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君がいるだけで-5

      * * *


 昼休みの2年A組の教室の片隅で二郎は、江川と直人に問われるままに答えざるをえなかった。その横の席の理江子は、そんなやりとりを黙って聞いていた。

「それで、どうしたって?」江川

「だから、それで食事して帰ってきたんだ」ジロー

「それだけ?」直人

「まぁね」ジロー

「うまかった?」江川

「わかんないよ。食ったことのないもんばっかりだもん」ジロー

「でもいいね、そんなとこに招待されて。ね、リエちゃん」直人

「…ん」リエコ

盗み聞きしているような状態だった理江子は急に問い掛けられて慌てて答えた。

「イチローのやつは何て?」江川

「何か機嫌が悪いんだよ」ジロー

「ジローだけが、いい目見てるからな。悔しいんだろ」江川

「兄さんはそんなやつじゃないよ」ジロー


 「ところで、ジロー君、その後はどうなっているのかな」中川

ひょっこりと中川が首を差し込んで訊ねた。

「なんだ、中川いつの間に現れたんだ」江川

「ちょっと、噂を聞きつけたもんでね。逆玉だって?」中川

「違うよ。ただ、食事に誘われただけだよ」ジロー

「それで、相手のお嬢さんはどちらの御方?」中川

中川はいきなりメモを取りながらジローに質問を投げ掛けた。

「あけぼの女学院だって」ジロー

「なるほどね、あけぼの、と」中川

「由美ちゃんの行ってたとこだね」江川

「それで、お名前は?」中川

「緑理沙さん」ジロー

「緑、…リサってどんな字?」中川

「中川ぁ、そんなこと調べてどうする気だよ」江川

「ま、俺の商売は情報が命なもんで、一応控えておくかなってとこで」中川

「理科の理に、さんずいに少ない」ジロー

「理沙ね。いかにもお嬢様という感じのお名前ですね。それで、お食事の後はどうなりました?」中川

「どうって」ジロー

ジローは言い澱んで、ちらりと理江子を見た。

「少しお話でもって言われて、テラスに誘われて紅茶とケーキを出されて」ジロー

「優雅だねぇ。ハイソな感じ。それで」中川

「それでって、それでもう遅いからって送ってもらったんだ」ジロー

「それでイチローの機嫌が悪いって訳か」江川

「自分は遅くなっても構わないんだけど、人が遅いと文句言うんだ」ジロー

「それで、ジロー君。話を戻すけど、それで終わり?」中川

「それでって、…それで……」ジロー

「それで?」中川

「それで、また今度の土曜日に、お食事でもどうですって」ジロー

「なるほどなるほど。ここまでは下調べ通り」中川

「おい、中川どこで調べてきたんだ?」ジロー

「そんなの、イチローに決まってんじゃないの」中川


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