第15話 人領へ
着替えを終えた俺はレイシェンと共にテントを出た。
憔悴してるって?
気のせいだよ。
もう……ほんと……許してください。
「あなた。その……大丈夫?」
「うん……大丈夫」
いや、本当は大丈夫じゃないけどね。
ひとまずカレンと一緒に森へ向かう。
目的は山菜探しだ。
リョウトの手記をもとに食べられる野草を探しに行く。
魔物が出る危険性もあるので俺にはスカルファスが、カレンにはレイシェンがついてくれることになった。
カレンたちと別行動でもいいのだが、カレンは何が食べれるかわからないので一緒に行動する。
「あなた、これは食べれる?」
「うん。たぶんそれがヘキサ草だね」
カレンが最初のヘキサ草を見つけてから一時間くらいだろうか。
冬も間近だからあまり山菜はないかと思っていたが、今のところヘキサ草だけは結構見つかっている。
しかしそれ以外の山菜は皆無だった。
枯れ始めた草が多く、食べられるかどうか見るまでもなかった。
キノコなども生えてはいるが食べられるかの判別が難しい。
リョウトの手記に食べられるキノコの記述はあるものの、書かれている情報に類似するものが多々あるのだ。
下手に手を出さないほうがいいだろうと思い、結局、見た目もはっきりしているヘキサ草を集めている。
時期が悪かったな。
あらかじめイシリアに用意してもらっていた袋の半分くらいまでヘキサ草を取り、帰ることにした。
山菜とりの基本は腐らせずに食べられる分だけ取る。
若い芽は絶対に取らない。
そうすれば来年もまた同じ場所で山菜を取り続けられる。
焚火のところまで戻るとイシリアに取ってきたヘキサ草を渡す。
「まあ、こんなにたくさん取れたのですね!人領でもほとんどとりつくされて最近は全然見つからないのですよ」
人領も飢饉だから山菜は根こそぎ取られているらしい。
この辺りは領境だし龍領も近いから残っていたのだろう。
魔領の飢饉問題はカレンに食料を出してもらうということでいったんは落ち着かせているが、人領のほうも何とかしないといけない。
マニャ王の話では最寄りの街まで3日と言っていたがマニャ王が帰る場所まではどれくらいかかるのだろうか?
往復で1週間を超えるような場所だと冬が先にやってきてしまわないか?
ふーむ。
「イシリアさん。マニャ王はどれくらいで来ると言っていましたか?」
「少なくても10日はかかるかと思います」
「10日も?そうかぁ。やっぱりそうなるとこっちから行ったほうがいいかな」
「とんでもございません。セージ様にはこちらにいていただいたほうがよろしいです。まずセージ様がわざわざ人領に出向きますと魔領のほうが騒ぎ立てるかもしれません。マンス様たちに限ってそんなことはないと思われますが建前というものがございます。セージ様には常に中立でいただくためにもここからむやみにお離れにならないほうが賢明でございます」
「うーん、でもそれだとあと6日はここで来るのを待つんですよね。その間にたくさんの人が飢饉の犠牲になっているかもと考えるちょっと……」
この4日間やそれ以前からも苦しんでいる人たちがいるだろう。
それを考えると何か手助けをしてあげられるならしてあげたいのが俺だ。
「やっぱりマニャ王に会いに行きますね。カレンも一緒に来てもらってもいいかい?」
「大丈夫です」
「な……なりません!セージ様に道中何かあればわたくしたちが困ります。どうかこの場にとどまりください」
「カレンもいるし大丈夫ですよイシリアさん。それに移動もすぐできますから」
カレンなら神の言葉で特定の人物の場所まですぐ行ける。
俺とカレンで直接マニャ王のところまでいけば道中の危険なんてない。
今日中に行って帰ってこれるだろう。
「マリアスたちも異論はないよね?」
「セージ様の御心のままに。ただし戻ってきたら期待しております」
「セージ様、わたくしもお供させていただけますか?マンス王より人領との交渉を仰せつかっておりますゆえ」
マリアスが何を期待してるのかは聞かないでおく。
スカルファスは交渉でついてくるのね、OK。
レイシェンも問題なさそうな顔してるし、魔領のほうは大丈夫ということでいいだろう。
「じゃあ行ってきます。カレン」
「はい」
カレンが神の言葉を発すると一瞬で風景が変わる。
周りを見渡すとどうやら大きめの街の中らしい。
たくさんの人たちが突如現れた俺とカレンとスカルファスに驚いている。
「セ、セージか?」
商人らしき人たちと話していたマニャ王がこちらに近づいてきた。
「はい。えっと敬称いらないって言ってたしマニャ……でいいのかな。戻ってくるまでに結構かかると聞いからこっちから来ました」
「どうやってきたのじゃ?まさか時空魔法が使えるのか?」
俺はマニャ王、もといマニャにだけ聞こえるように小声で事情を説明する。
大口を開けて驚いている。
まあ定番ですな。
「とまあそんなわけで、飢饉の状況を教えてもらえますか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。ここでは人目に付きすぎる。場所を変えよう」
そう言ってマニャは商人に一度帰るよう伝え、この街一番の規模だという酒屋へ移動した。
「われはマニャ王!今この時よりここを貸し切りとする。この場にいるものの料金は支払う故、直ちに立ち去れ!」
いきなりだなおい。
でも誰も逆らわないで出ていく。
うん、さすが王様だ。
「店主よ、すまぬが果実酒を用意したら席を外してくれ」
「かしこまりました」
坊主でがたいのいい店主がすぐさま4人分の果実酒を用意して店の奥へ去って行った。
「まずはご足労いただいて感謝する」
「いや、勝手に来ただけだから気にしないで」
「うむ、それで先ほどの質問だが、食料は常に足りていない。先ほどの商人たちも食料を販売する者たちだが、飢饉を理由にとんでもない額で食料を売っておったのでな。話をしておったのじゃ」
まあ食料不足なら値段が高騰するのは仕方がない。
「飢饉の原因は?」
「野菜が疫病にかかってな。2年前からだ」
魔領と同じだな。
「肉とか魚は?」
「肉は魔物を狩る必要がある。魔領と違い人間はそこまで強くないからのう。狩りの依頼はしているが多くは狩れぬ。魚も捕れなくはないが海も川も魔物が出るから命がけじゃ。故に食料の半分は野菜で賄っている」
家畜……はいないんだったな。
となれば野菜がないのは致命的だな。
「疫病の原因を知りたいからあとで疫病になった畑に案内をお願いできる?」
「わかった。この街の隣にある畑へ案内しよう」
「じゃあ食料についてはだけど、どれくらいの量が必要なの?えっとロルット草換算で」
「ロルット草じゃな……そうじゃな。最低でも日に3000万はいるな」
魔領の3倍か。
人領の人口って思ったより少ないのかな?
「人領の人口ってどれくらいいるの?」
「人領は今1000万人ほどじゃな」
おや、魔領は30万に対して270万だったな。
1人1食3個計算だったけど、1000万人に3000万じゃ1人1食1個じゃないのか?
「1人1日3個のロルット草で足りるの?」
「肉や魚も多少なりともあるから足りるじゃろう。餓死しない数としては十分じゃ」
「そうか。でも足りないと困るだろうから出せるだけ用意するよ」
果実酒を一口飲む。
やべ、ナニコレうまい!
ライチみたいな感じだけど甘すぎず酒の強さも程よい。
あとで何で作ったか聞いてみよう。
っと酒に感動してる場合じゃないな。
「えっと、食料を出すのにどこか広い場所はある?」
「それならばこの街の広場にゆくか」
「その前に少しよろしいですかマニャ王」
スカルファスが手を挙げる。
魔領との交渉という奴だろう。
「なんじゃ?申してみよ」
「はい。魔領での飢饉はセージ様の助けにより解決しました。戦争については終戦済みではありますが配備した兵士の問題がございます。それについて相談を」
「うぬ。こちらも配備している兵がいるからのう。それに関してはそちらに問題がないならすべて解散でよいじゃろう」
要するに互いに攻め込むため準備していた各地の兵士を解散させようということだ。
じゃないと攻め込まれるという不安が民を苦しめる。
配備した兵は双方直ちに撤退および解散ということになった。
また、万が一指示に従わず攻めるようなことがあれば謀反者として各領にて罰してよいことに。
「引き留めて申し訳ありませんでしたセージ様」
「気にしないで。じゃあ行こうかマニャ」
「うぬ」
マニャに案内され大きな広場に到着。
カレンにお願いして広場が埋まるほどの食糧が入った樽出す。
何個あるのかは全く分からないけど、これだけ山盛りになっているなら足りると信じよう。
マニャが出された樽を各国に輸送するよう承認へ指示している。
しばらく時間がかかるとのことで俺とカレン、そしてスカルファスは街を見物することにした。
更新が早速1日遅れてすみません。
大切な友人が急遽癌で亡くなってしまいました。
とてもいいやつでもう二度と会うことができないのが悔やまれます。
なにもしてあげられませんでしたが、友人の分まで頑張っていこうと思います。




