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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 二人の時間と美咲の心
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第90話 「私、もしかして……」

(美咲)

 また転んだ。

 雪が柔らかいから痛くはないけれど、恥ずかしい。

 私が転ぶと蒼汰君が助け起こしてくれる。

 今日は二人ともずっと転び続けている。


 運動神経は悪い方だとは思っていなかったけれど、スキーは全然上手くならなかった。

 自分がイメージした通りに、足というかスキー板がついて来ない。

 他の人達は上手になって行くのに、私は全然。


 皆と一緒に滑っていたけれど、蒼汰君と二人で置いて行かれてしまった。

 急斜面で転ぶのが怖くてゆっくり滑ると、余計に転び易くなる。

 私は下手だから転ぶのだけれど、蒼汰君は私を気遣ってくれて、ゆっくり滑るから転ぶのだと思う。

 ごめんね蒼汰君。


 その後も私達はいっぱい転んで、転んだついでに雪がフカフカの場所で雪合戦をした。

 雪合戦と言っても、フカフカの雪は雪玉にならなくて、投げると直ぐ雪の粉になってしまう。

 その時だけ日が差して来て、雪の粉がキラキラして綺麗だった。

 何だか胸がドキドキするほど楽しかった。


 結衣ちゃんや里見ちゃん達と待ち合わせしたリフト乗り場に着いたけれど、誰も居なかった。私たちが遅すぎて置いていかれたみたい。

 蒼汰君からもう一度リフトに乗るか聞かれたけれど、リフトが上がって行く先は吹雪で見えないし、また上級コースを滑るのは転ぶだけなので、下に降りたいってお願いした。

 蒼汰君、我儘わがままを言ってごめんね。


 結局、一番下まで滑り降りて来て、少し休憩する事になった。

 でも、周りの景色も休憩所の雰囲気も、ちょっと違う気がする。

 そもそも、同じ高校の生徒がひとりも居なかった。


 蒼汰君もそう思っていたみたいで、確認してくると言って休憩所を出て行った。

 そのまま椅子に座って蒼汰君を待っていると、知らない学校の生徒や、大学生くらいの人から何度も声をかけられた。


 ナンパには興味が無いので、無視したり適当にあしらっていたけれど、しつこく食い下がる人が居て困った。

 そしたら蒼汰君が帰って来て、私の手を握って連れ去ってくれたの。

 ちょっとヒロインっぽくてドキドキしちゃった。


 調べてみると、やっぱり違うゲレンデに降りて来たみたい。

 インストラクターの所属する事務所の人が優しく対応して下さって、私たちは遊歩道を歩いて戻る事になった。

 スキーブーツは歩き難いという事で、スノーボード用のブーツを貸して下さる事に。

 その時に分かったのだけれど、私と蒼汰君はサイズが大きすぎるブーツを履いていたらしい。

 特に私は二サイズ位大きかったらしくて「これ何度も転んだでしょう?」と言って笑われた。

 体験学習の最初の説明の時に、私たちがインストラクターの話をちゃんと聞いていなかったのが原因だった。ごめんなさい。


 ――――


 遊歩道を二人で歩くのは、凄く楽しかった。

 ゲレンデからは見られない景色や、凄い量の雪が積もっている樹木。凍った川や氷柱になっている小さな滝とかを見る事ができた。

 それに、雪で歩けない場所があった時に、どうやって迂回するのかを二人で考えながら行くのが楽しかった。


 実は休憩所から逃げ出してから、ずっと蒼汰君と手を繋いでいる。

 手を放すと独りになってしまいそうな不安感と、蒼汰君がどこか遠くに行ってしまいそうな気がして、手を離すのが嫌だったから。


 もちろん、蒼汰君が会っている女性のことは頭をよぎる。

 その事を考えると、罪悪感と共にその女性の事を嫌だと思う気持ちと、私に優しい蒼汰君に対して腹立たしい気持ちが湧き起こってくるから、考えないようにしている。

 前園さんの顔もチラつくけれど、これも確信がある訳じゃないから今は考えない。


 積雪に阻まれて、遊歩道から車道沿いの柵を越える度に、抱きかかえてくれる蒼汰君にしっかりと抱きつく。

 その度に、そのままずっと抱きついていたいと思った。


 私、もしかして、蒼汰君の事……。

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