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おによんっ!  作者: もうじゃ
2/5

2話 黒鬼のキクリ

一難去ってまた一難。

鬼の少女が僕を見詰めている。

しかもさっきの異形の鬼を一瞬で葬り去ったのだ。助けてくれたのかもしれないが、まだ分からない。だって相手は鬼なのだから。


額から生えた二本の角。黒白目からこちらを覗く紫紺色の瞳。

月明かりに照らされたその顔は、美しいの一言だった。凛と研ぎ澄まされた端正な顔立ち。

恐ろしいと感じながらも魅入られてしまうそんな魅力が彼女にはあった。


「あ、あの…た、助けてくれてありがとう。それじゃあ、ここらへんで…」


長居は無用。

僕は、距離を取りつつ退路を確認する。どうやら、先程の空間からは脱出できたらしい。遠くに近所のコンビニの明かりが見える。

そこまで、走ろうと踵を返したその時。


「待って」


「グェっ!? ゲホッゲホッ…は、離して!」


突如襟を掴まれむせ返る。


必死に逃げようとするが、軽く持ち上げられてしまった。


「あの〜僕になにかご、御用でしょうか〜。そんなにマジマジと見られたら、照れるなーなんて…はは、はぁ…」


逃げるのは諦め、少女を刺激しないよう様子を伺う。


紫紺色の瞳に吸い込まれそうな程見詰められそして、


「かっわいい〜!!!」


「グェッ!??」


「あ! ごめんね! 人間相手だから力加減分からなくて、でもそんなか弱いところもかわいいかわいい! 」


何が起こったのか分からない。ただ自分より少し大きな少女に人形の様に抱きしめられ頬ずりされ、かわいいかわいいと連呼されながら撫でまくられる。


そんな撫で回しは一時間程続いた…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ…満足…した?」


息も絶え絶え、所々舐め回され唾液塗れになった顔を拭きつつ。少女に向き合う。


少女は満足したのか、「はふぅ〜」なんてご馳走をたらふく食べ満たされたみたいな顔をしながらアスファルトのど真ん中に座っていた。


「ふふ〜。いやー本当! ごめんね! 私はキクリ。妖界と人間界の間を取り持つ機関【鬼道会】のメンバーだよ。いや〜本当資料で穂御月くんの事、見た時からビビッ! っとキテたけど本物は予想以上の可愛さ! もう一回、抱き締めていいかな!? 良いよね! だってお姉さん君の命救っちゃったんだもん!」


え。やだこのお姉さん目が怖い。まるで飢えた修羅みたいな目をしている。


それにしても鬼? 人間界と妖界の間を取り持つって…


分からない事だらけに困惑していると、キクリが既に僕の事を抱き寄せていた。

少女特有の甘い香りと柔らかな感触が脳内を埋め尽くす。


「本物のお姉さんが居なくなって心細かったね〜。大丈夫だよ、今日から私が君のお姉ちゃんになって守ってあげるから…」


行方不明のお姉さんを知っている!?

僕は、ガッチリとホールドされた腕からなんとか顔だけ抜け出し、キクリの顔を見上げる。


「なんでお姉さんの事を!? お姉さんは今どこに! 頼む教えてくれ! 二年前に突然居なくなってしまったんだ!」


僕の実の姉ーーー【穂御月 桜(ほおづきさくら)】は、二年前。朝目が覚めると彼女は居なくなっていた。

いつも姉は自分より先に目を覚ましご飯を作ってくれるのだが、まるで先程までそこに居たかのように作りかけの料理、切りかけの野菜にその野菜に刺さった包丁。姉がいる筈の空間に彼女は忽然といなくなり消えていた。


それからは海外にいる両親が慌てて日本へ帰りどうして居なくなったと大騒ぎになった。

警察にも連絡し徹底的に調べたが、不明。警察も神隠しにでもあったとしか考えられないと言うほど綺麗に彼女は消えた。


でも、怪我の功名というべきか今、地獄へ落とされた糸のような光輝くか細いチャンスが舞い降りてきたのだ。


目の前の鬼の少女。キクリは姉ーー桜の事を知っている。聞くなら今しかない。


僕はもう一度彼女に問いかけた。


「お願いします。教えて下さい。姉の事を! 居なくなったんです。突然…いくら探しても見つからなくて。でも、貴女は知っているんでしょう!? 初対面なのに、それに貴女は不思議な存在。頼む、教えて下さい!」


「うーん。ごめんね」


その一言に僕は崩れ落ちた。

糸がプツリと切れたようにへたり込む。


「ああ、落ち込まないで。ね?ね? 今何処にいるかは知らないけど、どうして居なくなったかは予想がつくから」


「本当ですか! そうだ手掛かりさえ分かればまた警察に協力して貰って探せる。教えて下さい! 姉はどうして居なくなったんですか?」


「多分…神に盗られたか〜妖界に引きずり込まれたか〜うーん、わかんないっ★」


「ふざけるな!」


気が付けば僕は恩人である彼女に掴み掛かっていた。

キクリは一瞬目を丸くしたが、目の前の怒りをなだめるように優しく抱擁すると背中をあやすように擦り始めた。


「ごめんね。少し軽率だったね。でも安心して、君の事だけは地獄に堕ちても助けてあげるから…ずっと側にいてあげる」


そしてキクリは柘榴の耳に優しく息を吹きかける。


柘榴は風に吹かれるように眠りに落ちた




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