第103話 「前園さん危ないよ」
(蒼汰)
大きな変化が起こったのは、昼休みからだった。
俺の席には、女の子が列をなして並んでいる。
生徒会副会長になり、学内で知名度が上がり、いつの間にか俺のファンがこんなに増えていたのだ……。
何て事はある筈もなく。
「早野先輩に渡して下さい。家に来るって聞いたので……」
「蒼汰くん、涼介に渡してくれる。家に来た時で良いから」
「早野さんに渡して下さい……」
「早野さんに……」
皆、次々にチョコレートの入った包みを俺に渡して行く。
傍からは、超モテモテに見えるが、俺宛のチョコは一個もない。
俺の机の周りはチョコの入った紙袋だらけになってしまった。
早野先輩。やっぱり凄すぎる……。
放課後、両手に抱えた紙袋を持ち生徒会室に行った。
美咲ちゃんが先に来ているかと思ったら、部屋には前園さんしか居なかった。
前園さんは、戸棚の上に置いてある物を取ろうとしているのか、パイプ椅子の上に立って箱に手をかけていた。
「前園さん危ないよ。俺が代わるよ」
「大丈夫です。これを取れば良いだけだから」
「いや、転んだら大怪我するよ」
俺は何だか嫌な予感がしたので、傍に行ってもう一度「代わろう」と伝えた。
「大丈夫です」
言った矢先にパイプ椅子の座面が傾き、前園さんが後ろ向きに頭から倒れて来た。
慌てて頭と体の下に手を差し入れて、受け止めようとする。
何とか受け止められたと思ったけれど、倒れて来る勢いが強すぎて一緒に転んでしまった。
でも、前園さんは後頭部も打たなかったし、そんなに強く体も打っていないと思う。
「大丈夫?」
直ぐに体の下の腕を抜いて、頭を支えたままで、少し起き上がった。
前園さんは驚き過ぎて声が出ないみたいで、何度か頷くだけだった。
前園さんに怪我が無いか気になり、頭から足元の方まで確認した時、俺の心臓が高鳴った。
スカートが完全に捲れ上がって、可愛いリボンが付いた純白のパンツが丸見えになっていたのだ。
おお! ラッキー!
そう思った瞬間、生徒会室のドアが開いて美咲ちゃんが入って来た。
美咲ちゃんがそのまま固まる。
ヤバい!
いまの状況を見ただけだと、俺が前園さんにキスしながら、スカートをたくし上げて、これから……という風に見える。
「み、美咲ちゃん。こ、これは、違……」
美咲ちゃんは説明を聞く間もなく、いきなり生徒会室を飛び出して走って行ってしまった。
「きゃっ!」
前園さんは、やっと自分のスカートが捲れている事に気が付いたのか、慌ててスカートの裾を元に戻した。
「美咲ちゃん待って!」
俺は慌てて起き上がり、美咲ちゃんの後を追った……。




