怒り始めた。

 唯一の欠点。

 そうなると頑固になり、誰の話も聞かなくなる。


 姉の愛がコールドスリープに入る時に震えていたことを思い出す。

「別の道をと決めたのに、まだ隼人を愛していることに気がついて。

 彼がコールドスリープに申し込んでくれたこと、彼の人生を歪めたのじゃないかと申し訳なくて。

 でも、うれしいと思う自分もいて……、そんな自分が怖い。

 私は、なんてバカなんだろう……」


「それが人を好きになるとか愛するということじゃないの。

 お姉ちゃんは隼人さんを愛してることに気がついたんだから、目覚めたら、もう離しちゃダメだよ」

「でも、晴樹もいるし……。

 あ、だからって何もしちゃだめよ!」

「しないって!

 お姉ちゃんのクローンは私が面倒を見ることになるから。

 彼女が幸せになるように祈っていて。

 私も見守るから」

読んで下さりありがとうございます。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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