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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校三年の時間】 美咲の悩みと楽しい日々
139/186

第139話 「私もいつか一緒に……」

(美咲)


「今日は帰りの電車が無くなってしまったので、航達と三人で民家に止めて貰う事になってしまって……」


 学校をサボった蒼汰君から、家に電話がかかって来た。

 お昼に会えなかったけれど、夜には帰って来ると思っていたら、帰って来なくなってしまった。

 しかも、明日は朝から一緒に遊びに行く約束をしていたのに……。


 明日の予定とかを聞いていたら、女の子の楽しそうな声が聞こえて来た。


 ちょっと待って蒼汰君。今、女の声が聞こえたわよ。いったいどういう事?


 徹底的に問い詰めたかったけれど、来栖ひなで問い詰めるのも変なので、


「あら、蒼汰さんは、女性の方とご一緒なのですか? ほほほほ」


 といった感じで、しっかり落ち着いて事情を聞いたと思う。


「ああ、泊めて貰う民家の娘さん達です。俺らの一歳下で、何だか航が凄く仲良くなってですね……」


 蒼汰君は、何でも無い様な感じで言っているけれど、高校二年生の女の子とひとつ屋根の下に居るんでしょ?

 何それ……。何でそんな事になってるのよ!


 電話を切ると直ぐに、美咲のスマホに明日の待ち合わせ時間が遅くなるという、お詫びのメッセージが届いた。

 書いてあった事情は「来栖ひな」として電話で聞いた話と殆ど同じだったけれど「美咲」には電話を掛けて来て説明しない事が引っかかった。

 我慢しようと思ったけれど、やはり女の子達の事が気になって『直ぐに電話をして欲しい』って返信してしまった。


 蒼汰君。別に疑っている訳じゃないのよ……。


 その後、ヤキモキしながら、なかなか掛かって来ない電話を待った。

 やっと掛かって来たと思ったら、電話の向こうはとても静かになっていた。

 懸命に聞き耳を立てたけれど、先程とは違って人の声は全く聞こえない。

 静か過ぎるわ……。蒼汰君、家の外に出たわね……。

 別に疑っている訳ではないけれど「随分周りが静かね?」て、嫌味の様に何度も言ってしまったわ。

 私って嫌な女。でも、こんな気持ちにさせる蒼汰君が悪いのよ……。


 ----


 蒼汰さんのお父様も今日はかなり遅くなるらしい。

 私は仕事を終わらせて、独りで食事をした。

 その後、お風呂に入って寝る準備をする。

 二人とも居ないので、今日は顔を隠す為のパックも、ウィッグも眼鏡も付けずに、家の中を自由に歩き回れた。


 蒼汰君の部屋に美咲の姿のままで入って、蒼汰君のベッドに寝転んで本を読んだ。

 蒼汰君のHな本とかも引っ張り出して読んでいたら、『まさか今、こんな事して無いわよね……』とか思ってしまい、全然楽しく無かった……。


 十二時頃に『おやすみ』のメッセージを送った。

 こんな時間まで女の子達と遊んでいて、私からのメッセージに気が付かないなんて、嫌……。そんな試す様な気持ちも含まれていた気がする。

 送信した後に自己嫌悪に陥っていたら、蒼汰君から直ぐに返信が来た。


『美咲ちゃん おやすみ 明日早く会いたいね!』


 メッセージを読んで、何だか胸がキュンキュンしちゃった。

 嬉しくてスマートフォンを抱きしめてしまう。

 疑ってごめんね、蒼汰君……。


 ----


 翌日、蒼汰君の連絡を待っていたら、お昼過ぎには戻れるから十四時に待ち合わせということになった。

 貸倉庫でしっかりと準備をして、待ち合わせの駅に向かう。

 待合せ場所に来た蒼汰君を見て、たった一日会えなかっただけなのに、嬉しくて直ぐに腕を組んでしまった。

 決して他の女の子の香りがしないか確かめた訳じゃないわよ。

 そんな香りはしなかったし……。


 待ち合せたのは特急電車が停まる駅で、この駅前の街には行った事が無かったから、一緒に色々見て回った。

 今日は蒼汰君の腕に掴まっていたい気分だったから、ずっと腕を組んで歩いた。

 でも、今日の蒼汰君はいつもとちょっと様子が違う。

 楽しそうにしているかと思ったら、私の事をじっと見て困った様な顔をしたり、深呼吸したりしていた。

 心配になって大丈夫か聞いたら、笑顔で大丈夫と答えてくれる。

 どうかしたのかしら?


 歩き回った後、カフェに入って、昨日の話を色々聞かせて貰った。

 航君が遠距離恋愛をするかも知れないと聞いて驚いた。

 一日で恋に落ちたとか、ちょっと素敵かも……。

 クリームたっぷりのケーキを食べながら、昨日撮った写真を見せて貰った。


 夏らしくて、とても綺麗な写真が一杯。私もいつか一緒に行ってみたい。


 でも、途中から制服姿の女子高生が写り込み始めたから、しっかり見ようと思っい、蒼汰君に体を寄せながら見せて貰った。別に対抗心じゃないわよ……。


 そしたら、蒼汰君はまた辛そうな顔をしながら私を見つめていた。

 心配だから大丈夫か聞いたら、大丈夫って答える。

 本当に大丈夫なのかしら。

 やっぱり今日の蒼汰君は私を見る目が少し変。

 本当にどうしたのだろう……。


 ----


 今日は日曜日だから、蒼汰君の家でのお仕事はお休みだけれど、夕食を作りたくなってしまった。

 というより、今日は私の作ったご飯を食べて欲しかったからだ。

 お昼に聞いた話では、昨日は長時間食べ続けていたみたいだから、少しお腹に優しい料理にしようと思う。

 豚肉と夏野菜の甘酢(あん)かけに卵雑炊(ぞうすい)。デザートに柑橘かんきつ類の蜂蜜漬けを出して完成♪

 うん!いい感じ。

 蒼汰君もお父様も喜んで食べてくれた。

 やっぱり作って良かった!




 今年の夏は始まったばかり。

 お盆までは補習があるけれど、蒼汰君からは夏祭りと花火大会に一緒に行こうと誘われている。

 流石にこのイベントには結衣ちゃんが二人きりでは行かせてくれないだろうなぁ……。

 まあ、皆で楽しく過ごせるのも嬉しいから良いかな?

 良いわよね?

 でも、ちょっと良くないかも。

 ねえ、蒼汰君。

 隣の県とかで二人きりで行ける花火大会とか無いかしら……。

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