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僕の好きな人は派手で地味目で美人でブスで  作者: 磨糠 羽丹王
【高校二年の時間】 美咲の想いと美麗の矜持
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第113話 「四人の先輩達」

(蒼汰)

 美麗先輩とお別れして、心に穴が開いた様な日が暫く続いた。

 早野先輩達が遊びにきて、バレンタインデーのチョコを渡したり、先輩達が独り暮らしをする街の事や自動車学校の話を聞いたりした。

 四人の先輩達は、全員この街を離れて独り暮らしを始めたり寮に入ったりする。

 卒業式が終わると、先輩達の新しい生活が始まり、本当に先輩達とは会えなくなってしまうのだ……。


 


 嫌だと思っていたけれど、卒業式の日はやって来てしまった。

 他の生徒は休みだが、生徒会役員は在校生代表として全員出席だ。


 式は粛々(しゅくしゅく)と進められていき、卒業生代表として夏目先輩が、在校生代表として伊達君が挨拶を行った。

 式が終わりに近づくと、卒業生の中からすすり泣きの声が聞こえて来て、初めて卒業生を受け持った先生方も目頭をハンカチで拭っていた。


 式が終わると卒業生は一旦教室に戻り、最後のホームルームになる。

 卒業生を見送る為に校門前で待機していると、クラスでのお別れが終わった卒業生が卒業証書を持って校舎から出て来ていた。


 しばらくすると、全てのクラスのホームルームが終わったのか、校門前は大勢の卒業生と先生達、そして見送りに来た後輩たちで混雑していた。

 まだ大学の合格発表や追加入試が終わっていない人もいて、早々に立ち去る人もいれば、校舎の前でいつまでも話をしている人もいる。

 校舎の裏手に行き告白をしている生徒も沢山いる様子だった。

 いたる所で写真撮影が行われて、その中でも早野はやの先輩の周りは大変な事になっていた。


 最初に俺たちの前に現れたのは望月もちづき先輩だった。

 望月先輩は大学の体育学部に進学して陸上を続ける。

 もしかしたら、そのうちTVとかで見る様になるのかも知れない。

 望月先輩は俺を力一杯抱きしめて去っていった。


 夏目なつめ先輩の進学先は国立大学の法学部で、先輩は司法試験を目指すと言っていた。

 「コミケで会おう!」といって、握手をして去っていった。


 大分遅れて早野先輩が現れた。

 早野先輩は政経学部に進むらしいが「卒業証書を貰いに行くだけ。楽しくすごすさ!」と言っていた。

 進学先が日本有数の私学だから、これから先は更にモテると思う。

 早野先輩は、上着のボタンというボタンが全て無くなっていた。

 先輩は俺に抱きつくと「蒼汰、蒼汰、蒼汰! 寂しくなるな!」そう言って、笑いながら涙ぐんでいた。

 俺も思わず貰い泣きしてしまう。

 一緒に過ごしたのは短い間だったけれど、先輩達のお蔭で俺は大きく変われた気がする。本当に良い先輩に巡り合えたと思う。


 ----


 生徒の波が収まった頃に、美麗先輩は校門に出て来た。

 見送りに来た女の子の後輩たちに囲まれ、いつものクールな感じで対応しながら写真撮影に応じたりしている。


 美麗先輩は、かなり有名な女子大の国際交流学部に進学して、在学中に長期留学をするそうだ。

 あれから半月くらいしか経ってないのに、随分久しぶりに会った気がする。

 先輩は今日も綺麗で可愛かった……。


 別れを惜しむ後輩や同級生たちが多くて、先輩の周りからは、なかなか人が減らない。

 美咲ちゃんは先輩に挨拶をするために、他の人達の見送りが終わるのを待っている様だ。

 俺が居たら先輩は来ないかも知れないけれど、美咲ちゃんと一緒に挨拶しないもの変な感じになりそうな気がして、どうして良いのか迷っていた。

 でも、先輩は俺たちを見付けると、笑顔で近づいて来てくれた。


 美咲ちゃんがお礼を言って、先輩に抱きついたままで話をしている。

 何故か美咲ちゃんが驚いた様な顔をしていたけれど、俺には話の内容までは聞こえて来なかった。


 先輩が俺の方を見て、ほんの数秒だけ目が合った。

 綺麗な先輩の瞳を見ていると、胸が締め付けられる様な気持ちになり、心が苦しくて悲しかった。

 先輩はそんな俺を見て、少しだけ寂しい顔をしたけれど、直ぐに笑顔になってくれた。


「蒼汰君。元気で!」


 クールにそう言うと、背を向けて行ってしまった。

 俺は目が合った時から、ずっと悲しい顔をしていたと思う。

 先輩の背中が遠ざかって行く。


『寂しくなるから、笑顔で見送って……』


 その時、いつもの先輩の言葉を思い出してハッとした。

 俺は最後まで先輩を悲しませてしまう所だったのだ。


「美麗先輩!」


 先輩の言葉を思い出して、俺は大きな声で先輩の名前を呼んだ。

 呼ばれて振り向いた先輩は、とても悲しそうで不安気な表情をしていた。


「先輩もお元気で!」


 俺は笑顔で手を振った。

 すると、先輩は急に笑顔になって、いつもの様に小さく手を振って行ってしまった。

 去っていく後ろ姿はりんとしていて、まさに学内一のクールビューティ桐葉美麗きりはみれい先輩だった。


 さようなら美麗先輩。ありがとうございました……。

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