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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】  揺れる心と二人の距離と
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第70話 「香り」

(蒼汰)

 クリスマス・イブの口紅の件で、気まずい感じになったと思っていた来栖さんは、次に会った時には普通に接してくれた。

 まあ、大人の女性にとっては些細な事なのだろう。変な言い訳をしなくても良かったのかも知れない。


 美味しいご飯を食べて、一緒にツリーを片付けて楽しく話をして過ごした。

 来栖さんは年末の三十日から年明けの四日までお休みだ。

 その間のご飯の事を心配してくれて、インスタント食品や冷凍食品をいっぱい買ってきてくれた。


 それに、うちはおせち料理を用意しないと聞いて、黒豆に筑前煮ちくぜんにかず料理などを作り置きしてくれた。本当に感謝だ。

 親父にはこういう気遣いができる人を嫁にして欲しかったと思う。

 そうだったら、俺の人生はもうちょっと明るかったのかも知れない。


 そういえば来栖さんの着ている服に変化があった。

 黒やこん色のすその長いスモッグの様な服に変わった。『割烹着かっぽうぎワンピース』という服らしい。

 とても動きやすくて便利だと言っていた。

 でも、全体的な印象は前と全く変わらない。やっぱり魔女っぽい……。


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(美咲)

 「地味な服を」という事で着ていた母のアバヤだが、二着有るうちの一着をダメにしてしまった。

 流石に一着では洗濯が間に合わないので、新しく買い足す事にした。


 通販サイトで似た感じの物を買おうと思ったが、良く考えたら地味な服ならわざわざアバヤを買う必要は無い。

 探してみたら、ワンピース型の割烹着なるモノを見付けて、その中で地味な色の物を三着購入した。

 これで、アバヤと合わせて四着になるので、洗濯が間に合わなくて夜中にアイロンやドライヤーで乾かす様な事はなくなる。


 本当はエプロンワンピースの方が可愛らしくて良かったのだが、どうしてもインナーを組み合わせないといけないしお洒落に着たくなるので、一着で全身が隠れる割烹着ワンピースにしたのだ。

 それにしても、働いたお金で自分の為に最初に買った服が、地味な割烹着ワンピース三着という女子高生は、きっと私ぐらいだろう。


 ちょっと悔しいので、可愛い下着でも買おうと思いショッピングモールに行った。

 色々見て回って、ミントグリーンの可愛いブラとショーツ二枚のセットを二セット購入した。

 だって、特売で安かったんだもん……。


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 蒼汰君の家のアルバイトは、年末年始はお休み。

 六日間も空ける事になるので、その間の蒼汰君の食事が心配になってきた。

 放って置くと、ろくでもないモノしか食べなさそうなので、蒼汰君のお父様に相談して、冷凍食品や少し手を加えれば食べられるインスタント食品を沢山購入した。

 それと、蒼汰君の家はお節料理を用意しないらしいので、保存の効く料理を何品か準備しておいた。

 これで少しは大丈夫かな?


 あれから蒼汰君の帰りが遅い日が何日かあった。

 その度に浮かない顔をして帰ってくる。

 どうかしたのかしら……。

 あれから口紅は付けて来ないけれど、帰って来ると女性が好む香りがフワッと漂ってくる。

 良い香りだけれど、香水ではなくコンディショナーの香りだと思う。

 この香りは結衣ちゃんじゃない……。


 別に気になる訳ではないけれど、その香りがする女の子とすれ違ったりすると、どんな娘か確認してしまう様になった。

 別に気になる訳ではないけれど、チェリーピンクの口紅を付けている女の子がいると、確認してしまう。

 別に気になる訳ではないけれど、その両方の特徴に当てはまる女の子がいると、しばらく凝視ぎょうししてしまう。

 来栖ひなの変装の時にこれをやると、相手がおびえてちょっと申し訳ない。


 言って置くけど、だた興味があるだけ。

 わたし別に気になんかなっていないわよ……。

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