初めまして、世界
次に目を開けたとき、見えたのは天井。俺はどうやら何かに寝かされているらしい。さっきまで女神の前にいたはずなのに……。あれは俺の夢だったのか?
先程までの体験を思い返しながら、とりあえず周りを見渡すと、見覚えの無い部屋だということに気づく。何処かのお貴族様みたいな部屋だ。自分の体に視線を落とす。うん、小さくなっているな。
本当に転生したのかと考える。すると、ガシャンと何かを落とした音が聞こえた。ドアの方からだ。
何事かとそっちを見ると、メイド服の女性が突っ立っていた。急に音をたてられると心臓に悪いし、ただでさえ混乱している最中だ。誰だかわからないからと警戒してしまう。ジーッと見ていると、彼女がこちらに歩いてきた。
「クロードヴィヒ様。気分はどうですか?」
聞き覚えがないのに知っているという奇妙な感覚。名前を呼ばれた瞬間、頭が痛くなり、記憶が流れ込んできた。断面的な映像が頭の中で再生される。
どうやら俺は階段から足を滑らせ、頭を怪我していたらしい。3日目覚めていなかったみたいだ。まだ少ししか思い出せていないが、言いたいことは1つ。
「おい、女神!ふざけんなよ!」
「ヒッ。」
前世の死に方と同じ状況で記憶を取り戻すとか、嫌がらせだろうか?記憶の取り戻し方、配慮してくれても良かったのでは?と女神への恨み言をつらつらと考えてしまう俺。
頭が痛いのはそのせいかもしれない。あちらのせいで死んだのにあんまりだと思うのは間違っているのだろうか。
「あの。」
「ああ、すまない。」
ついうっかり放置してしまっていた女性はメイドらしい。名前はアニー、歳は13歳のようだ。まだ記憶を思い出したわけではないのに、記憶が不完全なまま何かやらかしたくない。
それに一人になりたかった俺はとりあえず何かを頼むことにした。そういえば何かを落としていたな?そう思い、ドア付近を見ると水差しが落ちている。ちょどいい。
「水を持ってきてくれ。」
「はい。分かりました。」
何故か驚いたような顔で出ていったアニー。後で理由を聞こうと考えることをやめ、今度は自分自身の記憶について思い出していこうとしていた俺は数分後、また叫ぶことになる。今世の俺、あんまりだと思う。