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チョコレート

作者: AI子

「チョコレート頂戴。」

幼馴染で友人でクラスメイトの千代田がなんかほざいてる。


「『今年こそは貰える気がする!』って言って紙袋用意していたやつのセリフとは思えんのだが?」

その後に、お前にも分けてやるからなって捨て台詞まではいた。

「貰えたんだ、確かに貰えたんだが、貰っているところを芝先に見つかった。」

芝先とは生徒指導の芝先生のことである。

「学校に不要物は持ち込むなって取られた。相手の子も興醒めしてどっか行っちゃった。」

ものすごくしょげている。

こいつにチョコ渡した相手も災難だ。まぁ、相手の子も義理チョコか友チョコぐらいの感覚だったんだろう。千代田には女子の友達が多いから。


今年は例年に比べてチョコの取り締まりが厳しくなっていた気がする。誰かの僻みが入っているとしか思えん、それこそ独身の芝先とか、

そしてそんな事情を全く知る由も無い千代田は空の紙袋を何回も振っている。振ったところで音はしない。空だから。


時間は放課後。HRも終わってクラスの中は部活に向かったり帰路に着いたりしてガヤガヤしていたが今は一段落して俺と千代田だけになっている。

冬の日は暮れるのも早い。空の上の方は水色なのに地平線に近づくにつれてオレンジ色になっている。ソーダとオレンジジュースを入れたら比重の違いで重ならない、みたいな。


「お前は貰ったの?」

貰えなかった事実を受け止めきれない千代田は恨めしそうに聞いてくる。

「朝、クラスに来たら、机の中に一個。」

と言って可愛くラッピングされた特設コーナーにありそうな物ではなく、普通にコンビニででも買えるメジャー級の有名な四角い小さいパッケージはやたら可愛いあれが入っていた。

「嘘だろ、普段女子とおしゃべりしないお前が。おしゃべりして好感度だだ上がりしている俺を差し置いて。」

あ、この表情まじでショック受けてるな。部活のマネージャーが義理チョコをみんなに配ってるって言ったほうが良かったかな。


「お前、甘いの苦手だったよな。俺が貰う!」

「いやいや、人から貰ったもんをまた別の人にやるのはどうかと思うが。」

「うわーん、ミキちゃんもアイリちゃんもくれるって言ったのに直前になって今回は本命に絞るとかって言ってくれなかったんだー。俺の純情返せよな。」

自分が本命枠に入っていなかったことがショックなんじゃなくて、もしかしてただただチョコが欲しかったようだ。そう言えばコイツものすごい甘党だったわ。


俺はてっきり、彼女を作る気満々だったのかと思っていたから少しホッとした。


「昨日開けちゃったけど、コ○ラのマーチあるぞ。いるか?」

カバンの中から箱ごと取り出してみせた。開けて食べようとしたら電車がすぐに来て食べ損ねたお菓子だった。部活帰りにって家から持ってきていたのがそのまま残っていたようだ。

もしこれもカバンから出していたら没収の対象になってしまっていたのだろう。今の今まで忘れていて良かった。


「うん、食べる。」

そのまま俺の手から受け取ったチョコを食べようとした、が、

「ここで食べると、いつ何処で芝先に見つかるかわかんないぞ。帰ってから食え。」

と慌てて静止させた。

「弁当も量少なめにしてお腹空けといたのに。」

しぶしぶ言いながらも、もう没収されたくはないらしく名残惜しそうにカバンに仕舞っている。

「じゃあ、俺部活行くから。」

「うん。」

「また明日な。」

「うん。」


カバンを持って部室に向かおうとした、その時、


「ありがとな。お前からのでも俺はめっちゃ嬉しい。」

「それは良かったよ、食いしん坊さんめ。」



本当にあげる予定だったチョコがカバンの下にある事は当分の秘密だ。

今日しか書けない。

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