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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 美咲の瞳と三十路のひな
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第19話 「困ったこと」

(蒼汰)

 午後からの行程は一段とハードになった。

 気温が更に上がり、アップダウンも激しく落伍者らくごしゃが続出し始めている。

 俺らのクラスも、残り三キロくらいのところで龍之介たちのグループが立ち止まっていた。女の子が一人座り込んでいる。


「おう、龍之介。大丈夫なのか?」


「分からない。熱中症ぽいから、休ませてる」


 結衣が駆け寄って、女の子から話を聞いている。


「蒼汰。救急箱」


 結衣が俺を手招きする。救急箱は俺が預かっているのだ。

 リュックの中のポシェットの様な救急箱を取り出して、結衣に渡した。


「はいはい。男子はちょっと先に行っててー」


 冷却シートの封を開けながら、結衣が行程の先を指さしていた。

 龍之介たちは、指示された通り先に行ってしまった。

 結衣は座り込んでいる女子の額に冷却シートを貼り、美咲さまは水筒の水で浸した冷感タオルを女の子の首に巻いてあげていた。事前に教えられた救護の手筈通りだ。

 後は脇の下を冷やすのと、可能なら鼠頸そけい部に冷却シートを貼るだけだな。

 結衣が女の子の体操服をめくり上げようとして手が止まった。どうした?


「蒼汰! 回れ右!」


「はい!」


「気をつけ!」


「はい!」


「そのまま待機!」


「はい!」


 そりゃそうだよね……チッ!


 座り込んでいた女の子は意識もしっかりしていて、それほど重症では無さそうだったけれど、これ以上歩くのは止めさせて先生に引き継ぐ事にした。

 その場に残っていた龍之介たちのグループの女の子達は、心配無いと分かると龍之介たちを追いかけて行った。

 俺ら三人とその女の子だけがその場に残った。


 他の二年生のクラスが通り過ぎ、一年生の集団にも追い越され始めた。

 しかし先生が来ない。

 どうやら、落伍者が続出して大変な事になっているようだ。

 一年生の男子共が通り過ぎていく時の美咲さまへの熱い眼差しがウザい。

 ダメだ! お前らは見んな。俺の美咲さまだ!

 俺はその後ブロックポジションを保ち続けた。




 結局、一年生も全員通り過ぎたが、先生の気配はまだない。


「そうだ。蒼汰と美咲ちゃんは先に行ってて。先で他の落伍者が出てるかも知れないし」


「結衣は?」


「私はこの娘と一緒にもう暫く先生を待ってみるから。先生来たら直ぐ追いかけるね」


 確かに俺が女の子と残るのもあれだし、美咲さまはまだコミュニケーションに難ありかな。


「分かった。頼む」


「結衣ちゃん、私が残ろうか?」


「良いって良いって。直ぐ追い付くから。大丈夫」


 結衣! 結衣! 結衣! お前最高だな!


 ----


 一年生の最後尾が通り過ぎてから、大分時間が経っていた。

 クラスの連中に追い付くも何も、このハードな行程じゃとても無理だ。

 いや、無理じゃなくても急ぐ訳ないじゃん。美咲さまと二人きりだぞ!

 その代わりといっては何だが、俺が少し前を歩かないといけないから、神々しい膨らみを確認することも、その美しいご尊顔を拝謁はいえつする事も難しくなってしまった。

 そして、最も困ったことは、結衣が居ないことで会話が全く出来なくなってしまった事だ。

 これ程恵まれた状況にありながら、俺は無力だった……。

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