第6話「運営のおしごと」
“ここは冒険者ギルド”
鼻歌交じりにアミリア・レムルは受付の窓口に座っている。
“今日は私たち運営のおしごとを教えちゃいます”と、思いつつ
やってきた冒険者の応対をする。
おしごと その1
“私たち運営は各街にこの冒険者ギルドを設置して、体内に宿るルミナイトエネルギーを使ってモンスターと戦える人たち、通称冒険者さんたちと認定して、
仕事を斡旋しています”
クエスト中
そのころ、サラ・リーリアから与えられた武器を手に勇者リグラン・ルイード率いるパーティー一行は、各地の村に蔓延る武装したならず者たちを討伐して周っている。
“姐さんがくれたこの剣があれば俺は最強だ。どんなモンスターやどんな相手だろうとこの剣で一撃だ”
俺が剣を振り下ろすと目の前のナタを手にしたスキンヘッドの男が血しぶきをあげて倒れる。
“俺の実力を認めてくれた領主様は、俺を騎士長にまで取り立ててくれた。安定した収入も入るし、街を闊歩すればモテはやされる。この剣を手にした俺はまさにこの世界最強だ”
おしごと その2
“冒険者さんたちのモンスター討伐数やクエスト経験数によってLVを与えています。もちろんそれに応じて報酬も上がってきます。
そしてLV4以上の冒険者さんには、私たち職員が直々に声を掛けて特別なクエストの依頼を掛けます”
アミリアは、LV4以上の冒険者たちが集まるテーブルに近づいて声をかける。
「LV4の冒険者さんたちにお願いがあります。最近、近くの村々をハングレさんたちが占拠して困っているんです。村人さんたちをモンスターから守るためだとか言っちゃって、守護料と称して、食料やお金を巻き上げているそうなんです」
そうアミリアは、瞳を潤ませながら冒険者たちに依頼内容を説明する。
極めつけは、頭を下げた際にあらわになる強調された胸の谷間。
冒険者たちが鼻を伸ばしたらもう交渉成立だ。
「よっしゃ、やったるよ」
「俺たちに任せてくれ」
冒険者たちは威勢良くアミリアの依頼を引き受ける。
“どうして運営がこんなことしているのかって? それはまだ秘密です。だけど、この異世界にやってきた私たちはこの世界に日本のRPGゲームのような仕組みを広めている真っ最中なんです。
これならいつ他の日本人がこの世界に転生されてきてしまっても安心して暮らせますよね。おやおや、あそこにいるのはもしかして?“
あたりをキョロキョロしながら、ギルド内をウロウロしている黒髪の少年がアミリアの目に止まる。
「ギルドのようだけど、なんだかここ、本当にゲームに出てくるような世界だな⋯⋯」
”そして私たち職員に課せられた任務はこの世界で最強を見つけること。その最強さんをサポートして育てることです。でも困っていることがあるのです。ザリック君たちのように他の職員には、
それぞれ自分の所属冒険者がいるのですが、私にはまだいません。私も急がなくちゃです“
おしごと その3
”特別な依頼をした冒険者さんたちにはお金を提供します。
そのお金をクエストの攻略に役立てて使うのです“
冒険者たちは、さっそく、ハングレたちが支配する村を訪れる。
炊き出しで食事を配り、病にふせっている村人には薬を与えている。
“あと必要なアドバイスを忘れません。まずは村人たちの支持を得ることが大切です。
今の村人たちはルミナイトエネルギーを行使する人たちを強く警戒していますから。
ただし、お金をそのままあげるのはNGです。人間は必要以上の施しをすると堕落しちゃいますからね”
さきほど、ギルド内をウロウロしていた少年は背中に剣を背負って、冒険者たちに指示をしている。
“彼はシュンくん、さっき認定したばかりの駆け出しの冒険者ですが、さっそく今回のパーティーのリーダー的存在です。彼はどう見ても日本から転生して来ちゃった高校生です。通常なら強制送還しちゃうところなんですが、おもしろそうなのでしばらく観察することにしました。
はてさてこれからどんな冒険が始まるのか楽しみですね”
つづく