お参り
セミが鳴き始めすぐに喉が渇いてしまう暑い夏の日...
そんな暑い日に毎日のルーティーンになっている狐の神様が祀られている神社にお参りをしている俺の背中から声がした
「毎日毎日懲りずにお参りとはご苦労なこったな仁ちゃんよ~」
声の主は俺の幼なじみであり親友、東雲龍司
「うるせーそのうち神様が幸せにしてくれるんだよバーカ」
俺のその言葉に腹の立つドヤ顔で返す龍司
「ばぁちゃんの言いつけをしっかり守って、ガキんときから毎日欠かさずお参りしてるのに、未だに幸せが来ないのはなんでだろうなぁ?」
確かに毎日欠かさずお参りしているのに幸せのしの字もなく言い訳を言おうとした時
「おっ!もうそろそろ行かねぇと学校遅刻しちまうぜ
生徒指導のハゲめんどくせぇんだから早く行こうぜ!」
時計を見て慌てる龍司
「わかったよ」
その言葉と共に神社を後にする俺たち
「にしてもあちぃなー、てか瑠衣は来てねーのな」
と龍司が不思議そうに言う
「さぁ?今頃起きて食パンくわえてダッシュしてくんじゃねぇの?」
と言ったそばから後ろからバタバタと音を立てながら猛スピードで走ってくる女の子の姿があった
「あー!待って!止まらないよー!」
食パンをくわえた女の子は勢いよく龍司に激突した
「痛ってぇ!」
「良かったな龍司、恋愛漫画みてぇな食パンくわえた女の子とぶつかれたぞ喜べ」
「まず俺の身を心配してくれ...てか車との衝突事故とも言えるこの状況が恋愛漫画にあってたまるか」
俺と龍司が冗談混じりに話していると
「ごめーん、龍ちゃんブレーキ効かなかった☆」
と俺のもう1人の幼なじみでもあり親友の長谷部瑠衣が手を合わせて謝っている
「お前の足ちゃんと車検行ってんのかよ!」
なんだそのパワーワードと頭の中で龍司につっこむ
「てかあんたらがここにいるってことはギリギリ学校に間に合うね!早く行こ!」
と瑠衣が俺と龍司の手を取り歩き始める...
「ねぇあんたたちこんな時間まで何してたの?」
と瑠衣が聞いてきた
「仁のお参りに付き合ってたんだよ」
龍司がすかさず言う
「仁も律儀だよねー私だったらすぐ辞めちゃいそうだよ」
「瑠衣は物事が続かねぇからな」
龍司がニヤニヤしながら瑠衣を煽る
「龍司に言われるの腹立つけど何も言い返せない...」
そんな他愛もない会話をしていると顔に何か液状の粒がついた気がした
「なんだ?」
じわじわと粒が増えていく
「雨?」
と瑠衣
「なんでこんな晴れてんのに雨なんか降るんだよ?」
龍司が不思議そうに空を見上げる
「こりゃ狐の嫁入りだな」
「狐の嫁入り?なんじゃそりゃ」
龍司が俺を見て聞く
「簡単な話晴れてて太陽が見えてるのに雨が降る現象のことだよ、狐に化かされてるような怪奇現象だって昔の人がつけたんだよ、ただの表現だから実際嫁入りはしてないでしょ」
龍司と瑠衣が口を半開きにして聞いている
すると瑠衣が
「そんな話してるとびしょ濡れになっちゃうよ早く学校に行くよ!ほらダッシュダッシュ!」
と瑠衣がその場で足踏みをしながら走る準備をしている
「ちょ、瑠衣ただでさえ早いんだから俺らに合わせてくれよ!」
と情けない声を上げながら龍司が訴えかける
龍司に続いて俺も2人の後を追うように走って学校に向かう