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君がいるだけで-11

 雲が切れた晴天の朝、下宿屋の前にロールスロイスが停まった。二郎が外に出ると、執事の佐藤が静かにドアを開き、それに合わせて二郎が乗り込んだ。そして静かに発進していった。

 二階の窓から身を乗り出して見ていた一郎は、舌打ちした。そんな一郎の頭を後ろから綾が叩いた。

「ナニすんだよ」

「行儀が悪いわよ」

「チェ、うるせえやつ」

「なによ?」

「それよりも、ジローのやつ、頭にくんな。あのヤロウ、結局行きやがった」

「だって約束してたんでしょ」

「でもよ、何か腹立つな」

「いいじゃない。ジロー君、ハンサムだし、優しいからもてるのよ」

「あぁー!あや、お前、もしかして」

「だって、素敵じゃない。誰から見ても」

「お前、実はジローとデキてるな」

「ホント、ジロー君と先に出会ってたらよかったかなぁ。こんな、窓から覗いてるようなみっともない人よりは」

「へえへえ、オレはみっともないですよ。だけど、ジローのヤツ」

「でも、このまま、お嬢様とつきあったら、それでもいいんじゃないの」

「なんで!」

「だって、本命をはっきりさせればいいんでしょ。ジロー君の本命が、お嬢様だったら、それでもいいんでしょ」

「ダメ!」

「どうして?」

「どうしても!」

「…悔しいんでしょ?」

「バカ言え。オレがそんなちんけなやつだと思ってるのか?」

「じゃあ、どうして?」

「どうしても!」

「何か、ヘンね…」

綾はじっと一郎を見据えた。その視線に一郎が怯んだ。

「何が…」

「どうしたの、急におとなしくなって」

「べ、別におとなしくなんかなってないよ。オレは、ジローのやつは、リエちゃんかミエちゃんか、と、お似合いだと思ってるから…」

「ホントのこと言って。怒らないから」

「もう、怒ってるんじゃないの…」

「ホントはイチロー君、リエコさんかミエコさんのどっちかが好きだったんじゃないの?」

「…そ、そぉんなことは、ないぞ」

「ほらぁ、あたしの目を見なさい」

「そ、そうだ。今日は練習もないし、どっか遊びに行こうか?」

「ホント?!やったぁ!」

小躍りする綾の傍らで一郎はぽつりと呟いた。

「…ごまかせた」

部屋に戻ろうとした綾は振り返って訊いた。

「なに?なにか、言ったぁ?」

「いえいえ」

姿勢を正して顔の前で手を振る一郎を、変だと思いながらも綾は見逃して、自分の部屋へ急いだ。


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