9.裏切りの代償
質の良いベッドで目が覚めて昨夜の事を思い出す。
やっぱり、スキルと魔法が得られなかったのはショックだった。
一瞬だけど沢山のスキルを見ちゃったから、あれが手に入いったならと思っちゃうよ。
気を取り直して顔でも洗おうと洗面台に向かって違和感を感じる。
(あれ?背伸びてる)
鏡を見て昨日までの自分じゃなくなってる事に気付いた。
転生?して新しい身体にも慣れて無かったけど、今は妙に馴染むし力が漲ってる。
「渚〜」
「はーい、おはよう御座います」
「おはよう、何か成長したみたいなんだけど」
「【換金】して黒字の状態ですし、格が上がったのだと思います」
「今後赤字になるとどうなる?」
「魂が薄れていくので次第に退化して行くと思います」
「【換金】して黒字を維持した方が良い様な気がする」
「現状よりマイナスにならない様に運営して行くという事で良いですか?」
「急に資産運用みたいな感じになったね」
「初めからマスターの資産管理を任されていますけど?」
「えっ?そうだったの?」
「はい、私と契約された時からですよ」
「だから初めから借金できたんだ」
「マスターなら直ぐ【換金】されるのわかってましたから」
「なるほどね、朝ご飯食べて砦に行くわ」
「了解致しました。朝はトーストとハムエッグで良いですか?」
「うんうん、こっちの世界にもトーストとかあるんだ」
「【換金】して得た情報だと固いパンはあるようですが、トーストはないようですよ」
「【換金】した事によって前世の世界の物が手に入るようになったって事?」
「その様です」
「この世界の情報について聞かせてくれる?」
「あ〜先に朝ご飯食べて下さい」
「それもそうだな」
朝ご飯食べて砦までの道中でこっちの世界というか、この国に起きた悲劇を聞いた。
この国はアガルト国といって建国から300年もこの地を治めてきたらしい。
この地域には大小様々な国が隣接しており互いに協力しながら大国とも渡り合って来たらしい。
そして大国と隣接しているドーパン国に危機が迫っているとの事で隣国のバーシャル国と救援に出たところを国境付近で背後から襲われ壊滅、更にバーシャル国はアガルト国を滅亡まで追込み降伏したにも関わらず民を皆殺しにしたらしい。
皆殺しの民の中に俺も含まれるわけだ。
今向かっているのはアガルトとバーシャルとの国境の砦という事になる。
アガルトに思い入れがある訳では無いけどバーシャルだけは許さないのは確定事項だ。
全てを【換金】してやる。