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第3話 龍族が強引に全部決めた

それは突然の出来事だった。


山から大きな咆哮が鳴り響く。


その場にいた全員が山の方角を向いた。


なんか飛んでくるけど……あのシルエットって……。


「ド……ドラゴンだぁあああああ!」


誰かが叫んだその声ですぐに場は騒然となる。


マニャ王もマンス王も顔を青ざめていた。


1匹のドラゴンがあっという間にやってきて俺たちの前に降りてきた。


そしてその後を追うように大量のドラゴンのシルエットが見えてくる。


それに気づいたのかもう誰も騒いではいない。


「聞け!矮小なるものたちよ!無用な抵抗をしなければ危害は加えぬ!大人しくせよ!」


初めに降り立ったドラゴンが叫ぶ。


というか喋れるんだ。


その喋ったドラゴンが俺と女性を交互に見つめる。


まずい。


目的は間違いなく召喚された俺たちな気がする。


「我が名は龍領を束ねる龍王オルフェ。おぬしらが召喚された異世界のものだな。古の盟約によりおぬしたちを保護する」


え?保護?


古の盟約っていったい誰と約束したのだろう。


「お、お待ちくださいオルフェ様!この者たちは我らが……」


「黙れ」


こ、怖!


牙をむき出しにしてマンス王を威嚇するオルフェ王。


マニャ王はそれを見て超震えてる。


あかん。


これは非常にまずい状況だ。


「この者たちは我らが連れてゆく。異論は認めん。それともこの場にいるものすべてを皆殺しにしようか?」


とんでもないこと言ってるな。


間違いなくこのままだと俺と女性はこの超おっかない龍王に連れていかれる。


とか考えてるうちに大量のドラゴンたちが降り立ってきた。


「オルフェ様。準備はできております」


なんの準備だよ。


せっかく身の安全を確保できそうっだったのにこのままだと危険だ。


いや、保護すると言っているのだから危険ではないのかもしれないが、周りは危険だろう。


正直出会って1時間も立ってない連中だけどいきなり死なれても寝ざめが悪い。


「あの、龍王様?よろしいでしょうか」


この状況を打開する方法は2つ。


1つはマニャ王やマンス王が何とかオルフェ王と話を付ける。


これは早々に二人がブルってるから無理。


もう1つは原因となっている俺か女性がオルフェ王と話を付ける。


女性は……ブルってお弁当落とした所だから無理。


となれば俺が話を付けるしかない。


「なんだ」


「保護していただけるのはありがたいのですが、私と彼女はまだ王様や魔王と敵対しておりません。それどころかこのお二方に私たちの知識と引き換えに保護してもらうよう話を進めていたところだったのですが……」


「ならぬ」


「え?」


「そなたたちの知識はこの世界の常識を逸脱しておる。それを安易に教えては世界に混乱が訪れよう。生命の書(リブロ・ヴィーテ)……はまだもっておらぬようじゃな。まずはそこから教える必要があるか」


オルフェ王は生命の書(リブロ・ヴィーテ)というものについて教えてくれた。


産まれながらに誰もがその手に持つことを神に許された書であり才能(タレンタム)と呼ばれる自身の持っている力が記されているらしい。


マンス王が召喚の際に出した本がまさに生命の書(リブロ・ヴィーテ)でマニャ王が持つ杖は生命の書(リブロ・ヴィーテ)が生み出した特殊な杖だとオルフェ王は教えてくれた。


そして俺らにもその生命の書(リブロ・ヴィーテ)を作ることができ、この世界にない才能(タレンタム)を多数所持している可能性があるらしい。


過去に異世界から召喚された一人の男性がおり、特殊な才能(タレンタム)を用いて世界の争いを鎮めその後オルフェ王が統治する龍領で生涯を終えたという。


その男性曰く、希少な才能(タレンタム)のせいで人族や魔族に利用されたこともあるのでもし同じように異世界からくるものがいれば保護してほしいとオルフェ王に頼んだそうだ。


そしてもう一つ。


もしその者が才能(タレンタム)を悪用して世界に害をなすなら滅ぼしてほしいとも。


先に言っておく。


害をなす気は全くないからね。


だから牙をむき出しにして睨まないで。


「話は分かりました。ですが龍領に行って私たちはどうすれば?」


「どうもせん。あの男が住んでいた家があるからそこに二人で住めばいいじゃろう」


うん。


知り合って1時間程度で便所飯してた女性と同棲決定か。


嫌ダメだろ。


「あの、私たちはつがいとかではないのでできれば別々に住みたいのですが」


「そうなのか。しかし家は一つしかない。その家もあの男が作ったものだから我らでは家は作れんから自分で作ることになるぞ」


自分で家を作るのか。


まあ楽しそうだしいいか。


「問題ありません。建築の道具とかはありますか?」


「それなら家の中に何かしらあるじゃろう。その前にもうすぐスニアの季節だから家など建てておる時間はないと思うぞ」


え?


スニアの季節って何でしょう。


「雪が降る季節じゃ。この世界は全部で9つの季節に分かれる。花の咲くアニア、緑なすグニス、嵐ぶくタノス、雨やまぬレニア、日照り続くサニア、実りあるオニア、草枯れるフノア、凍り付くスニア、雪解けるアノスの9つだ」


なるほど。


似たような名称で全部覚えきれなかったけどとりあえず冬が来るってことは分かった。


そりゃ家建ててる場合じゃないな。


「では家を建てるまでは人領で生活をしたいのですがよろしいでしょうか?この世界のことも知る機会になりますし、同族と一緒ならあちらの女性もとりあえず安心できますと思うので。もちろん異世界の知識は教えません」


本音は龍領なんて怖いところに行きたくないだけだけど、家が無いのを理由にとりあえず人領で生活をしたい。


異世界の知識を教えないのにマニャ王が保護してくれるかは怪しいが、あれだけ怯えてたならオルフェ王に歯向かうようなことはしないだろう。


「よかろう、と言いたいが人の王が貴様らを悪用しないとは限らん。口ではどうとでも言えるからの。魔族の王とて同じだ。かといって龍領にすぐ家を建てるのは厳しかろう。そこで提案だが、ここに家を建てたらどうじゃ」


「はい?こ、ここにですか?」


「そうだ。幸いここは人領と魔領、そして龍領の境目でもある。言ってしまえばだれの土地でもない。よってここを貴様らの領とし統治すればよいじゃろう。安心しろ。おぬしらに害をなすなら我らが直ちにやってきてすべてを滅する」


滅するって、頼もしい限りだけどマニャ王とマンス王は……めっちゃ頷いてるな。


龍領でびくびく生活するよりもまあましではあるが、ここって街から3日以上もかかる場所じゃなかったっけ。


住むにしても家もないし……


「おい、人の王と魔の王よ。おぬしらはこの者たちのために家を直ちに建てろ。拒否は許さぬ。それだけ数がいるのだからすぐに建てられるじゃろう。さっさと立てねば焼き殺すぞ」


あ、家はすぐ建てられそうだわ。


マニャ王とマンス王が涙目になりながら慌てて指示出してる。


なんかすまん。


後は水とか食料とかか。


それに魔物が出たらどうやって身を守ればいいんだろう……。


「おぬしらの食事は当面わしらから提供しよう。自給自足ができるまでは面倒を見てやるから安心せい。魔物に襲われぬよう護衛もつけよう。デノラスはこの者を、ギディアはあっちの者を守れ。この者たちを護衛しろ」


ははっといって緑色の龍と桜色の龍が前にでる。


俺に近寄ってきた緑色の竜がデノラスで桜色がギディアというらしい。


俺の考えてることが先読みされるように解決してるな。


住む場所、食事、安全が確保された今ほかの懸念事項があるとしたらなんだろう。


そうだ、戦争だ。


人族と魔族で戦争しようとしてたんだよな。


家作らされてるけど戦争の件はいいのかな?


「王様、魔王様。よろしいでしょうか?」


一瞬びくっとなった二人がこっちを見る。


ビビりすぎだろうに。


とりあえず戦争はこのまま続けるのか確認する。


しかし答えたのはオルフェ王だった。


「ここでの争いは我ら龍族への宣戦布告とみなす」


戦争は終了した。


そもそもなんで争ってたのか聞いてみる。


「食料飢饉が原因で、領境に住む互いの民が食料を奪いに相手の領地に侵入しあったのだ」


「勝手とは言え立派な侵略行為じゃからな。こうして軍を動かさざる得なくなったのじゃ」


人領も魔領もそれまでは友好的な関係で、今回は互いにしぶしぶ戦争することになったと。


とは言え戦争は極力避けたかったから王同士で力比べをし、すごかったほうが今回は勝ちということにしたかったらしい。


しかし出てきたのが俺らだったのでどうやって戦争を収めようかと思ってたら龍王が突如現れ今に至ると。


まあ戦争は避けられたからよかったらしい。


てか、単なる力比べに俺は呼ばれたのか……。


いや世界の危機とかに呼ばれてもそりゃ困るけど、力比べで呼ばれたとかあんまりかっこよくないなぁ。


……トイレ中に呼ばれてる時点でかっこよくないな、うん。


ひとまず状況のおさらいだ。


トイレ中に異世界に呼ばれ人と魔族の戦争に巻き込まれそうになったが龍族の出現で停戦。


この領境に土地をもらって当面は龍族が面倒を見てくれることになったと。


異世界に来ていきなり龍族の庇護とか結構すごくねぇ?


俺より前に異世界から来てた人の盟約のおかげか。


感謝してもしきれない。


できれば生きてるうちに会ってみたかったが亡くなってるなら仕方ない。


何はともあれ異世界生活が無事スタートすることになった。

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