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第164話 「蒼汰君の彼女」

(蒼汰)

 あの夏の日に行った町を、みぃに案内して回っているうちに、航たちとの待ち合せの時間になったので、茜ちゃんのお爺ちゃんの家へと向かった。


「蒼汰、久しぶり!」


「おお、航!」


 航はパーマをかけて少し大人びた雰囲気になっていた。

 久し振りの再会だ。お互いの肩を軽く叩き合う。


「元気になったみたいだな」


「ああ、いろいろと心配掛けて悪かった」


「結衣が連絡が無いって怒っていたぞ」


「そうだった! 連絡しないとな……」


「まあ、上がれよ。俺の家じゃないけれどね」


 航は茜ちゃんのお爺ちゃんの家を、我が家の様に親指で指さしている。


「そう言えば、俺のお連れ様を紹介したいけど良いかな?」


「お前の連れ? 大学の男友達か?」


 車からみぃを連れ出し、麦わら帽子を被ったままの状態で、航の前まで連れて行った。


「えっ! 蒼汰が女連れ?」


「紹介するね。彼女のみぃだ」


「みぃ? 彼女?」


 みぃが麦わら帽子を脱いだ。


「航くん、久しぶり」


「……え? えっ、えっ……み、美麗先輩?」


「蒼汰君の彼女の美麗でーす」


 反応が面白そうなので、みぃの肩を抱き寄せた。

 みぃは嬉しそうに、俺の肩に頭を乗せる。

 航は驚きのあまり、口をパクパクさせていた。


「航よ! 青年蒼汰の彼女へのご挨拶は?」


「せ、青年だと……美麗先輩が蒼汰と……」


 俺の青年発言で航は立ったまま気絶したようだ。


 ----


 家に上がると茜ちゃんが待っていた。

 二年振りの茜ちゃんは、すっかり綺麗なお姉さんになっていた。

 今年から大学に進学して、独り暮らしをしていたお姉さんと一緒に住んでいるそうだ。

 会うだけで一日掛かりだった航とのデートも、一時間もかからずに会えるようになったと喜んでいた。順調そうでなによりだ。

 今日は俺が来るという事で、昨日航と一緒に帰って来たらしい。

 航はすっかりここの家の人になっていた。

 茜ちゃんの家族にかなり可愛がられている様だ。

 航は大学卒業後は、婿養子待ったなしだな……。


 俺とみぃの前には、茜ちゃんのお婆ちゃんとお母さんが、次々と持って来る料理が並んでいる。相変わらずの歓待ぶりだ。

 二年前と違うのは、料理の他にお酒が並んでいる事だ。

 茜ちゃん以外は全員成人していると知って、お爺ちゃんがお酒を準備させたのだ。

 お爺ちゃん、まだお昼ですよ……。

 俺は運転があるので飲まなかったが、航は豪快に飲み始めた。

 二年前からは考えられない姿だ。


 お爺ちゃんが秘蔵の焼酎を出して来て、こんなに綺麗な人は、婆さん以外で初めて見たとか言って、みぃの前に綺麗な切子のグラスを置き、美味しいからと薦めていた。

 みぃは褒められて嬉しかったのか、薦められて結構飲んでいた。

 学内一のクールビューティとうたわれた美麗先輩は、もちろんお酒は……滅茶滅茶弱かった。

 いつもの事だが、みぃは酔うと直ぐにデレてしまい、蒼ちゃん大好きとか言いながら、俺の肩にもたれて抱きついて離れなくなる。

 今日は皆が見ている前だったので、少し恥ずかしかった。


 ----


「蒼汰ー。最初はただの悪戯かと思っていたけれど、本当に美麗先輩と付き合っているんだな」


「うん。俺はみぃ……美麗先輩のお蔭で立ち直る事が出来たんだ」


「去年の今頃は酷かったらしいな」


「酷い有様を見せたく無くて、連絡もしなくてごめんな」


「良いよ。俺がもし茜ちゃんに同じ事をされたら、お前と同じ様になっていたと思うよ」


「お前はそんな事されないよ。俺がダメな奴だったから、あんな事になったんだ」


「……本当に何であんな事になったんだろうな」


「分からないけれど、もう良いよ……。お蔭でこんなに素敵な人と一緒に過ごせる様になったからさ」


 そう言いながら、俺の膝枕で寝てしまったみぃの頭を撫でると、聞こえていたのか少し微笑んだ。

 可愛いから頬をプニプニしたけれど、やはり寝ているのか、みぃからは噛みつかれなかった。


「そう言えば、蒼汰の家は美麗先輩の家からは近いのか」


「え? 急にどうした」


「いや、いままで俺達が凄く遠かったから、少し気になって」


「ああ、近いというか、去年の八月頃から一緒に住んでるよ」


「はぁぁぁぁ?」


 航がまた気絶したようだ。

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