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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校三年の時間】 掛け違う気持ちと本当の想い 
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第117話 「蒼汰君の秘密」

(美咲)

 蒼汰さんのお父様に住み込みで働く事を了承頂いてから、マンションの退去と「来栖ひな」を続ける準備でとても忙しくなった。


 家具については貸別荘としてそのまま使うという事で、殆ど置いていく事になったが、問題は母の服や私の服を上条家には持って行けない事だった。

 考えた挙句、いつものバス停から停留所をひとつ戻った街中に、条件にあう貸倉庫があったので、そこを借りる事にした。

 ビルの三階と四階部分を利用した大きな貸倉庫で、ひと部屋のスペースはそれ程広くはないけれど、空調付きの小部屋になっていて、ビルの出入り口も沢山ある。

 上条家に持ち込めない物を全てここに収納した。


 持ち込んだクローゼットを開けると、制服と大好きなワンピースとかのお洒落着が入っている。

 私は毎朝ここに「来栖ひな」の姿で来て、制服に着替えて「天野美咲」になって学校へ行き。帰りにここに寄って、また「来栖ひな」に戻る。

 面倒だけれど、この方法が一番だった。


 一階と二階にショップや遊戯施設もあり、五階から上に住居もあるので、出入り口が沢山ある上に人の出入りも多くて、毎日出入りしても誰かに怪しまれる事は無い。

 貸倉庫の賃料は安くは無かったけれど、バスの定期代や光熱費が要らなくなったので、何とか賄えた。

 蒼汰くんのお父様からは、家賃は要らないし、これまでと仕事の時間は同じで良いと言われたけれど、厚意に甘え過ぎる訳にはいかないので、私は朝食も作る事にした。


 私が「天野美咲」という事を、蒼汰君にバレない様に一緒に暮らすのは本当に大変。

 ソバカスメイクをし続ける訳にはいかないので、夜お風呂に入ってメイクを落としたら、洗面所を出る前にパックをして、顔を隠して部屋に戻る。

 わざわざおかっぱウィッグとヘンテコ眼鏡を付け直さないといけないのが面倒だけれど、これ無しではバレてしまうので仕方が無い。


 朝は早く起きて、朝食を食卓に準備して、蒼汰君やお父様に会わないうちに、例のおかっぱウィッグとヘンテコな眼鏡だけを付けて貸倉庫へと向かう。

 家で蒼汰君にさえ会わなければ、朝はソバカスメイク無しで貸倉庫に向かっても大丈夫。

 あと一番大変なのは、私の下着と制服の洗濯だった。

 下着を見られるのが恥ずかしいのはもちろんだけれど、制服を洗っているのを見つかる訳にはいかないので、洗濯ネットに入れて洗い、一番に取り出して直ぐに部屋に持って行く。

 コインランドリーという手もあるけれど、やはりそこは節約しないと……。


 郵便物は「上条様方」という形で、蒼汰君の家に転送して貰う手続きをした。

「来栖ひな」宛に色々な郵便が届くと思うけれど、郵便を取るのは私の仕事なので問題ない。

 引っ越して来てから、玄関の「上条」の表札の下には、私の名前を書いたプレートが下がっている。

 蒼汰君のお父様が気を使って設置して下さったのだ。

 私は設置されたプレートを見て、この温かい家族の一員になれた気がして、とても嬉しかった。


 私は高校を辞める事も路頭に迷う事もなく、この家で生活を続ける事が出来る様になった。

 蒼汰君に「天野美咲」と気付かれない様にするのは大変だけれど、それ以外に関しては、本当に過ごし易い環境を整えて頂いた。

 トイレは一階を蒼汰君とお父様が使って、二階を私専用にしてくれた。

 私が安心してお風呂に入れる様にと、洗面所の入り口にも鍵を付けてくれた。

 本当に有難い。


 ----


 一緒に住み始めてから、蒼汰君の部屋に頻繁ひんぱんに出入り出来る様になったので、面白そうな漫画や小説を借りて読むことが楽しみになった。

 特に【恋する魔法少女マロンちゃん】のシリーズがとても面白くて、夢中になって読んでしまった。

 蒼汰君に本の感想や質問をすると、とても嬉しそうに話をしてくれる。

 『学校でもそんな風に話せば良いのに』と思う程、詳しく話をしてくれる。

 蒼汰君の知らない一面を知れて、ちょっと嬉しい。


 一度、お昼間に蒼汰君が出かけた時に、本の後ろに入り込んでいた漫画を借りて、仕事が終わった後に部屋で読んでみたら、とってもHな漫画だったから、次の日コッソリ元の場所に返しに行った。

 そういう本を間違えて借りていることが分かると申し訳ないので、次からは蒼汰君の部屋で中身を確認してから借りることにした。

 でも、蒼汰くん。女性のお胸があんなに大きかったら、きっと気持ち悪いわよ……。


 その後の調査で、他の本の後ろに有る物、不自然に他の本に挟んである物、ブックカバーが裏返してある物については、そういうジャンルの本である事が分かった。

 あと勉強机の袖机の後ろや、ちょっとしたサイズの空き箱の中には、表紙から中身が容易に想像できる雑誌が入っていた。

 私はお母さんじゃないので、これ以上の探索はしないつもりだけれど、宝探しのゲームを仕掛けられているようで、ちょっと楽しい。


 後はパソコンの暗証番号の入手ね……。

 そう思ったら、何処からともなく「……それだけは止めてさしあげて……」って聞こえた気がしたけれど、気のせいね。


 ごめんね、蒼汰君……。

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