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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 蒼汰と美咲と来栖ひな
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第4話 「結衣と美咲さま」

(蒼汰)


「カバンに入れ忘れました」


 小学生のような言い訳に、コツンと拳骨げんこつを入れるだけで彩乃先生は許してくれた。まあ、提出忘れは他にも沢山いたしね。


 しかし彩乃先生……。

 そんなに胸元の開いた服で椅子に座って、この位置に男子生徒を立たせてはいけません。

 困るじゃないですか。困らないけど、困るんです。

 女子が一緒の時に、この状況は非常に困るんです。

 先生の胸元に吸い寄せられる目線を女子に気が付かれたら……。

 考えただけで寒気がします。

 しかもそのひとりが美咲さま。

 最悪の印象。一生の後悔に繋がりかねません。

 彩乃先生、今日はダメです。

 ワクワクが止まらないけれど、女子が周りにいるこの状況では拷問ごうもんです。

 止めて下さい。別日に……そう、航とかと一緒の時にお願いします。


 そんな馬鹿な事を考えながら、美咲さまに悟られぬように先生のお胸の引力と必死に戦っていた。


「そんなことより。上条くんと一色さんは、月末にある鍛錬たんれん遠足のクラス委員やってちょうだい」


「わたしと上条くんが、遠足のクラス委員ですか?」


「まあ、当日の仕事は点呼と救護程度しかないけれど。それまでに、地図や注意事項の冊子の作成とかがあるかな。ほら、こんな感じの冊子」


 結衣と彩乃先生が委員の作業内容について会話をしている間、美咲さまは二人の会話を何となく聞いている感じだ。そういえば、美咲さまは何で一緒に呼ばれたのだろう。

 しかし、あまり人と馴染めない俺を何故委員などに選ぶのだろうか。これは何かの罰ゲームなのか?

 得心とくしんのいかない顔をしていると、彩乃先生は俺の表情に気が付いたのか、選んだ説明をしてくれた。


「ああ、あのね。上条くんと一色さんは、クラスの委員を何もしていないでしょう。来月の体育祭のクラス委員とどっちが良い?」


 比べるまでもない。体育祭のクラス委員のハードさは、昨年の体育祭で確認済みだ。


「「遠足でお願いします!」」


 二人でハモリながら即答した。


「それでね。天野さんも一緒に委員をして下さい。グループ分けとか点呼用の名簿作成とかするから、クラスメイトの名前を無理なく覚えられるでしょう」


 え? 先生、いま何ておっしゃいました?

 美咲さまが、私共と一緒に何をなさるって?


「はい、分かりました。心遣い頂きありがとうございます」


 天使の声が舞い降りた。

 結衣と美咲さまと一緒に遠足委員のお仕事。

 神様、昨日から何のボーナスステージなの? もしかして俺、もうすぐ死ぬの?

 だったら、彩乃先生のお胸の引力に逆らっている場合じゃない。もっとしっかりと見ておかなければ!

 そう思った途端、立ち上がった先生に早く下校する様に促された。残念。


 二階にある職員室から靴箱がある昇降口に繋がる階段の方へ歩いていると、後ろから二人の会話が聞こえて来た。


「ねえ、天野さん。一緒に帰ろうよ」


「ええ。一色さんありがとう」


結衣(ゆい)で良いよ」


「じゃあ私も美咲で」


「帰り道にこの辺の案内もするよ」


「本当に! ありがとう」


 なんて微笑ましい会話だろうか。

 美咲ちゃん。俺のことは蒼汰って呼んでくれ。君をエスコートするから!

 なんて事を言えるはずもなく、大人しく階段を下りて行く事にした。二人の足音が後ろから聞こえて来る。


「ねえ、蒼汰!」


「そうた?」


 おお、美咲さまが俺の名前を呼んでいる。


「ああ、こいつ上条蒼汰かみじょうそうたっていうのよ。幼馴染だから、ついその呼び方になっちゃうの」


「上条くんのことなんだね。高校で幼馴染って凄いね」


「そう? 蒼汰は全然凄くないよ。ねえ蒼汰! 美咲ちゃん案内するから、蒼汰もお供しなさいよ」


「お、おお……」


 結衣! 素晴らしい提案だな! 今日からお前の事を女神と呼んでも良いか?

 もう「こいつ」呼ばわりも「蒼汰は全然凄くない」も許してあげるからさ!

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