第10話 未来からの来訪者
景色が変わり王宮という言葉にふさわしい広間に俺たちは移動した。
「マニャ様!」
兵士たちがマニャの姿を見て駆け寄ってくる。
「うむ、戻ったぞ。状況はどうなっておる」
「はっ!アルゲルテ、レベナン、パラティアの3国が反乱兵の手に落ちました」
「なんと……ほかの国はどうじゃ」
「今のところは耐えているようですがブロメンテとガラスティアが劣勢で援軍要請が来ています」
「うぬ、ここにはもう兵がない。無事なものは直ちに国を捨てここまで撤退するように伝えよ」
「はっ!」
マニャの顔に焦りが見える。
「あなた……」
「わかってるカレン。助けたいんだろうけど神の言葉を使うのは避けたい」
「でも、このままじゃもっとたくさんの人が死ぬのよ?」
確かにそうだ。
いっそ菌領のことは置いておいて今だけ神の言葉ですべてを解決することもできる。
しかし……。
「やっぱりだ「本当は違うでしょ」」
カレンがまっすぐ俺を見る。
本当は違う……。
俺の本当の気持ち。
「…………助けたい」
本当の気持ちだ。
でもそれに抵抗があった。
菌領のことを言い訳にしてた。
カレンに神の言葉を使わせたことで飢饉を巻き起こし、たくさんの人を苦しめてしまったこと。
それが俺自身をこの世界に呼び寄せていたこと。
それが俺の気持ちに鎖を巻き付けていた。
責任を迫られるのが怖かったんだ。
もし生き返らせることで何か問題があったらと。
リョウトやカンライを生き返らせたのもそうだ。
初めは興味で生き返らせていた。
でも人領で反乱を起こそうとしている人物がカンライだと知ったとき、俺の心は動揺していた。
実際にはカンライは操られていただけだったが、それでも俺が生き返らせたことで問題が発生したのは確かだ。
だからザドムの街の人を助けることに躊躇した。
助けてまた問題が起きるのが怖かった。
それが自分のせいになることも。
ただのビビりだな俺。
恐れてただけじゃん。
「カレン。助けるぞ」
「…!はい!」
「今から言う言葉を間違えないように神の言葉で言ってくれ」
「わかった」
「ダメ」
急に俺の横から声がした。
「え、カレン?」
俺の左にはカレンがいた。
右を見てもカレンがいた。
カレンが二人?
「あなた、それをしちゃだめだしできない」
「私が……」
左にいたカレンが突如神の言葉を発し、右のカレンが眠るように倒れた。
「あなた。話がある」
そう言った瞬間周りの風景が変わった。
ここは……俺の家?
いつも寝ているベッドの横に立ってる。
何が起きてる?
このカレンはどう見てもカレンだ。
いや、何かの才能で変身しているのか?
「君は誰だ」
「私は明後日から来たカレン」
「明後日?」
「あなたに言わないといけないことがあるの」
「どういうことだ?」
「明日あなたは死ぬ」
はい?
え、俺明日死ぬの?
なんで?
「だから私は4日前から準備してあなたを生き返らせようとしてる」
「4日前?生き返らせようとしてる?」
4日前?
ランやカンライが操られ始めたと思われる時期だ。
え、まさか。
「カレンがこの反乱を?」
「……そう」
「なんで?なんでだ?」
「必要だから」
「必要?なにがだ?みんなを殺すことがか?」
「そう……」
「意味が分からない!ちゃんと説明してくれカレン!」
「明日、貴方は神に殺されるの」
「は?」
「神に殺された後、今、人領で寝てる私は神領に行く。神に殺されたあなたは私でも生き返らせられなかったから」
「生き返らせられないって……神の言葉でも?」
「ええ。神の言葉は本当の神には効かないから」
「本当の神……」
「神領で私は神と交渉するの。そして選ぶ」
「何を……」
「人領と魔領と霊領の破壊」
「なんでその三領を破壊する必要があるんだ?」
「私もわからない。でもあなたを生き返らせる条件に神が望んだから。今寝ている私はこの後あなたに言われるの。俺に何かあったら神領に行けって。だからあなたは必ずそれを伝える」
「伝えないとどうなる」
「あなたは絶対に伝えるってわかってるでしょ」
愚問だ。
ユウジも言っていた。
過去に行っても未来は変わらない。
全ては必然として起こる。
未来から来たカレンが言うなら俺は必ず言うのだろう。
「あなたが死ぬことは伝えないで。私はその時知らなかったから」
「わかった」
「ありがとうあなた。それからお願いがあるの」
「お願い?」
「これから私がすることを知っても……私のこと……嫌いにならないで……」
涙を流しながら、微笑むカレン。
何が……。
明日以降俺とカレンに何が起こるんだ?
「カレン。約束する。何があっても俺はお前を嫌いにならない!」
「ありがとう。最後に……キスしてもらえますか」
「最後って……」
「お願い」
俺は、涙を流すカレンに口づけする。
「愛してる……セイジ。さようなら」
「え?」
カレンが神の言葉を発すると目の前から消えた。
何がどうなってるのか。
全く意味が分からない。
確かなのは俺が明日神に殺される。
そしてカレンが神領に行き俺を生き返らせるため、三領を破壊しに過去にもどる。
なぜそもそも俺は神に殺されるんだ?
三領を破壊させることの意味は?
……だめだ。
考えてもわからない。
未来から来たカレンはどこへ行ったんだろう……。
それもわからない。
カレン……。
さよならってどういうことだよ……。
「カレン……」
俺は再び今のカレンがいる人領に時空魔法で移動した。
すでに目を覚ましていたカレンが俺を見て駆け寄ってくる。
「あなた!大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ」
「さっきのって、私?」
「……ああ」
「何がどうなってるの?」
「……カレン、よく聞いて」
俺はカレンの両肩にそっと手を置く。
「俺に何かあったら神領へ行け」
「え、あなた?どういうことなの?」
「今はそれしか言えない」
今カレンに言えるのはそれだけだ。
まさかカレンが今回の原因だとは言えない。
いや、原因はそもそも俺になるのか。
こんなことが起きたのは全部明日俺が神に殺されることに起因する。
なんで殺されなくちゃならないんだ……。
わからないことを考えても仕方がないが考えてしまう。
周りではマニャや兵士たちがてんやわんやしている。
この状況も未来のカレンが起こしている。
カレンが相手では正直俺らでどうこうすることはできない。
「カレン。神の言葉は使うな」
「え、でも……」
「いいから使うな」
「……わかった」
未来のカレンがつくった状況だ。
今のカレンがそれを食い止めようとすることに意味はないと思うし、未来のカレンがダメだと言っていた。
ならば指示に従うよりほかはない。
仮に使おうとしても使わない状況になるのかもしれないし、使うなと言っても使うときは使うだろう。
そう考えると使うなと言うことに意味はないかもしれない。
「あなた、これからどうする気なの?」
「わからない。取り合えず霊領のダラナに話を聞こう」
俺は忙しそうなマニャに声をかける。
「こんな時にすまないマニャ。ダラナはどこに?」
「おお、そうじゃった。おい、霊領のものがいる部屋にセージたちを案内せよ」
いつぞやガドランの街でお世話になった老兵士が俺とカレンを一室に案内する。
そこには泣いているダラナがいた。




