表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 魅かれる心と邪魔する香り
93/186

第93話 「見せつけないで」

(美咲)

 蒼汰君の横に座っている前園さんに気が付いて、少し挙動不審になってしまったけれど、多分大丈夫だったと思う。

 でも、前園さんが時々私を見ているのが怖かった。


 伊達君の提案で、今日は教諭室に皆で遊びに行こうという事になった。

 みんな大賛成で、希望者は全員行く事に。

 前園さんと一緒になるので遠慮したかったけれど、生徒会役員は強制参加と言われて、渋々行く事にした。


 遊びに行くと先生達は大歓迎してくれた。

 先生(いわ)く、男女の部屋に集まられるより、よっぽど安心らしい。

 昨晩の事を考えると、そうかも知れないと思った。


 彩乃先生と蒼汰君が部屋の隅で何か話していて、蒼汰君が両頬をつねられながら冗談っぽく怒られていた。

 蒼汰君は色々な女性と仲良しね……はぁ。


 皆で先生達と色々な話をした。

 去年の修学旅行で起こった事件の話がとても面白かった。

 特に早野先輩の部屋に女の子が集まるので、就寝時間まで早野先輩を教諭室に置くことにしたら、教諭室が女生徒で溢れ返って大変だったという話が最高だった。


 誰かが彩乃先生に「付き合っている人がいるのか」と恋愛話を振ると、独身の男性教諭と男の子たちが色めき立つ。


「実は……」


 まさかの告白が始まるのかと思いみんな静かに。

 私もドキドキしながら先生が話すのを待っていた。


「実は上条と駆け落ちする事に決めたから、修学旅行が終わったら皆とサヨナラだ。ね、蒼ちゃん」


 蒼汰君に一斉に視線が集まる。

 蒼汰君は急に話を振られて一瞬固まっていた。


「え、ええ……。さ、さっき、多数決でそう決まったので……。皆さんお世話になりました」


 蒼汰君は正座をして頭を深々と下げていた。


「多数決って。票が割れたのか?」


 男性教諭が聞いて、蒼汰君がうなずいたので、みんな爆笑した。


 その後も楽しい話をしていたけれど、前園さんは蒼汰君の隣にずっと居る。

 蒼汰君も時々前園さんを見つめていた。

 二人の姿を見ていると、何故だか分からないけど、モヤモヤして胸が締め付けられる。


 そんな姿を見せつけないで欲しい。早く解散して部屋に戻りたい……。


 でも、その後も色々な話が続き、消灯時間の十一時になりやっと解散になった。

 私は直ぐに部屋に戻り、寝る準備をして布団に潜り込んだ。


 ----


 私は蒼汰君と手を繋いで色々な場所を歩いていた。

 夕日が綺麗な砂浜や、誰も居ない見た事も無い建物が並ぶ街中。

 気が付いたら地平線まで続く花畑の真ん中に居た。


 蒼汰君と繋いでいる手を見て、とても嬉しかった。

 そしたら、急に蒼汰君が私に抱きついて来て、胸に顔を埋めてスリスリし始めたの。

 ど、どうしたの蒼汰君? 別に良いけれど……皆が見ているから恥ずか……。


 ハッとして夢から覚めると、結衣ちゃんが私の胸に顔を埋めて寝ていた。

 結衣ちゃん止めて。折角の美しい夢が変な感じになったじゃない……。

 結衣ちゃんの腕を解いて、元の布団に戻してあげた。


 その後、夢の中の蒼汰君の胸スリスリの事を思い出してしまい、ちょっとドキドキしていた。

 夢だけれど、あの状況で『別に良いけど』なんて思っちゃダメでしょ……。


 ----


 翌朝の朝食も、もちろん蒼汰君達と一緒。

 里見ちゃんに感謝ね!

 蒼汰君はいつもの様に殆ど食べずに座っていたので、例の如く私が盛り付けをしたプレートを持って行った。

 そして、蒼汰君の隣の席を見て少し悲鳴の様な変な声が出てしまった。

 前園さんがいぶかしげに私の顔を見つめていた……。


 私は確信した。

 蒼汰君の例のお相手は前園さんで、前園さんの私への反撃が始まったのだと……。

 固まったまま皆の方を振り向くと、結衣ちゃんも怖い目で私を見ていた。

 焦ってしまい、横に座った伊達君に適当に挨拶を返して、飲物を取りに行く振りをして、そのままその場を離れた。


 どうしよう。私、いつの間にか地雷を踏みまくっているのかも……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=489571759&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ