〜運命〜
夢。
夢を見ていた。
それだけを理解している。
どんな夢だったか。
悪い夢を見ていた。黒い霧のようなものが空を横切った。もしかしたら、良い夢だったのかもしれない。
川の水は綺麗なままだった。
つまらない夢かもしれない。視界に入り込む色彩は決して豊かではなかった。でも不思議と楽しい夢な気もする。直前まで、確かに自分の口元は笑みを浮かべていたような感じがした。
変な夢かな。だって、自分の普段の日常とはかけ離れていた。
面白い夢でもいいな。不思議な世界に迷い込むグリム童話のような世界観が、昔から好きだった。
悲しい夢はちょっと嫌かも。自分が昔から、一度泣き出すと止まらない性質なのをよく知っているから。
長い夢が良い。キリの悪いところで終わってしまうと寝覚めが悪いじゃないか。短い夢にも味がある。トゥービーコンティニュードは想像力を掻き立てる素敵な言葉だ。
どうせなら自分の好きな夢を見たい。現実とは違った格好良い自分の夢を見たい。ご都合主義の夢が見たい。
悪夢、予知夢、明晰夢、どんな不可思議な夢を見た所で、どうせ起きてしばらくすれば、全てを忘れてしまうのだ。
朝の虚ろな意識の中で、俺は周りに広がる光景から目を逸らしていた。
赤い太陽と青い月が浮かんでいて、空は黄色い。遠くの景色は純黒で、空気は白んでいる。
丸くて硬いものが落ちている。四角くて柔らかい物が浮いている。三角の生き物が踊っている。長方形の人が寝そべっている。そこら辺を舞う星形の塵が不規則に爆ぜた。音は聞こえない。あとは何か、とにかくごちゃごちゃしてる場所にいた。
ここは一体どこなのだろう。
とりあえず、考えるのを放棄して二度寝を決め込もうと思う。