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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校三年の時間】 募る想いと綻びと
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第148話 「もう十一月半ば」

(蒼汰) 

 最近、涼しくなって来たと思ったら、もう十一月半ばを過ぎていた。

 あとひと月もすると二学期が終わり、なんと俺たちは出校しなくて良くなる。

 もちろん推薦試験に合格していればの話だが……。


 でも、その前に文化祭がある。

 今年は少し頭をひねって『メンタリスト&メイド喫茶』という出し物にした。もちろん丸尾君がメインだ。

 相変わらず丸尾君と目が合うと色んな事を見透かされそうで、やはり少し苦手かも知れない。別にやましい事は無いけれどね……。


 文化祭の朝、生徒会役員は生徒会室に集合する。

 文化祭の恒例交流行事「音葉高校被服科」の生徒会役員の皆さんをお迎えする為だ。

 五月の被服科の文化祭で全員顔合わせをしているので、挨拶はそこそこにして、被服科の皆さんには自由に楽しんで貰う事にした。

 美咲ちゃんはクラスのメイドさん達の着替えを手伝うという事で、直ぐに出て行ってしまった。


 挨拶も終わり生徒会室から出ようとしたら、被服科の副会長が話しかけて来た。

 確か「日高ひだか 明日菜あすな」さんという名前だったと思う。

 なぜ覚えていたかと言うと、明日菜という名前が、俺が一番大好きな漫画に出て来るキャラクターと同じ名前だったからだ。

 俺の苗字と合わせると、かなり近くなるな……。とか思った記憶がある。


「あ、あの上条さん。良かったら、文化祭を一緒に案内して貰えませんか?」


 うつむき加減で胸の前で手を組みながら言われて、ちょっとドキドキしてしまった。

 日高さんは華奢きゃしゃで大人しいお嬢様っぽくて、何故か守ってあげたくなる様な感じの女の子なのだ。


「え、ええ。もちろんそうしたいのですが、これからちょっと仕事が有るので、その後ならご案内できると思います」


「そ、そうですか……」


 実はこの後直ぐに、去年と同じく校門前で文化祭のプログラムを配らないといけなかったのだ。

 日高さんは俯いて残念そうな顔をしていた。

 何とかしてあげたくなる……。


「上条先輩ー! お手伝いに来ました!」


 元気印の佐藤君がやって来た。

 昨年の生徒会長選挙に一年生で出馬していた彼だ。

 あれから時々生徒会室にも遊びに来ていて仲良くしている。


「お、佐藤君。今から文化祭のプログラムを校門前で配るけれど、一緒に手伝ってくれるか?」


「ええ、もちろんですよ! 蒼汰先輩の依頼なら喜んで!」


「あの……」


「はい?」


「私もお手伝いして宜しいですか?」


 日高さんの申し出を断る理由もなく、結局三人でプログラム配りをすることになった。

 一時間くらい配ったところで、伊達君と前園さんが来て交代してくれた。

 佐藤君は引き続き配ると言うので、俺は日高さんを案内する事に。


「日高さん、なにを見に行きます?」


「あの……。わたし自分の苗字があまり好きではないので、名前の方で呼んで貰えませんか?」


「は、はい。でもどうして?」


「母が再婚して苗字が変わったので、何だか好きになれなくて」


「あ、そうなんだ。じゃあ明日菜あすなさんって呼ぶようにします」


「ありがとうございます」


「じゃあ、案内しますね」


 そう言えば俺は男親だったから、親父の再婚の時に気が付かなかったけれど、そう言う悩みもあるんだな……。

 親が再婚歴があると聞いて少し親近感が沸いてきた。

 それから明日菜さんを連れて展示や出し物を案内して回った。

 ただ、明日菜さんは俺とはぐれない為なのか、俺のシャツのそでを小さくつまんで付いて来るのだ。

 恥ずかしいから持たないでとも言えず、美咲ちゃんに見つからない事をひたすら祈りながら歩いた。


 取り敢えず一休みしようと、クラスの『メンタリズム&メイド喫茶』に案内した。

 部屋に入ると美咲ちゃんがまだ教室にいて、明日菜さんが袖を抓んでいる所を見られてしまった。

 焦る俺を横目に「あ、日高さんいらっしゃい。こちらへどうぞ」と言って、微笑みながら明日菜さんの手を握って席へ案内してくれた。

 美咲ちゃんの作り笑いがちょっと怖い……。


 明日菜さんに紅茶セットを持って来たのはメイド服の結衣だった。

 おお、結衣! 今日は嫌味なしで可愛いぞ! 良いぞ結衣!

 俺の視線に気が付いたのか、結衣に手招きをされて裏の控室の方へと連れていかれた。

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