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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【青年の時間】 僕の好きな人は……
180/186

第180話 「公平な提案」

(ひな)

 私は蒼汰君と二人で、国際線の到着ゲート前に立っている。

 入国審査を済ませた人達が続々と出て来ていた。

 人の流れが少し途絶えた頃、私達が待っている人が出てきた。

 凛としたと立ち姿は相変わらず美しい。

 彼女は私達に気が付くと微笑みながら歩いて来た。

 三年半前に卒業式で会った時より、格段に美しい女性になっていた。

 あまりの綺麗さに、不安で胸が締め付けられる……。


 美麗先輩は私を見て微笑んだ。でも、直ぐに蒼汰君の頬を両手で包み込むと、当たり前のようにキスをした。

 蒼汰君は少し驚いた様な感じだったけれど、自然な感じで腰に手を回して、先輩のキスを受け入れていた。

 私は俯いて、ただ耐えるしか無かった……。


 どの位の時間キスをしていたのか分からないけれど、先輩は俯く私の方に近づいて来ると、いきなり私を抱きしめた。


「来栖ひなさん。お帰りなさい」


「……美麗先輩もお帰りなさい」


「ここにあなたが居るという事は、蒼ちゃんが私との約束を守って、頑張ったという事ね」


「は、はあ」


「ねえ……」


 小声でそう言うと、私の耳元に顔を寄せて来た。


「……蒼汰が私との事を話したのは、その……そういう事をした後、それとも前?」


「えっ? あ……後です」


「うわっ! 最低ー! 再会の勢いを利用して、そういう事をしておいて、後から話すって酷い奴ね」


「え、ええ……でも、私も……」


「その辺の事は一緒に問い詰めてやりましょうね!」


「は、はい……」


 先輩は私から離れて蒼汰君の傍に戻って行った。


「私は実家に荷物を置いて来るから、蒼ちゃんの部屋で待ち合わせという事で良いかしら」


「えっ! 俺の部屋に集まるの?」


「あら、公衆の面前で修羅場を迎えたい?」


「……」


「嘘うそ。まあ、とにかく三人でゆっくり話しましょう」


「う、うん……」


 ----


 三人分の夕食が出来上がった頃に、美麗先輩は部屋に来た。

 割とラフな格好で、自分の部屋に帰って来たみたいな感じだった。


「あー、いい香り。もしかして私の分もある?」


「ええ、もちろんです」


「やったー! かのスーパー家政婦来栖さんの手料理が食べられるのね」


「いえ、そんな……」


「嫌味じゃなくて、本当に嬉しいのよ」


「あ、ありがとうございます」


「じゃあ準備しましょう」


 先輩はそう言うと、夕食を食べる準備をテキパキと始めた。

 まあ、一年間住んでいたから当たり前だけれど、物の場所に詳しかった。

 私も負けじと準備を頑張る。

 二人の迫力に気おされて、蒼汰君は椅子に座ったまま固まっていた。


「美味しかったー! ひなちゃんは本当に料理が上手なのね!」


「ありがとうございます」


「さてと……。お腹もいっぱいになった事だし、私が出国してからの事を聞かせて頂戴……」


 ----


「……なる程ねぇ。蒼ちゃん格好良いじゃん。ひなちゃんも頑張ったね」


「え、ええ」


「で、蒼ちゃん。私達の事はどうするか決めたの?」


 美麗先輩がいきなり核心を突いて来た。

 私は蒼汰君の結論が出ていない事を知っている。

 私も先輩と話もしないで結論を出して欲しく無いと思っていた。


「いや。みぃはどうなの?」


「え、わたし? 私の気持ちを聞きたいの?」


「う、うん」


「もう、蒼ちゃんはだらしがないなぁ……私は留学前の気持ちと全く変わって無いわよ! 何なら今日からまたここで一緒に暮らしても良いわよ」


 先輩の宣言を聞いて胸が苦しくなる。

 もしかしたら蒼汰くんの事を諦めてくれるかも知れないと、甘い期待を抱いていたから。

 私のそんな想いはピシャリと切り捨てられてしまった。


「とか言い切ってしまうと、ひなちゃんに失礼だからあれだけれど、蒼ちゃんはどうなの?」


「う、うん。正直な気持ちを言うと、どうして良いのか分からない」


「何それ。三人仲良く暮らしていきましょうって事?」


「い、いや。そんな意味じゃないよ……」


「蒼ちゃんは高校の時からそうだもんね。優柔不断で私と美咲ちゃんのどっち付かずでさ」


「……」


「じゃあ、ひなちゃんは?」


「えっ? えーと。私はこの件について強く言える立場じゃないので……」


「何を言っているの! 一番の当事者なんだから、蒼汰に強く言って良いと思うよ」


「え、いや、でも……」


「もう! 二人とも私がこうって言ったら、そうしますって感じだね」


「……」


「分かったわ。少し時間を置きましょう。ひなちゃんは何曜日がお泊りだっけ?」


「え、えーと。月、木、金です」


「分かった。じゃあ私は火、水、土にここに泊まるから。日曜日は三人で過ごしましょう」


「み、みぃ?」


「なに? 優柔不断の蒼ちゃんが結論を出すまで、私とひなちゃんと同条件で過ごすだけよ。一番公平でしょう」


「……」


「美麗先輩! 私も先輩の提案に賛成です」


「でしょう! ひなちゃん仲良くしましょうね」


「はい。宜しくお願いします」


「えぇぇぇ……」

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