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君がいるだけで-10

「え?」

「ミエちゃんだったら、いいよ。あたし、ミエちゃんのほうがお似合いだと思う。……あたしなんか」

「何言ってるのよ。リエちゃん、勇気出して、大丈夫。ジローの気持ちはリエちゃんに向けられてるんだから」

「……そんな…」

「今日が最後だよ」

「え?」

「明日、ジロー君、お嬢様の家に招待されてるんだよ。そしたら、もうそのまま、ずるずる行っちゃうかもしれない。中川君が写真見せてくれたわ。きれいな可愛い娘よ。性格もいいみたいよ。ジロー君の話だと、事故のとき咄嗟に指示を出したのは、お嬢さんだって。ジロー君も、悪くは思ってないみたいよ」

「……でも…」

「今日だけだよ。もうすぐクラブ終えて帰ってくるわ。その時に、ひと言、言えば…、言わなきゃいけないのよ」

美恵子の剣幕に理江子は気押されてしまい俯いてしまった。美恵子は理江子の肩を掴んで理江子を揺すった。しかし、理江子は力なく首を振るだけだった。

「……そんな、……あたし…できない……」

「リエちゃん…」

「……あたし、も、ジロー君のこと好きよ。ずっと、一緒なら、いい、と思ってた。このままみんな一緒ならいいって。…けど、ジロー君が、もし、そのお嬢さんのこと好きなら、……邪魔できない」

「……リエちゃん……、あなたって」

「だって、そうでしょ、ジロー君が、そのお嬢さんのこと好きなら、もう誰も何も言えない……」

「どうして…?どうして、リエちゃん、そんなにいい子なの?」

「……あたし、……できない」

「……あたしが、訊いてきてあげようか?」

「ぇ?」

「誰が好きなのって」

「……んん。あたし……いいの。いまのままでいいの」

顔を背けてそう言い切る理江子に、もはや美恵子は言葉を失っていた。


   * * *


 掛け声が空に舞っている。土煙を上げて白球が駆け抜ける。それを追って倒れ込む少年。

「おい、どうした!そんなのも取れんのか!」

キャプテンの檄に答えるように少年は起き上がって叫ぶ。

「もうイッチョウ、お願いします」

金属音とともにボールが飛ぶ。少年はそれに向かって駆け込み、追いつきはしたが体勢を崩して倒れた。

「どうしたぁ!ジロー!そんなのも取れないのか!」

「もうイッチョウ!」

二郎は打球を追って地を這った。そんな姿を見て一郎は、ベンチから叫んだ。

「おい、もっとダッシュしろ!」

「何を偉そうにしてるんだ」

はっと振り返ると監督が一郎の横に立っていた。

「いやぁ、監督さんじゃないですか」

「いやぁ、じゃないだろ。お前も練習せんか」

一郎は半身をベンチから出して空を見上げ、

「今日はちょっと日和が悪いもんで、遠慮させてもらってます」と言った。

一瞬の静寂の後、

「バカモン!」と怒鳴られ、一郎はベンチを飛び出した。走りながら横目で二郎を見て、あいつ、遊び過ぎだな、と呟くと、

「さぁさぁ、イチロー様の登場だ」と叫んで外野へ向かった。


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