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第2話 便所飯中の女性も召喚された

魔王に話を聞く前にまず魔王かの確認をするべきか。


「あなたは?」


「質問に質問で返すとは無礼な奴よ。しかし先に名乗るのが礼儀か。我は魔領を治める第37代魔王マンスである」


「わしは人領の全ての国を代表する統治王、マニャ王じゃ」


やっぱり魔王か。


そして王様も張り合って名乗ってきたな。


マンス王にマニャ王ね。


なんか名前似てるけどとりあえずこの二人の名前は忘れない。


しかし魔王が礼儀正しくてよかった。


明らかな悪意と殺意むき出しで人間滅ぼしにかかってますといった感じの魔王ではなさそうだ。


言葉も通じるようだし、まずは挨拶しないとダメか。


この手の世界では苗字があるのは貴族だけみたいなのが多いが魔王は名前だけだったな。


苗字という概念がない可能性もあるからとりあえず下の名前を言うか。


今更だが俺の名前は誠仁(セイジ)だ。


苗字はまあどうせ意味をなさないからいいだろう。


元の世界では苗字で呼ばれてて名前で呼ぶのは家族や親戚、少ない親友くらいのもんだ。


他人に名前で呼ばれるのは正直恥ずかしいがまあ変に思われるよりはいいだろう。


「こちらこそ失礼しました。私は地球という世界から来たセイジと申します。残念ながら神の作りし古の神獣ではないかと」


地球て惑星名で世界名じゃないけどいいか。


そもそもこの世界に惑星という概念があるかわからん。


太陽らしいのはあるから地球同様ここも惑星なのかな?


実は同じ宇宙に存在するだけの遠い惑星だったりするのか?


まあ考えてもわからないものは放置だな。


あとさっきの質問にもちゃんと答えておかないとな。


後ろからふぐぅ!って悲痛な叫びが一瞬聞こえたけど、マニャ王どんまい。


「そうか、してセージとやらよ。そなたはそこの愚王に従い我に仇なすつもりかな?」


セージじゃなくてセイジなんだけど。


俺はハーブじゃないぞ。


まあ小学生時代に転校した先でセイジって名乗ったら濁点とられてひどい呼ばれ方したときよりはましか。


面倒だしもうセージでいいや。


あと愚王って……召喚失敗したからっていじめてやるなよ。


後ろからすすり泣く声が聞こえ始めてるよもう。


「いえ、見ての通りトイレの最中に突然呼び出されただけですので仇なすつもりはこれっぽっちもないです」


「トイレ?排泄のことか?」


あ、トイレって言葉がないのか。


そりゃそうか、トイレ……正確にはトイレットか、これって日本国外での便所の呼称だしな。


便所……はさすがにあるよな?


いや、ない可能性もある前提で話したほうがいいか。


「正確には排泄をする場所を指し示します。トイレもトイレットという言葉を省略したものでトイレットで排泄をする、だと言葉が長くなりすぎるので私の世界では普通排泄する行為をトイレと呼びます」


正しくはないだろうがとりあえずこれでいいか。


というかなんで俺、異世界にきて魔王にトイレの説明してんだろ。


「ふむ……」


マンス王は洋式便器をしげしげと見つめる。


「最初見た時は玉座かと思ったが、これは排便をするための椅子なのか。椅子なのになんと高価そうなのだ。しかも素晴らしい流線形だな。見たことない材質で作られておるようだがこれは魔石のたぐいか?触ってもよいか?」


魔石って……ただの陶器なんだが。


てか魔石という単語から察するに魔法もある世界のようだな。


「マンスよ!貴様にそれを触れる資格はないぞ!こやつはわしが召喚したのじゃからな!おぬしもそ奴と口をきくでない!」


いつの間にか立ち直っていたマニャ王が再び杖を掲げてマンス王を睨みつける。


いや、召喚したからってこの便器はあなたのものでもないですよ?


もちろん俺のものでもないけれども。


それに口をきくなとか言われても礼儀正しいし話しちゃダメな理由ないでしょうに。


現状、無理やり俺をここに召喚したあんたよりもマンス王のほうが俺は好印象だからね。


「ふん、召喚に失敗した愚王がほざくな。開戦の前に驚くものを見せてやるというから何かと思えば、長い詠唱の割に現れたのはどう見ても兵士でもない人だぞ?なんなら我が真の召喚というものを見せてやろう」


開戦ってやっぱ後ろにいるのあれみんな兵士か。


俺は戦争始めるって場所のど真ん中に呼び出されたのかよ。


して、召喚を見せるとか言い出したマンス王が懐から本を取り出して何やらぶつぶつ言い始めたな。


「大いなる魔の主モルスよ。あらゆる命を狩りしその大いなる鎌で我が命刈り取る前にその御力を示したまえ。モルスの鎌より生まれし紅蓮の炎の化身インフェルムを我が僕とし顕現せよ。対価となりしは我が魔力。出でよ鎌より生まれし紅蓮の炎!インフェルム!」


魔王の詠唱が終わると同時に俺と魔王の間に巨大な炎の壁が生まれる。


横は1メートルほどで高さは10メートルを超えるような炎だ。


「あっつ!」


目の前過ぎて熱かった。


数秒燃えた後その炎が一瞬で消えマンス王と俺の前にそれは召喚された。


「「「………」」」


どう見ても便器に座った女性である。


手にはお弁当を持っていて俺同様に山を見て呆けている。


OLなのだろうか、レディースーツを身にまとっている。


察するに便所飯中だったのだろう。


OLの便所飯とか寂しいなと思っていたらこっちに気づいて目が合う。


そして反対を向いてマンス王と見つめあう。


その後正面を向いて深呼吸をしたのちそっとお弁当を閉じた。


「わははははは!マンスよ!貴様こそ大口叩いてそれか!貴様こそ愚王の極みよ!」


ここぞとばかりに捲し立てるマニャ王。


いやあんたも俺召喚してんだから人のこと言えねーからな。


マンス王は両手で顔を覆い隠し天を仰いでいる。


「あ…あの…」


混乱している女性、嘲笑するマニャ王、覆い隠した手の隙間から涙が流れるマンス王。


ほんとナニコレ。


ひとまず現状を整理するか。


トイレ中に俺は異世界に召喚されたがそこにはマニャ王とマンス王とそれぞれの軍勢がいて戦争を開始するところだった。


さらにマンス王の手でもう一人異世界から召喚された便所飯の女性。


このままだと俺とこの女性は戦争に巻き込まれるわけと。


よし、まずはそれを回避しないとだな。


「ええと、王様と魔王様。よろしいでしょうか」


俺が声をかけると二人同時になんだとこちらを向く。


「私とこちらの女性ですが戦えるようなものではありません。これから戦争を始めるようですのでよろしければ元の世界に還していただけますでしょうか」


するとこれまた二人同時に無理だと言った。


「喚ぶことはできるが還す魔法はない。別世界に無理やり送る魔法はあるが送った先が元の世界とは限らぬぞ」


マンス王が淡々と説明する。


なんてこった。


ありきたりだが元の世界に帰れないのか。


となるとまあこの世界で生きていくか別世界に送ってもらうしかないわけだけど、別世界が安全とは限らんからこの世界で生きていくのが無難か。


正直ファンタジー世界には憧れてたから全然かまわないのだけど、この女性は平気だろうか。


まあ人の心配よりもまず自分の身の心配をするか。


「では安全な場所をお教えいただけますか?これから戦争を始めるご様子ですので巻き込まれるのは避けたいのですが。」


「それも無理じゃな。ここは領境の大平原。最寄りの街まで3日以上かかり道中は魔物もでる。戦えそうにないおぬし等では1日も持つまいて」


マニャ王は真顔でそういった。


そうか、魔物でるのか。


というか、俺らだけ?


護衛はつけてくれないのか?


まあこれから戦争するなら一人でも兵士は多いほうがいいのか。


さて、困ったな。


このままじゃ戦争に参加させられてしまいそうなんだが。


「あ、あの!」


女性が意を決したように叫ぶ。


「ここはどこですか?あなたたち誰ですか?そもそもなんで私こんなところにいるんですか?」


ああ、これは理解が追い付いていないパターンだな。


いちいち説明しなくても察してほしいところだが、俺みたいに小説読み耽ったりしてないような人にはまあ理解できないだろう。


「質問はとりあえず後回しで、今ちょっと貴女の命の保証も含めた大事なお話をしているので黙っててください」


そういうと女性は黙った。


よくいる自分勝手に質問をどんどんぶつけてくるような面倒な輩ではなく、利口な人でよかった。


「では、王様に魔王様。私たちの処遇をどうなさるおつもりでしょうか?まさかとは思いますが戦わせるつもりで呼んだのだからそのまま戦えというのではないでしょうね?見ての通り私たちは戦えるような人間ではありません。しかし異世界の知識を持っています。このまま私たちを死なせるようなことがあればその知識を失うことになるうえ、あなたたちが消費した魔力も無駄になると思うのですがいかがでしょう」


マニャ王もマンス王もそんなの知るかといって戦争を始めることができるが、無駄に消費した魔力の分何かしら俺たちに期待するはずだ。


現状この二人にとって盾代わりにしかならないであろう俺らだが、一つだけ持っているものがあるとすれば知識だ。


このトイレだってマンス王からしてみれば見たことないからあれだけ興味を持ったのだろう。


であるならばそのほかの知識にも興味があるはずだ。


今はそれを見返りとして自分たちの身を守るのが先決だろう。


「たしかに、そなたたちの知識には興味があるな」


「そうじゃの。それには同感じゃ」


よし、食いついた。


これで身の安全を得ることができる。


俺はそう思っていた。

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