表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【青年の時間】 二人の想い
178/186

第178話 「丸尾君と早野先輩」

(蒼汰)

 翌朝、俺は明日菜さんよりも早く起きて、専門家に相談することにした。

 部屋の外から先ずは丸尾君に連絡を取り、お昼頃に家に来てくれる事になった。

 そして、もうひとり。

 この手の専門家と言えば……。もちろん早野先輩だ。


「蒼汰! お前から女の相談を受けるとはな! お前にも会いたいし、俺も行くわ」


 ありがたい事に、先輩も来てくれる事になった。


 部屋に帰ると明日菜さんはバリケードに戻っていて、帰宅拒否の体勢を整えていた。

 目の前で着替えられた時には『もう明日菜さんを三人目にして良いじゃない!』って心底思ってしまったが、劣情を何とか抑えた。

 先に丸尾君と早野先輩と話して無ければ、どうなっていたのか正直自信が無い……。


 その後、お茶休戦などを挟みながら、お昼ご飯を買って来ると言って二人を駅に迎えに行った。


「君は相変わらず三股なんだね。本当に凄いよ」


 丸尾君が真顔で俺を見つめて来るから、全てを見透かされそうで怖かった。


「いや、今回は違うから。いや、前回も違うからね……」


 丸尾君を前にすると冷や汗が流れる。


「蒼汰。美麗と美咲に続いて第三の女か。俺よりもその手の素質が有る様な気がするぞ」


「そんな訳ないでしょう。もしそうならこんな事で苦労しませんよ」


「あはは。まぁそうだな」


 先輩は笑いながら、俺の肩をポンポンと叩いていた。

 こんな事の為に、わざわざ来てくれた先輩に感謝だ。


 二人を連れ帰ると、いきなり男が三人になってしまい、明日菜さんは少し怯えていた。


「明日菜さん。早野先輩に丸尾君です。俺の大事な先輩と友人です」


「どういうおつもりですか。三人で無理やり追い出そうという事ですか?」


「え、違う違う。少しお話ができればと思って」


「……」


「取りあえず一時休戦にしませんか? お昼ご飯買って来たので」


「分かりました。でも、追い出すという事でしたら、本当に脱ぎますわよ」


「蒼汰! 追い出すって言ってくれ!」


「先輩ダメですって。彼女冗談が通じないから……」


「まあ、上条さん酷いわ」


「あ、いや。取りあえず出て来て下さい。ご飯食べましょう」


 食事を済ませると直ぐにバリケードに戻った明日菜さんに、丸尾君が話しかけていた。

 俺と先輩はテーブルに座ったまま、遠巻きに様子を伺っていた。

 明日菜さんは、頷いたり首を振ったりしながら、丸尾君と話していた。


 しばらくすると、顔を手で覆って泣き出してしまった。

 丸尾君は淡々とした表情で戻って来ると、昨晩俺が想像した事と、ほぼ同じ事を話してくれた。

 やはり死別した父親の事が忘れられず、誰かに愛されたくて必死になっているとの事だった。


 その話を聞いてから、早野先輩が話しかけに行った。

 明日菜さんの目がハートマークになっていた。そりゃそうだ……。

 しばらく話し込むと、先輩は明日菜さんの頭を撫でて帰って来た。


「良い娘だな」


「ええ、そうなんですよ」


「変な男に騙されない様に、色々教えて来たよ」


「どんな事をですか?」


「蒼汰とそういう事をしたら、都合の良い女と遊べてラッキーと思われるだけだぞ。蒼汰はそういう一面が有るから注意した方が良いと説明してきた」


「せ、先輩……」


「まあ、それは冗談として。本当に好きな相手とじゃないと、悲しい目に遭うだけだと教えてきたよ」


「それで、納得してくれました?」


「ほら」


 明日菜さんの方を見ると、バリケードを解体し始めていた。


「それと、彼女とひとつ約束をしたから、夕方付き合ってくれ」


「え、ええ。分かりました」




 その後は四人で楽しくお茶などしながら過ごして、夕方、明日菜さんを三人で送って行った。

 俺と丸尾君は門の前で待機して、早野先輩と明日菜さんは二人で玄関に向かって行く。

 明日菜さんが門扉を叩くと執事さんが出て来て、その後、大慌てでメイドさんや例の姉と思われる連中が出て来た。

 早野先輩は少し話をすると、明日菜さんの頬にキスをして、手を振りながら帰って来た。


「蒼汰、夕飯(おご)れよ」


「はい、喜んで!」


 居酒屋で食事をしながら、先輩の話を聞いた。


「……で最後に、俺の大切な明日菜さんを、あまり虐めないで下さいねって言ったら、あの嫌な姉どもが……」


 専門家二人のお蔭で、取りあえず俺は危機を脱する事が出来た。

 丸尾君も早野先輩や俺の事を色々聞けて楽しかった様だし、先輩もご機嫌だった。

 その日は三人で深夜まで楽しく過ごした。

 こんな感じで収まるのなら、明日菜さんともうちょっと色々と……いえ、何でもないです。


 ----


 別れ際に早野先輩が少し心配そうな顔をしながら話しかけて来た。


「なあ、蒼汰。美麗が帰って来てからの事は考えているのか」


「え、ええ。ひなちゃんとも、ずっとその話はしています」


「もう結論は出ているという事か?」


「いえ……」


「そうか、そうだよな。そう簡単に割り切れる訳無いよな」


「はい」


「まあ、また何か相談事があったら連絡してくれ」


「ありがとうございます」


「あ、それと……」


「はい」


「これから先、あの子を誘って遊びに行っても良いか?」


「え? 明日菜さんをですか」


「ああ。何だか守ってやりたくなってな。もちろん、いい加減な事はしないから」


「ええ、もちろんです。先輩が守って下さるのなら安心です」


 来たー! 明日菜さんの『守ってあげたくなる感じ』が、あの早野先輩ですら動かすとは……。


 その日はネカフェに泊まり、お昼過ぎに先輩達と別れて部屋に帰った。

 部屋に戻って鍵を開けたつもりが、何故か閉まってしまった。

 鍵を閉め忘れて出かけたはずは無い……。

 部屋に入ると、女性の靴が揃えて置いてあった。

 今回はいつも見ている靴だ。

 もちろん、大好きなひなちゃんの靴!

 俺は喜んで部屋に飛び込んだ……。




 俺は今、腕を組んで仁王立ちしているひなちゃんの前で正座をしている。

 目の前にリボンが付いた可愛いパンツと、フリルが綺麗なシルクのキャミソールとショートパンツが置いてある。

 昨朝まで帰るつもりが全く無かった明日菜さんが、洗濯カゴに入れたまま忘れて行ったものだ。


 神様。僕はちゃんと我慢しましたよね? ちゃんと頑張りましたよね……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=489571759&size=200
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ