3.バージョンアップ
「ヨシ、戻る」
そう思った瞬間、視界が変わる。
背後からものすごい勢いで何かが近づいてくる!
『渚!』
瞬間、視界が少し薄れる中、何かが背中から通り抜ける。
大きな馬に乗り、手には3メートルはある黄金に輝く剣槍を持った男がこっちを振り返って馬から降りる。
ゆっくりと確かな足取りでこっちに来る。
俺の1メートル手前で止まり、顔は鬼の形相に変わり剣槍を振りかぶり俺に向かって振り抜いた。
確かにそこに何か在ると振り抜いた剣槍が身体を抜けた後、音と衝撃波的な何かが通り抜ける。
男はまだ周辺に何かを感じ様としているが何も感じ取れないのか俺に背を向け馬に向かって歩き出したところで騎馬が一騎駆け寄ってきた。
「バイエルン様、どうされましたか?」
「不審なモノが居ったんだが目の前で消えよった」
「不審なモノですか?この辺の残兵は皆殺しにした筈ですが・・・確かに周辺の死体がありませんね」
「黒い鎧を着ておったが、念の為捜索隊を出して他にも不審なモノがないか確認せよ」
「ハッ!了解致しました」
二人が去ってのを確認してから直ぐ岩陰に身を潜め斬られた身体を確認する。
身体は黒いプロテクトスーツに包まれ、頭はフルフェイスヘルメットを着用している。
『コレがマスターの世界ですか?色んな色があるんですね』
『渚、助かった』
『マスターを助けるのが私の仕事ですから、それよりももっと色んな景色を見せて下さい』
『一旦、こっち来ます?大丈夫と言っても落ち着かないでしょ?』
『本体を置いて行くはちょっと怖いんだけど』
『それなら大丈夫です。そのスーツ着てれば本体もこっち来れますから』
『わかった、頼む』
『了解、マスター』
視界が変わり無機質な空間に?
「あれ?大分変わったね」
「はい、マスターの世界を見させてもらいましたのでこっちの世界も少し色合いが出る様になりました」
今は土の上にコテージが建ってる。
「どうぞ中に入ってください」
「あと、もう脱いでも大丈夫ですよ」
「脱ぐって言ってもね」
「マスターのイメージで装着・脱着できます」
(脱着)
元の血塗れの服装に変わる。
この身体の元の持ち主は兵隊では無かったようだ。
「しかし臭いな」
「こっちお風呂在りますからどうぞ入ってください」
「風呂まであるんだ」
「マスターの潜在知識がベースになってますし、もっと外の世界の情報が入ってくれば良くなって行くと思います」
早速風呂に入ると木彫の綺麗な風呂だった。
「渚、めちゃくちゃ良い風呂だったよ」
「そうですか、それは良かったです」
「もう少しで食事の用意出来るので冷蔵庫から好きなの飲んで待っていて下さい」
「ありがとう、じゃぁ遠慮なく頂きます」
「何言ってるんですか、これ全部マスターの物ですよ」
「もう何も要らなくないか?」
「維持費は掛かりますから、このままだと1年でマスターの魂が消滅してしまいます」
「サラッと怖い事言うね」
「適度に【換金】して行けば大丈夫です」
「【換金】は何でも良いのか?」
「生きてるモノは【換金】出来ません。それ以外は全て出来るはずです」
「そして【換金】したモノの情報がスキルに反映されるので、例えば死体を【換金】すれば生前の情報も手に入れる事もあります」
「絶対では無いのね?」
「死体が新しければ得るモノも多い様ですね」
「食事したらこの辺のモノ【換金】しに行くよ」
「流石マスター理解が早い」
「2回も殺され掛けたからね、遠慮はなくやらせてもらう」