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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 二人の時間と美咲の心
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第89話 「二人の時間」

(蒼汰) 

 しばらく歩くと、周りの雪が少なくなり、ごつごつした岩が増えて硫黄いおうの匂いがしてきた。

 不思議に思っていると「地獄巡じごくめぐり」の看板が立っていて、大きな駐車場が見えて来たのだ。

 ふたのある側溝や敷地のいたる所から水蒸気が立ち上っている。

 「地獄巡り」は結構大きな観光施設の様で、傍に温泉旅館とかも建っていた。

 まだ時間もあるし、折角なので見ていく事にした。


 園内は暖かく、流石にスキーウェアーで見て回るには暑かったので、観光客用のスーツケースが入る大きめのコインロッカーに、帽子やゴーグルとか余計なものと一緒に預けた。

 ジャージにスノーボード用のシューズという変なファッションになってしまったが、観光客は少なかったから気にしない。

 地獄巡りは、温泉が凄い勢いで湧き出て来る場所があったり、綺麗な色のお湯の池や湯の花を集めている場所があったりしてなかなか面白かった。


 気持ち良さそうな足湯があったので、タオルを買って美咲ちゃんと一緒に浸かる事に。

 ずっと重たいスノボシューズで歩いていたから足が軽い。

 足湯だけれど、普通に温泉に浸かったくらい気持ち良かった。 

 他にも蒸気が充満している木箱に顔を入れる「顔蒸かおむし」とかがあって、美咲ちゃんは「美顔効果」に魅了されてしまい、そこからなかなか離れてくれなかった。

 美咲ちゃん、それ以上綺麗になってどうするの……。


 施設の奥の方に岩盤浴がんばんよくができる建物があったので、そこでしばらく寝転がり一緒に過ごした。

 暑くなって来たのか、美咲ちゃんがジャージを脱いでTシャツ姿で横になったので、お胸が気になって仕方が無い……。


 園内をひと回りすると、出口の近くに食堂と売店があり「地獄蒸じごくむし料理」の看板が出ていた。

 温泉の蒸気で食材を蒸して食べるという珍しい料理らしい。

 お店のお婆ちゃんが「滅多に食べられるものじゃないから、食べて行きなさい」と強く薦めるので、折角だし美味しそうだったので『お肉とたっぷりお野菜セット』を食べることにした。


 「地獄蒸し料理」は蒸す作業も楽しかったし、味もとても美味しかった。

 それに、お婆ちゃんは話上手で、話が凄く面白い。

 お婆ちゃんの話を聞きながら、美咲ちゃんが蒸した野菜を手際よく俺の皿に入れて、食べさせてくれる。まるで、本物の恋人同士みたい……。

 俺が完食すると、美咲ちゃんはいつもよりニッコリしてくれた。

 美咲ちゃんが食べさせてくれるのなら、いつだってちゃんと食べるよ!


 その後、またお婆ちゃんに薦められて温泉卵と地獄蒸しプリンも食べた。

 美味しかったけれど、お腹がいっぱいだ。もう夕食要らないかも……。


 それにしても、これって完全にデートだよね!

 俺、美咲ちゃんとデートしてるんだよね!


 ――――


 地獄巡りを楽しんで、また遊歩道へ戻りホテルを目指す。

 地獄巡りの時も、遊歩道を歩いている時も、俺は当たり前の様に手を繋ぎ続けた。

 美咲ちゃんも全く嫌がらないし、向こうから繋いでくることさえあった。


 もしかして、いま告白をしたら、行けるんじゃないか……。


 そんな事を思ったりしたけれど、もし「そんな気は無い」って断られたら、正に()()()()になるので、ヘタレの俺は結局何も言えなかった。

 それでも今日は恋人みたいに過ごせて本当に楽しい。


 それからさらに一時間位歩くと、宿泊しているホテルが見えて来た。

 本当は戻りたく無かったけれど、仕方なくそのままホテルに戻る。

 気が付かずに入口まで手を繋いだままだったから、待っていた学年主任の先生ににらまれて、慌てて手を離した。


 それでも手を放す時に気持を込めて強く握ったら、気のせいかも知れないけれど、美咲ちゃんも握り返してくれた気がした。 


 あーあ。美咲ちゃんと二人きりの時間が終わっちゃった……。

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