第8話 続く襲撃と混乱
家に帰るとイシリアが心配そうな顔で見てきた。
泣いたせいか目が赤かったようだ。
それに右半分が血まみれだしね。
「大丈夫ですかセージ様?カレン様も」
ありがとうイシリア。
心配かけてごめん。
「大丈夫。それよりティテナ達はテントにいる?」
「はい、いらっしゃいますよ。先ほどリュシカ様とクスリ様もお戻りになられました」
「ありがとう」
俺とカレン、カンライとランは召喚者用テントに入る。
「おかえりみんな!って……何かあったの?」
「ああ、気にしないでティテナ。それよりクリスティーナのほうは?」
「見ての通りおとなしくしてる」
「そうか。悪い、少し二人きりにしてくれないか。聞きたいことがあるんだ」
「あなた……」
「心配しないでカレン。それより向こうで何があったかみんなに話しておいて」
「……」
カレンたちが何も言わずに、クリスティーナと俺を残してテントを出ていく。
「はぁ……何から話すべきかな。まず、クリスティーナ。君には9人の仲間はいたか?」
「……あいつらに会ったの?」
「ああ。なぜ先に話してくれなかった」
「聞かれなかったから」
確かに、いろいろ聞いたが仲間がいるかを聞いてなかったな。
召喚したものを知らないと言っていたから仲間はいないと勘違いしていた。
仲間はいたがその中の誰が召喚したかは知らないという意味の可能性もあったんだ。
「そうか……じゃあ次の質問だ。その仲間が『われらが王』と言っていた。心当たりは?」
「……私たちのリーダーよ」
「リーダー?」
「下っ端たちからは大総帥って呼ばれてる」
「何者でどんな奴なんだ?」
「それは知らない。私もあいつらから聞いただけで会ったことはない」
「……じゃあそいつの情報はこれ以上わからないわけだな」
「あいつらに会ったんでしょ?私と同じように聞き出せばいいじゃない」
聞き出せるならそうしたい。
だが……。
「みんな死んだよ」
「え……」
クリスティーナの顔が青ざめる。
「俺が……殺した」
それだけ言い残してテントを出る。
外では事情を聴いたのか神妙な顔の召喚者組と一緒に聞いていたのかマリアス達魔領組がいた。
「セージ様。お話は伺いました。私が対処をお願いしたばかりに辛い思いをさせてしまい申し訳ありません」
スカルファスが深々と頭を下げる。
いや、お前は何も悪くない。
悪いのは俺だ。
「頭を上げて。カッとなった俺が悪いんだ」
みんなもそんな顔しないでくれ。
辛くなるから。
「それよりもまだ問題が残ってる。クリスティーナとその仲間だった9人の人間にはリーダーがいた。そいつがまだどこかにいる」
「私たちも街を襲ってた者たちから話を聞きました。大総帥呼ばれてると」
「ああ。そいつがどこのだれかはわからないが今回の元凶だ」
「セージ。レベッカが彼らの組織の名前はヴェスペルムって言ってた。それから規模は1000人を超えるって」
「あと、クリスティーナ以外に総帥が9人いると言ってましたが、おそらくそれはザドムの街の9人だったのではと」
「……聞いてると思うけどその9人はもういない。クリスティーナもリーダーに会ったことはないと言ってた。だからこれ以上の情報は現状望めないと思ってくれ」
自業自得だが、情報を持ってる人間がいない以上手詰まりだ。
「その件で話がある」
ふいに背後で声がして振り返る。
「マニャ!?どうしてここに?」
「すまぬなセージよ。急ぎの用があり時空魔法で単身こちらに来たのじゃ」
「急ぎの用?」
「うぬ。大総帥と名乗るものが人領の各地で反乱を起こしておる。すでに46国中28国がそ奴の手中に堕ちた……」
全員が動揺する。
しかしガドランの街は人領の端も端だ。
そんな端だけで反乱を起こすわけがないし、反乱を起こすなら同時に起こしたほうが成功率は高い。
当たり前のことだ。
今日起きた反乱は起こるべくして起こっている。
すべてクリスティーナたちのリーダーの仕業だ。
「さらに悪い知らせがある」
マニャが領のこぶしを握り締め、うつむく。
「霊領の女王が死んだ」
……え?
あの小さな女の子が?
なぜ、誰に?
決まってる。
そんなことをするのは一人だけだ。
「マニャ、なぜ女王が死んだと?」
「側近のダラナを覚えておるか?先ほどそやつが我が城に逃げてきた。そして突如現れた男に女王を殺されたと……」
まただ。
また、なんの前触れもなく命が奪われた。
ザドムの街の住人を思い出す。
氷漬けにされたあの姿を。
そして怒りが再び俺の心を支配し始める。
「あなた!」
カレンが俺の異変に気付いて抱き着いてきた。
「な、なんじゃ!?」
「セージ!?」
俺の体はすでに変化を始めかけていた。
皮膚の色が黒く染まっていく。
カレンがすぐ神の言葉を発し、俺の心から怒りが消える。
「落ち着いて。大丈夫。大丈夫だから」
「……ああ……大丈夫。ありがとうカレン」
カレンが必死に俺の背中をさする。
マニャは事情を知らないがほかのメンバーは話を聞いていたため、身構えていた。
「驚かせてすまないマニャ……今のは……あとで話す。先に確認しないといけないことがある」
そうだ。
落ち着け。
人領だけじゃなく霊領も襲撃されたなら、ほかの領にも同様のことが起きてる可能性がある。
「スカルファス。今すぐマンスのところに行くんだ。魔領も襲われてるかもしれない。だれか魔領に時空魔法で移動できる人はいる?」
「私ならできます!すぐにお父様のところへ」
マリアスが俺の言葉を聞いて蒼白になり、慌ててスカルファスと時空魔法でいなくなった。
「イシリアさん。今すぐ魔領側を守ってる龍のギノーに人領と霊領が襲われたことを話し、龍領が無事か確認するよう言ってくれ」
「は、はい!」
「レイシェン!イシリアさんの護衛を頼む」
「わかりました!」
二人はすぐさま草原に向かって走った。
あとはなんだ。
どんな可能性が残ってる?
巨領や獣領も襲撃に会っているかもしれないが海の向こうだし行く術もない。
全世界同時に……というのは考えずらいか。
あるとしたらこの大陸内だ。
確認すべき場所は今の指示でじきに情報がわかる。
「マニャ。魔領と龍領の確認が取れたら俺をダラナのところに連れて行ってくれ」
「うぬ……それは良いが、セージよ。お前は大丈夫なのか?」
「さっきのは気にしないで。今はまずこの危機を解決するのが優先だ」
「あなた……」
カレンが心配そうに見てくる。
大丈夫。
もう落ち着いたから。
「セージ様!お、お父様が……お父様がぁああ!」
突如マリアスが俺らの前に現れる。
その腕の中には、血まみれのマンスが抱きかかえられていた。
「マンス!」
俺は慌てて駆け寄る。
生きてるのか!?
まさか、死んでないよな!?
脈を調べる。
かすかに脈打っている。
「まだ生きてる!」
俺は自分の命も気にせずに命魔法を使った。
「マンス!死ぬなマンス!」
「……う……ぐ……セー……ジか?」
「マンス!」
目を開けるマンスに俺は涙が出そうになる。
「お父様ぁああ!よかった!あああ!」
マリアスがマンスを抱きしめる。
「マリアス?ここは……っ!?あ、ああああ!」
マンスが両手で顔を覆う。
「マンス?どうしたんだ!?何があった?」
「我の……我の子たちが……あああああぁぁぁ」
マンスの手の隙間から涙がこぼれだす。
まさか……殺されたのか?
「マリアス。スカルファスは?スカルファスはどうした?」
「私を逃がすために……まだ城に……」
「!!!」
助けなきゃ。
これ以上誰かが死ぬのは嫌だ。
「マリアス……今すぐ俺を魔領に連れて行ってくれ!」
「私も行く!」
俺の言葉の後にカレンがすかさず叫ぶ。
俺は黙ってうなずいた。
「スカルファスたちを助けに行く。ティテナ達は龍領の情報を待ってくれ。もし助けが必要だったら、お願いだ。助けてあげてくれ」
ティテナ達もまた俺の言葉に黙ってうなずいた。
「マリアス、頼む!」
マンスを地面におろしたマリアスが俺とカレンの手を握る。
そして景色は一変し、魔領へと移動。
そこは城の広間だった。
初めて感想をいただけた…orz
本当にありがとうございます!




