第9話「 運営のおしごと“裏”」
突然、「ハングレ集団!」と、罵られ戸惑うリグラン・ルイードたち一行。
おしごと その6
“嘘か本当かは置いといて、冒険者さんたちにとっておきの情報を与えます”
回想 冒険者ギルド
アミリア・レムルは、冒険者たちにハングレ集団とは何者か説明をする。
「村人の人たちにとってとてもいい領主様が村々がある地域を治めてくださっていたのですが、つい先日、殺されてしまいました」
「アミリアさん、それがハングレ集団だったのですね」
「そうなんです。かつては名を知らぬ者はいない勇者様だったのですが、あるときモンスターにやられてから、領主様や村を襲うようになってしまったとか。
しかも、お金や食料まで巻き上げる始末だそうです」
「なんてやつらなんだ」
「はじめは、LV3までの冒険者さんたちに村の用心棒をお願いしていたのですが、みなさんやられてしまって⋯⋯」
「オヨヨ⋯⋯」と、嘘くさい奇妙な声で泣きはじめるアミリア。
「知ってるぜ。俺もダチが殺された」
「だからもう。LV4以上の冒険者さんたちに頼るしかなくて⋯⋯オヨヨ」
と、そんな情報が拡散している頃、リグランは用心棒をしていたLV3冒険者たちを問答無用で虐殺。
もちろん本人たちは悪いならず者を倒していると思い込んでいます。
そして、領主として村々を治めるにあたり、守護料という税金を取ることにしました。
もちろん食料も可。
リグラン本人は治世のつもりでしょうが、村人たちにとっては突然やってきて税金まで取る極悪人です。
しかも高い。
シュンくんも税金に対する感情は日本も異世界も変わらないなと、このときばかりは感じていました。
長く住んでいる村の村長の話だと、フラム・ルイード伯爵は相当嫌われていたそうです。
心を痛めたニコラというそれは美しくて勇敢な女性がルイード家に嫁ぎ、伯爵の暗殺に成功しました。
務めを果たしたニコラは、幼馴染で恋仲だったハルム・ウィルトン公爵と結ばれたそうです。
そんなロマンチックなおとぎ話が広まっているこの地域にルイードを名乗る人物がやってきたらそれは
許せませんし、恐怖でしかありません。
村を訪れたシュンくんたちは、村長からそんな話を聞き、ルイードを名乗るハングレ集団を誘い込むための偽の村を作ることにしました。
シュンくんの発案で、木の柱を組んで周囲を囲い、内部も迷路状にして攻めてきた一行を袋小路に誘い込む算段です。
こうして極悪人として冒険者たちに囲まれることになったリグランたち一行。
「貴様ら何のマネだ! 俺はリグラン・ルイードだぞ」
もうシュンくんたちの視点で見ればリグランのセリフは、すべて悪役のそれにしか聞こえません。
「サラマンダーの刃!」と、リグランが叫ぶとハデスカリバーンの刀身は炎を纏い。肩まで覆ったアーマーが紅に染まる。
シュンくんにはもう、リグランの姿がゲームに出てくる魔王軍幹部クラスの敵に見えています。
対してリグランは、自分の武器が最強だと信じて疑わない。
「うぉおおお!」と、躊躇なく斬り込んでいく。
だが、それは過去の話、どんだけ課金させられたんでしょうか、冒険者たちの持つ武器は、リグランのハデスカリバーン以上の代物。
屈強な冒険者が振り下ろした斧によってハデスカリバーンは真っ二つに折れてしまう。
「俺のハデスカリバーンが! ありえない嘘だろ⋯⋯」
シュンは、剣を天高く掲げて「雷鳴剣!」と、叫ぶと天から雷がリグランたちの頭上に落ちる。
旧ウィルトン領内の市街を歩いているテイル・ディオニールとクガミ・リクト。
テイルが立ち止まると晒し首が置かれていた。
「元勇者とあるな」
「勇者がなぜ罪人にまで身を落としてしまったのか」
「さあな、先を急ぐぞ」
2人が立ち去ると女性がやってきて、晒し首の前に立つと、アミリアがやってくる。
おしごと その7
“依頼者から報酬をきっちりいただきます”
女性は金貨が入った布袋を手渡す。
晒し首の傍にはリグラン・ルイードと書かれた札がある。
おしごと その8
“裏切り者は絶対に許しません”
不敵な笑みを浮かべて晒し首を見つめるサラ・リーリア。
つづく