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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校三年の時間】 募る想いと綻びと
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第152話 「夕日が差し込む生徒会室」

(蒼汰)

 校門で明日菜さんをお見送りした後、航と顔を見合わせながら、しばらく呆然ぼうぜんとしていた。

 

「ねえ、ケーキが食べたい!」


 ひろちゃんの声で我に返り、ケーキならクラスに戻って食べようという事になった。

 ひろちゃんにケーキをご馳走しながら、何となく美咲ちゃんの手が空いたタイミングで、生徒会の仕事に戻らないといけないと伝えたら、察してくれたみたいで、自分も行かなきゃと準備を始めてくれた。

 本当は生徒会の仕事とか無い事は、美咲ちゃんも知っている。

 やったー! 二人で色々見て回れる!


 ひろちゃんが付いて来ると行って騒いだが、電車の時間とか考えたら、もうそろそろ帰る時間のはずなので、航にたしなめられて諦めてくれた。

 教室でひろちゃんとお別れして、俺はやっと美咲ちゃんを連れだすことができたのだ。

 その後、二人きりで生徒会の視察という体で展示や出し物を見て回った。

 

 流石に学内で手は繋がせてくれないだろうから我慢していたけれど、時々指が触れたりすると微笑んでくれる。

 でも、良い雰囲気になった後に、美咲ちゃんは苦笑いというか寂し気と言うか、微妙な表情をするのが気になった。

 もしかしたら、誰か他の好きな人との事とか考えているのかも……。

 そんな余計な考えてしまい、胸がチクチクする。

 

 それでも、念願のお化け屋敷に誘うと喜んでくれて、腕を組んで密着して歩いた。 

 オバケに驚かされた時に、美咲ちゃんが思わず腕にしがみ付いて来る。

 その度に、身を寄せる美咲ちゃんの香りが漂って来て堪らなかった。

 それに、腕を組んで密着すると……。

 久しぶりに美咲ちゃんのお胸を堪能できて最高だった。

 もちろん、お化け屋敷が今日二回目だという事はナイショだ!


 ----


 面白そうな展示を一緒に見て回り、少し歩き疲れたので生徒会室に行って休むことにした。

 夕日が差し込み始めた部屋で椅子を並べで座り、何となく生徒会の思い出話をしてしまった。

 一緒に生徒会役員になってから、もう一年が経つなんてとても思えなかった。

 生徒会役員の一年間は、美咲ちゃんとの思い出でいっぱいだ。

 話をしながら、美咲ちゃんが久しぶりに俺の指で手遊びをしてくれている。

 最近美咲ちゃんは沈みがちで、何となく距離を置かれている気がしていたけれど、嫌われた訳では無さそうなので安心した。


 夕日が差し込む生徒会室で、椅子を並べて二人きりという最高のシチュエーション……。

 美咲ちゃんの方を向くと、ヘーゼルブラウンの美しい瞳が見つめている。

 大好きな美咲ちゃんの笑顔。

 何を話しているのか耳に入らなくなって、美咲ちゃんの可愛らしい唇から目が離せなくなった。

 もしかしたら……。

 胸がドキドキして、無言になってしまう。

 美咲ちゃんは俺が急に返事をしなくなった事に、不思議そうに首を傾げた。

 か、可愛い! 

 我慢できなくなって、顔を寄せようとした瞬間だった。


「ひ、ひろちゃん、電車に間に合ったかなぁ? 遠いんでしょう?」


「えっ? あ、うん……。航が良く知ってるから大丈夫だと思う……」


 正直キスしたいと思ったけれど、今のが偶然じゃ無ければ避けられたのだ。

 それでも、ここで頑張ってキスしたかったけれれど、拒絶された後の事を考えてしまうと、怖くて何も出来なかった。

 相変わらずヘタレの俺だ……。

 

 ----


 しばらくして教室に戻ると、なんと未だひろちゃんが居た。


「ひろちゃん! 帰りの電車は大丈夫なの?」


「……」


 ひろちゃんは急に泣き顔になって、俺に抱きついて来た。


「蒼汰おにいちゃん助けてー」


 ひろちゃんは抱きついたまま離れなくなってしまった。

 な、なんだ。どうした?

 ひとまず控室に連れて行き、少し落ち着いてから詳しく話を聞いた。


 実は親と進学の事がきっかけで大喧嘩をしてしまい、家を飛び出して来たらしい。

 電車には飛び乗ったものの、何処にも行く当てが無くて困っていた時に、俺たちの事を思い出したそうだ。

 茜ちゃんに航の高校名を教えて貰い、辿り着いたら丁度文化祭が行われていたから、遊びに来たと嘘をついたらしい。

 どうするつもりなのか聞いたら、「どうして良いか分からないし、何も考えて無い」という頼もしい返事が返って来た。


 説得して家に帰そうと思ったけれど、この時間からでは途中までしか電車が無い。

 途中の駅まで親に車で迎えに来て貰うというのが現実的だが、それは嫌だと頑なに聞き入れてくれなかった。

 結局、文化祭が終わるまで結論は出なかった。


 航と一緒に茜ちゃんが電話で説得してくれて、取りあえず家に帰る事には同意してくれたけれど、帰るのは明日になるので、今日は茜ちゃんの家に泊まった事にして、ひろちゃんは何処かに泊まらないといけなくなった。


 しかし、ひろちゃんは俺たちの他には誰も知り合いが居ない上に、土地勘が全くない女子高生を、知らない人の家やネカフェやカプセルホテルとかに独りで泊まらせる訳にもいかず、話し合いの結果、家が広くて女性の家政婦が居るという理由で俺の家に泊まる事になった。


 おいおい、間違いが起きてもしらないぞ……。まぁ、来栖さんが居るから無理だけどさ。


 ひろちゃんが俺の家に泊まる話を聞いていた美咲ちゃんが、考え込む様な顔をしていた。

 もしかして、ひろちゃんが俺の家に泊まる事に嫉妬してくれているのだろうか。

 美咲ちゃんも一緒に泊まりに来る? うん、それ最高!

 俺の妄想がとんでもなく広がって行く……。

 でも、美咲ちゃんは、そのまま考え込んでいるだけだった。


「……ひとり分多く作らなきゃ……」


 期待していたら、俺とは全く関係のない事を呟いていた。残念。

 でも、いったい何の事だろう……。

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