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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 蒼汰と美咲と来栖ひな
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第3話 「席替え」

(蒼汰)

 始業式が終わり教室に戻ると、簡単な連絡事項に続き、席替えのクジ引きが始まった。

 美咲さまが加わり、クラスの生徒数は四十名。

 これからの学生生活を天国にも地獄にも変える運命の瞬間が待っていた。

 あまり人と接触したくない俺にとっては、人の出入りが少ない窓側の最後尾辺りが特等席。

 しかし今日の俺は違う。美咲さまの隣になれるのであれば、教壇の目の前、そう被告人席であっても不幸じゃない。


「え? 教科書を未だ持ってないのかい。僕の教科書を見ていいよ」


 席を近づける俺と美咲さま。


「そうだ、自己紹介がまだだったね。俺の名前は……」


上条蒼汰かみじょうそうたさん」


「え、何で知ってるの?」


「ウフフ。だって一目見た時から……」


 妄想が際限なく膨らんでいく……。




「はい。好きな順番で並んで。ひとりずつ番号を引いて先生に報告して」


 教壇に置いてある箱に手を突っ込み、席の番号が書かれた札を引く。

 彩乃先生が監視役として見守るなか、黒板に書かれた席が着々と埋まって行った。


 美咲さまの席が何処になるのかを先に知りたかったが、残念ながら列の一番後ろに並んでいた。きっと遠慮しているのだろう。何とも奥ゆかしい。

 結果、自分の席は窓側から二列目の後ろから二番目だった。今までの俺なら特等席だが、今回は美咲さまの席次第だ。

 まだ周りの席には十分空きがある。勝負はこれからだ。


 航は廊下側の真ん中辺り。

 あの場所では、購買部の『焼きそばパン』の熾烈しれつな着順争いには勝てまい。残念だったな。

 龍之介は教室中央の前の方。まあ、あいつは席の位置など気にしないから、問題ないだろう。

 そして最後に残った番号。

 全ウザオ達が注目しているであろう、美咲さまの席は……。

 窓側の列の後ろから三番目。

 そう、俺の席からは窓に向かって斜め前。

 隣同士という夢は実現しなかったが、外の景色を見ると美咲さまが写り込むというパーフェクトポジションだ。

 どんな時でも、美しい美咲さまを自然に視界に捉えることができる。

 そう、意識しなくても偶然視界に捉えてしまうのだ。

 しかし、外の景色を見てしまう回数が激増して、授業に集中できない事が予想される。これは致し方ない。


 美咲さまの前後の席と、俺の前の席は全部女子。

 美咲さまは女子に囲まれている。完璧だ。

 ウザオは全て排除された。ウザオ共の歯ぎしりが聞こえてくるようだ。

 ──仕方がないじゃないか、神様は俺を選ばれたのだ。

 何故そこまで言い切れるのか?

 自分の席の位置はもちろんだが、決め手は、美咲さまのうしろの席の女子だ。

 一色結衣いっしきゆい。そう、俺が会話をする事ができる唯一の女子だ。

 航と同じく、小学生の時からの幼馴染の結衣なのだ。

 人当たりの良い結衣ならば、美咲さまと直ぐに仲良くなるだろう。

 そうすれば、俺はその輪に入れば……いや輪に入るのが無理でも、結衣を通じて美咲さま情報を得ることができる。

 できるか? できるさ、多分……。


 ホームルームも終わりに近づき、美咲さまのご尊顔を拝謁はいえつしつつ、あとは帰宅するのみと思っていたら、彩乃先生から声がかかった。


「上条くん、一色さん。このあと職員室に来て。あー、それと天野さんも」


 何、その夢の呼び出し。神様が優しすぎて怖い。


「今日提出の宿題を集めて持って来て頂戴」


 何、その悪魔の呼び出し。宿題のこと完璧に忘れていたわよ。

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