表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 雪の聖夜と恋の行方
63/186

第63話 「俺にはハードルが高すぎる」

(蒼汰)

 七時になった。

 すると展望台から見える景色が一変した。

 港から展望公園の展望台までの一帯が、クリスマスの電飾で一斉に照らされたのだ。

 ブルーの川の様なものから、虹色に変化していくもの、星の様な輝きを灯しているものなど、何処を見渡しても綺麗な電飾で満たされていた。


「凄い! 凄いですね、先輩!」


 俺は興奮を抑えられず、子どもの様にはしゃいでしまった。


「本当に綺麗ね」


 先輩も嬉しそうに電飾を見上げていた。

 見上げる表情も本当に綺麗だ。

 一緒に電飾を見上げていると、空から何か降って来た。

 雪だ!

 ロマンチック過ぎて困ってしまう程のシチュエーションになってしまった。

 これで早野先輩みたいな人が現れたら映画の世界だね。


 俺は抱き合う二人を観客の様に見つめるんだ……。


 その時、気が付いた。

 先輩の相手の人が来たら、俺どうすれば良いの?

 隠れるの? 逃げるの? まさかその場に居るの!?


「あ、あの。先輩……」


「うん? なあに」


「相手の人が来る前に、俺はどこかに行っておいた方が良くないですか?」


「……え? ダメだよ。居てよ」


「え、でも」


「良いから、居て」


「……は、はい分かりました」


 これ以上逆らうと危険そうなので、従うことにした。




 七時になって十分が過ぎたが、先輩の相手はまだ現れない。

 気が付くと雪が少し積もり始めていた。

 美麗先輩を十分も待たせるなんて、いったいどんな奴だ?

 俺は先輩の意中の相手の事が、今まで以上に気になり始めた。


 二十分が過ぎた。

 まだ来ない。

 先輩の意中の人って、もしかして彼女持ちの人とか?

 まさか不倫をしていて。私と家族のどっちを選ぶの? 的な感じで、相手の人を待っているとか。

 いや、ここに来る途中で事故にあって来られなくなったとか……。

 一言も話さずに、心細気こころぼそげに待っている先輩の背中を見ながら、俺の頭の中には色々な想像が渦巻いていた。


 三十分が過ぎた。

 いくら何でも遅すぎる。

 そいつは何様だ?

 こんなに健気に待っている先輩がいるのに、寒空の下にこんなに長時間待たせるなんて。

 遅れるなら電話のひとつも出来るだろうに……。

 俺はいつまでも現れない相手に対して本気でイライラしていた。

 来たらぶん殴ってやろうか。

 寂しそうな美麗先輩の後ろ姿に、我慢ができずに声をかけた。


「ねえ先輩」


「……」


「美麗先輩?」


「……」


 先輩の肩が大きく揺れている。


「先輩。大丈夫ですか……」


「……うん。ちょっと待ってね」


 先輩は手を胸の前で握り合わせて、大きく息を吸い込んでいた。

 悲しみなのか怒りなのかは分からないけれど、先輩は何度も息を吸い込んでいた。

 俺はこんな時にどうしてあげたら良いのかとか全く分からない。

 早野先輩とかだったら、こういう時にさっと抱きしめてなぐさめたり出来るのかな。

 俺にはハードルが高すぎる……。




「……うん。大丈夫」


 そう言って先輩が振り向き、思い詰めた様な表情をしながら近づいてきた。

 なんと声をかけて良いのか分からない。


「み、美麗先輩。あ、相手の人。こ、来ないですね」


「……」


 うわっ。最低の言葉を言ってしまった気がする。

 俺は全然ダメだ。

 すぐ目の前に傷ついた女性が居るのに、何もできない……。

 結局、口をついて出た言葉がこれだ。


「こ、こんなに素敵な、み、美麗先輩を、こ、こんなに待たせるなんて、と、とんでもない奴ですね」


 また、くだらないことを言ってしまった。

 気が利かないにも程がある。


「私を待たせる……か」


 先輩は苦笑いをしている。

 ああ本当に何の役にも立たない。俺は情けない奴だ。

 先輩は目の前に来ると、しばらく俺を見つめていた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=489571759&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ