第41話 「鳥レバー」
(美咲)
家に帰って少し休んだら、今日も家政婦のアルバイトだ。
今日は蒼汰君も疲れているだろうし、栄養バランスバッチリの夕食を作るぞ!
でも、体調は万全ではないので、今日もキャリーケースを持って行こう。
あの変装でキャリーケースをゴロゴロしている姿はちょっとあれだけれど仕方が無いわね。
周りから変な目で見られているけれど、気にしない。
いつものスーパーに行き、食材を選んでいる時に良い物が目に入った。
疲労回復にも良いし、今の私にも優しい食材だ。
蒼汰君の今日の晩御飯はこれを使ったおかずと、雑穀米のご飯にシジミのお味噌汁。
それにツナと豆のサラダに季節のフルーツを添えて完成♪
うん!いい感じ。
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流石に今日は疲れているだろうと思っていたら、蒼汰さんは今日もハイテンションでダイニングやって来た。
体育祭がそんなに楽しかったのかしら……。
今日のお昼は一緒じゃなかったから、お弁当がどうだったか聞いてみたら、とても美味しかったと言ってくれた。良かった。
でも、食事を並べて今日の夕食の内容を話すと、蒼汰さんの表情が少し曇った。
蒼汰さんは困った様な顔をしながら、今日のメインの『鳥のレバニラ炒め』を食べ始めた。
でも、食べる前の表情が凄く気になっていた。
「蒼汰さん。お料理の味、何か変でした?」
「……いえ、実は俺レバー苦手で、食べようか迷っていたんです。来栖さんの疲労回復効果とかの説明を聞いて、頑張って食べてみたんです」
「あ、ごめんなさい。苦手って知らなくて。直ぐに何か他の物を作りますね」
「あ、いや、来栖さんのレバニラの味、凄く美味しいから全然大丈夫です」
「本当に宜しいのですか?」
「ええ、もちろんレバー自体の味とか食感は苦手だけれど、来栖さんの味付けなら本当に美味しく食べられるから大丈夫です」
ごめんね蒼汰君。レバー嫌いな事知らなかった……。
その後、今日の体育祭の事を色々話してくれた。
もちろん、殆ど知っている事ばかりだったけど、蒼汰さんの近くに居た三年生から聴いたという話は、知らないことばかりでとても楽しかった。
「そうそう、来栖さん。今日ですね、倒れた女の子助けたんですよ」
あら、いきなりここで私の話?
「そうなんですね。それは、大変だったでしょう」
「いや、もう無我夢中だったから。必死で保健室まで運んで……」
蒼汰さんの説明で、私がどんな感じだったのか初めて知った。
ちょっと恥ずかしい。
でも、蒼汰さん。本当にありがとう。
私、いつもお世話になりっぱなし。何かお礼しなきゃ……。
「……で、前からその娘には、背中に翼が生えている様な気がしていて……」
えっ、何?
私ってそんな風に見えているの?
何だか胸がドキドキしてきた。
それってもしかして……。
「そしたら、スゲー重たくて全然持ち上がらなかったんですよ」
「そ、そそそれは大変でしたねえ」
……蒼汰君。明日から一週間、あなたのご飯は、お湯で煮ただだけのレバーよ!




