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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校三年の時間】 掛け違う気持ちと本当の想い 
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第123話 「アップバングヘアー」

(蒼汰)

 家に帰ると来栖さんは外出中だった。

 何となく辛い気持ちのままだったから、来栖さんと話をして気を紛らわせたかったけれど仕方が無い。

 ひとりで家にいると、イケメンと手を繋ぐ美咲ちゃんの後ろ姿とか、笑顔で抱き合う姿とかを思い出して、嫌な気持ちが何度も繰り返されるだけだったから、気晴らしにもう一度街に出て書店にでも行く事にした。


 書店で何か新刊でも出ていないか探してみたけれど、目新しい物は無かった。

 とにかく、嫌な気持ちを振り払いたくて、仕方なくぶらついていた。

 そんな感じで商店街を何となく眺めながら歩いていると、思いきり背中を叩かれた。


「痛っ!」


 驚いて振り向くと、結衣だった。


「蒼汰見っけ!」


「見っけって、痛てーよ!」


「大丈夫、大丈夫!」


「いや、それお前が言うか?」


 ふと見ると、結衣の後ろにお母さんが居た。


「あら、蒼汰君こんにちは。独り?」


「ええ、ちょっとブラついてました」


「そうなの。あらそうだ、良かったら一緒に何か食べない?」


「え、ええ……」


 そう言えば、まだお昼を食べていなかった。

 美咲ちゃんとの事があって、余り食べたい気持ちになれなかったからだ。

 結衣のお母さんの言葉で、やっと空腹に気が付いた位だった。


「今日は朝が遅かったから、お昼は結衣と出かけて、遅めに食べようと思っていたのよ」


「そうなの。蒼汰、一緒に食べようよ!」


「う、うん……。お邪魔じゃ無ければ」


「全然。良いよねお母さん?」


「ええ、もちろんよ。行きましょう」


 思いがけず結衣とお母さんと一緒になり、お昼ご飯をご一緒することになった。

 結衣は俺の腕に掴まって、嬉しそうに歩き始める。

 結衣。お母さんの前で、そんなにお胸を押し付けないで。ほら、お母さんが見てるって……。


 明るい結衣とお母さんと話していると、美咲ちゃんの事で苦しかった気持ちを忘れる事ができた。

 お昼を食べながら話を聞いていると、これから二人で美容院に行くらしい。

 すると、結衣が髪が伸びてボサボサの俺の頭を見て、一緒に美容院に行けと言い出したのだ。

 俺は床屋にしか行った事がないし、美容院は女性が行く場所だと思っていたので、かたくなに断っていたが、結衣のお母さんにも説得されて、男性の客も多いと言われたので試しに行って見る事にした。


 行って見ると店内はやはり女性ばかりで、俺は逃げ出そうとしたが、結衣にガッチリと腕を掴まれて逃げ出せなかった。

 男の店員さんが寄って来て、どんな感じにするのか聞かれたけれど、答えようがない。

 正直に分からない事を伝えると、男性のヘアカタログを渡された。


 一応最初のページから見たけれど、モデルが良すぎてとても自分に似合うとは思えない髪型ばかり。

 更にカタログの半分くらいのところで、嫌な顔を発見してしまった。

 美咲ちゃんと撮影をしていた、あのイケメンが載っていたのだ。

 名前を見ると「モデル:八神やがみ あい」と書いてある。

 あいつ、八神って言うんだ……。

 ちょっとイラついてカタログを見ていたら、結衣が横からのぞき込んで来て色々言い始めた。

 結局、最後はカタログを取り上げられて、俺の髪型を結衣が決めてしまった……。


 ----


 仕上がった自分を見て驚いた。

 鏡の向こうに見た事もない人が居る。

 カットしてくれたスタッフが「ツーブロックのアップバングヘアーで、キープするには……」と色々説明してくれていた。

 俺、そういうの無理だから……。


 俺の仕上がりを見て結衣が大騒ぎして写真を撮っていたが、この髪型をキープするのは無理だと伝えると、学校にドライヤーとワックスを持って来て、自分がセットすると言い出したので、結局できる範囲で頑張る事を約束させられた。


 その後、セットの終わった結衣のお母さんが、待合室で俺を見ると目を輝かせていた。何だかとても嬉しそうだ。


「ほらね結衣。お母さんが昔から言っていたでしょう。蒼汰君は良い顔をしてるわよって!」


 結衣に胸を張って、自慢げに言っていた。

 気になった訳では無いが、結衣のお母さんはやっぱりお胸が大きい。

 もしかして結衣もこのサイズまで……。

 下らない想像が頭にチラッつく。


「この髪型、私が選んだのよ! 男の子は髪型が良かったら、八割がた格好良く見えるの!」


 そう言いながら、しばらく親子で「私の方が」合戦をしていた。

 結衣が失礼な事をちょいちょい挟みながらも、いつまでも俺をめるので、もしかしたらと思い、八神の写真を見せてどっちが良いか聞いてみた。


「蒼汰、熱でもあるの?」


 もちろん、比べるまでもない事だった。分かってるって……。


 それでも、今日は何だかムシャクシャしていたから、髪型を激変させて雰囲気が変わって気分が良かった。

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