第37話 「男女混合騎馬戦」
(蒼汰)
白熱する騎馬戦の中、青組女子チームが異常な強さを見せていた。
クイーン騎馬を中心に上手に逃げ回っている。
でも、何故か上手く逃げる度に、近くの応援席から笑いが起こっていた。
青組女子チーム騎馬が俺らの応援席の近くまで来た時に、その理由が分かった。
「きゃー! 痴漢! 変態! どこ触るつもり! お巡りさんこの人です!」
追いすがって来る男子騎馬を、声で撃退していたのだ。
これは強い。
体育祭当日まで練って来た作戦だろう。
緑組キング騎馬の怒涛のジャンケン八連勝などがあったが、最終的に例の青組クイーン騎馬と紅組キング騎馬、そして女子から大声援を受けている紅組騎馬が一騎残っていた。
青組は「桐葉先輩頑張ってー! 美麗ちゃん素敵!」などと、青組クイーンへの応援で盛り上がっている。
青組以外の女子からは、紅組騎馬への声援が飛んでいる。
声援を受ける紅組騎馬の騎手は……そう、早野涼介だ。
声援に手を振ってやがる。ムカつくぜ。
先ずは、青組クイーン騎馬と紅組早野騎馬の一騎打ちだ。
向き合って何か言っているが、声援で聞こえない。
最初のジャンケンは、お互い『グー』であいこ。
そこでまた何か言っていたが、やはり聞こえない。
次は早野先輩は『グー』で、桐葉とかいう先輩は『パー』だった。
歓声が沸き起こり早野先輩の騎馬が解体された。
ざまあみろ! 美咲ちゃんにちょっかい出すからだ!
この後の競技もお前は全敗だ!
俺の鼻息が上がる。
でも、早野先輩の騎馬達も全然悔しがっていない。そんなものか。
続く頂上対決に声援はヒートアップしていた。
向かい合うキングとクイーン。
クイーンがまた何か言っている。相手を煽っているのだろう。
全校生徒が注目するなか、決戦のジャンケンが行われた。
キングは『グー』で、クイーンは『パー』
青組クイーンの勝利だ。
青組から大歓声が沸き起こる。
声援に手を振って答えていたクイーンが、負けた早野騎馬とキング騎馬に何か言うと、今度は全員が悔しそうに座り込んだ。
なかなか煽り上手な人のようだ。
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騎馬戦から引き上げて来た近くの三年生の話が聞こえてきた。
「桐葉の奴、酷いな」
お、どうした? 何があった。
「早野と対戦した時『グーを出したら、騎馬全員とでプールデートしてあげるー』って言ったらしい」
「おおー」
「で、桐葉はモテ男の早野はそんな事に引っかかる訳無いと思って、裏をかいてグーを出したらしい」
「でも、早野は従順にグーを出したから、あいこになった」
「なるほど」
「桐葉は一瞬呆れたが、直ぐに『次もグーを出してくれたら、私達ビキニ着てこようかなー』って言ったらしい」
「で、早野はもちろん次もグーを出したという事か」
「そうそう、そういう事。これは仕方がないな」
「で、桐葉は同じ事をキング騎馬にも言って、あっさり優勝という訳だ」
「終始女の武器全開だな。そりゃ勝てないわ」
「で、ここからが酷くてな」
「負けても嬉しそうな男子騎馬の連中に『全部嘘! 男って馬鹿ねー!』と言って去って行ったらしい……」
相変わらず情報通の三年生だ。
なるほど、あの状況はそういう訳だったのか。
早野先輩。
美咲ちゃんの事は絶対許せないけれど、ちょっと見直したぞ。




