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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 二人の時間と美咲の心
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第91話 「私はまた独りぼっち」

(美咲)

 歩いている途中で「地獄巡じごくめぐり」という、温泉旅館の有る観光施設に辿り着いた。

 こんな観光地が近くに有ったなんて知らなかったから一緒に見て回る事に。

 施設のいたる所から蒸気が立ち上っていて、硫黄いおうが付着した岩の間から蒸気や熱湯が噴き出していたり、ターコイズブルーの幻想的な池があったり、今まで見たことがない様な自然の造形を見られて、本当に楽しかった。


 蒼汰君と一緒に足湯に入って血行を良くしたり、岩盤浴がんばんよくで手を繋いだまま横になって骨盤とお腹を温めたり、湯の花コスメの原料を見たりできて楽しかった。

 それに、蒸気を当てる美顔器みたいな「顔蒸かおむし」を長時間堪能して、少し綺麗になったりした。

 少し綺麗になったの!


 その後、食堂で「地獄蒸じごくむし料理」を見付けた。

 お婆ちゃんに薦められて、楽しくて美味しそうだったから、蒼汰君と一緒に食べる事にした。

 この『お肉とたっぷりお野菜セット』は、お野菜が沢山でなかなか良いメニューね♪

 ここ二日間、蒼汰君はちょっとお野菜が不足気味だから、しっかり食べて貰ったわ。

 うん!良い感じ。

 勧められた温泉卵とプリンもとても美味しかったわ!


 食堂の横にある売店で可愛いお土産を見付けた。

 『地獄の天国ポムポム』という商品で、蒸しパンみたいなカステラの中にカスタードクリームが入っているお菓子で、丸くて小さくてポコポコして可愛いの。

 蒼汰君の家にお土産で買って帰りたかったけれど、今買うとあれだから諦めた。

 ホテルの売店とか、どこかで買えると嬉しいな。


 ――――


 「地獄巡り」を後にして遊歩道を歩いていると、いつの間にか私たちが泊まっているホテルが見えて来た。

 ホテルが見えて来た時に、凄く寂しい気持ちになってしまった。

 理由は分かっている。

 蒼汰君と二人きりの時間が終わるからだ。


 この手を放すと、私はまた独りぼっちだ……。


 そんな事を色々考えているうちに、ホテルのロビーに到着してしまった。

 ロビーには学年主任の先生が待っていて、手を繋いでいるのを見咎みとがめられたので、慌てて手を離した。

 でも、蒼汰君の手を放すのが嫌で、最後に少し強く握ってしまった……。


 その後、蒼汰君と一緒にインストラクターの事務所にお礼を言いに行き、スノーボードシューズをお返しした。

 スキーブーツのサイズの件も連絡が来ていたみたいで、二人ともサイズが合うブーツに交換して貰った。

 インストラクターから「途中で寄り道したでしょ?」と耳打ちされて、ドギマギしてしまう。

 少し照れながらうなずくと、「くあー。良いなぁ。俺も高校生に戻って、やり直してー!」とか言って笑っていた。




 蒼汰君とは「お腹いっぱいだけど、夕食の時に食堂でね」と言って別れた。

 別れた後、独りで部屋への廊下を歩きながら蒼汰君と繋いでいた手を見ると、やっぱり寂しくなって涙が出て来た。


 早く『来栖ひな』に戻って蒼汰君の家に行きたい。あの温かい空間で一緒に過ごしたい。あの時間だけは誰にも邪魔されないから……。


 部屋に戻ると、結衣ちゃん達が心配して待っていてくれた。

 涙目だった私を「帰れなくなって怖かった」と勘違いしたみたいで、皆涙目になって慰めてくれた。

 違うの……みんなゴメンね。


 結衣ちゃん達は、私たちを必死に探してくれたらしく、大変だったらしい。

 結衣ちゃんと里見さんに謝られたので、逆にみんなに迷惑を掛けた事を謝った。

 あの後どうなったのかを聞かれたので、途中の事をかなり端折はしょって説明した。

 蒼汰君が皆に話したらどうしようかと思ったけれど、何となく隠してしまった……。

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