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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 魅かれる心と邪魔する香り
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第96話 「美咲ちゃんどうしたの?」

(蒼汰)


「痛てーよ!」


 また航かと思ったら、今日は龍之介だった。

 俺は修学旅行中、毎日踏まれて起きるという大変ありがたい目覚めを経験した。

 金輪際この場所には寝ない事を決心する。


 いや、美咲ちゃんなら、踏まれたい気もするから、その時はここで良いや……。

 もちろん、踏んだ足を捕まえて、布団の中に引っ張り込んで、朝のキスでお目覚めさ!

 うひょーー! 堪らない。


 妄想でクネクネしていると、今度は航に踏まれた。

 やっぱり、お前わざとだろう!


 今日も龍之介タイマーに合わせて、朝食の食堂へ。

 いつものように余り食べないでいると、美咲ちゃんが何やら取りに行ってくれた。

 美咲ちゃんは人に食べさせるのが本当に好きなのだろうな……嬉しいけど。


 気が付いたら俺の隣に前園さんが座っていた。

 案の定、伊達君も来ている。

 俺はピンと来た。

 伊達君と前園さんは、あまり二人の関係がバレたくないから、生徒会で集まっているていで、一緒に食事をすることにしたのだと。

 良いぞいいぞ! 俺は大賛成だ。旅行な! 生徒会で旅行に行こうな!

 二人の秘密は守るからさ……。


 挨拶をすると、前園さんが話かけてきた。


「ねえ。天野さんって、上条君のご飯いつも持って来るの?」


「え? いや、そんなことは無いよ。たまたまだと思う……」


「そう? みんなちょっと噂してたよ」


「……」


 噂されていると聞いて、ちょっと嬉しかった。

 そんな話をしている時に、美咲ちゃんがバランスよく盛り付けをしたプレートを持って来て、笑顔で俺の目の前に置いてくれた。


「やっぱり……」


 前園さんは小さく呟くと、美咲ちゃんをじっと見つめていた。

 美咲ちゃんは前園さんの視線に気が付くと、ちょっと変な声を上げてオロオロし始めた。どうしたのだろう。

 隣の席に来た伊達君が挨拶をしていたけれど、「あ、こんにちは」とか返事をして、何処かに行ってしまった。

 美咲ちゃん、いったいどうしたの?


 ----


 最後のスキー体験学習は、インストラクターと一緒に長い列を作りながら、ゲレンデを降りて来るというものだった。

 昨日までとは違い、全然転ばなかった。


 美咲ちゃんとか、パラレルターンを綺麗に決めてスイスイ滑っていた。

 インストラクター事務所の方々に感謝すると共に、初日の説明を適当に聞いていた事を今更後悔していた。

 ちゃんとしていれば、もっと楽しく滑る事が出来たのに!


 美咲ちゃん、いつかまた一緒に来ようね!

 今度はターンとか格好良くバンバン決めるからね!


 そう決意して、スキーの体験学習は終了した。




 帰りはとても慌ただしい。

 スキー用具一式を返却して、部屋に戻り帰る準備を整えたら直ぐに集合時間だ。

 ホテルの従業員に見送られながら、行きと同じ貸切バスに乗り込む。

 手を振る従業員さんの中に研修中の札が付いた人たちが混じっていた。

 俺は最大の敬意を示しつつ、その方たちに手を振る。

 最高の温泉体験をありがとう! 一生忘れません!


 そして、バスの窓からホテルが見えなくなった頃に気が付いた。

 しまった、お土産を買って無い! やはり初日に買っておくべきだった……。

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