第14話 ユウジの末路と着替え
ユウジは白カビらしき何かに包まれていた。
顔は目を見開きピクリとも動かない。
死んでいるのか?
「どうしてユウジが?」
「わからぬ。わしは確かに異世界に飛ばしたのだがな」
「考えられるのは異世界から時空魔法で戻ってきたか、誰かにもう一度召喚されたか。でも召喚されたのなら召喚者がいるはずだし、菌領はとても人間や魔物が住めるようなところではなかったよ。そこら中菌だらけだったからね」
某アニメスタジオに出てくる菌類が成長した森を思い出す。
きっとあのイメージみたいな大陸なのだろう。
「そやつは菌領を空中から探索していた時に大陸のほぼ中央におった。そこだけ不思議と菌が蔓延っておらず、なぜかそやつだけが菌に包まれて転がっておった」
「死んではいないみたいだけど生きてもいないみたいでね。菌を取り除こうとしてみたんだけど皮膚に根付いてるみたいで取れなかったよ」
なにそれ怖い。
生きたまま菌の苗床にされてるってこと?
むしろそんな危険な菌をなぜ持って帰ってきたの……。
「とりあえず可能ならカレンさんにお願いして菌を除去してもらおうと思ってね。そのあとユウジに事情を聴きたいんだ」
「なるほどね。カレン、できそう?」
「うん……やってみる」
すごく嫌そうだけどカレンが神の言葉を発する。
するとユウジを包んでいた菌が一瞬で消え去り、ユウジがピクリと動いた。
「う……うわぁああああ!」
「おわ!?なんだ!?」
急にユウジが悲鳴を上げながら起き上がり腕を振り回し始めた。
「落ちついて!大丈夫!大丈夫だから!」
必死になだめ、正気を取り戻したのかユウジが俺を見つめる。
「お前……セイジ!よくも!」
「動くな!また異世界に送られたいのか?神を偽りし愚か者が!!」
オルフェが咆哮する。
「だまれ!貴様こそよくもやってくれたな!くらえ!」
ユウジが威勢よく叫ぶ。
何も起きない。
それもそのはず、カレンが同時に神の言葉を発していた。
おそらく異世界送りを禁止か何かにしたのだろう。
「な、なんでだ!なぜ時空魔法が使えない!?」
「ユウジさんの才能は全部消しました。魔法も使えないようにしています。おとなしくしないなら今度はこのまま異世界に送りますよ」
カレンの言葉を聞きユウジは生命の書を取り出し、確認すると同時にへたり込んだ。
「二日ぶりですねユウジさん」
「二日ぶり?ふざけるな、俺は160年近く異世界を転々としたんだぞ?それをお前……たった二日!?それしか経ってないのか!?」
ユウジが驚いてるが俺も驚きだよ。
まさか160年も異世界を行き来してたのか。
というか異世界でも魔法は使えるんだな。
「それで、どうして菌まみれに?」
「…………」
俺が質問した途端口を噤む。
しかしカレンが神の言葉を発する。
多分”喋れ”と言ったんだと思う。
「異世界を転々としてやっと元の世界に戻ってきて神領に行ったら誰もいなかった。セイジたちが何かしたんだと思い昨日お前たちを遠くから確認した。ティテナやゴードンたちの姿も見えたから一部が裏切ったんだとすぐに分かった。だからまとめて隠していた菌領の菌でばれないように皆殺しにしようと思った。菌を時空魔法で直接体内に送ろうとしたらなぜか失敗して俺の体内に菌がくっつき意識を失った」
またとんでもないことしようとしてたんだな。
しかし失敗したとはどういうことだ?
「オルフェ、時空魔法って失敗するものなの?」
「普通はせんな。一度その原理を知れば失敗することもないと思うぞ。考えられるのは誰かが時空魔法を阻止しようとして時空魔法を使った場合じゃな」
「菌領にだれかいてユウジの邪魔をしたってこと?」
「でも僕とオルフェが見たときには人の気配はなかったけどね」
うーん、謎だ。
まあわからないものは今考えてもしょうがない。
今の問題はこっちを殺そうとしてたユウジをどうするかだな。
「取り合えうユウジをどうすかだね?」
「それ、私たちに任せてくれない?」
いつの間にかティテナたち元神領……いや、あそこは無領だったっけ。
ややこしいから召喚者でいいか。
召喚者たちが来ていた。
「いいけど、どうするの?」
「拷問する」
へ?
拷問ってなんで?
「私たち仲間にまでなぜ他の大陸を隠していたのかを教えてもらいますわよ」
「話さなくてもいいですが、その時は五体不満足で異世界に送られると思ってください」
「才能もないから、抵抗もできない」
「俺たちに話したいこと、たくさんあるよな?」
「あっちのテントで仲良くしようぜユウジよぉ」
ユウジは召喚者用のテントに連れていかれた。
なにやらうめき声が聞こえるが、俺は何も聞いてない。
「えっと、とりあえずユウジの件はみんなに任せてオルフェとリョウトさんはどうするの?」
「ああ、今度は北の大陸を見に行く予定だよ。おっとそうだ。カレンさんに聞きたいんだけどなんで僕の家、純金になってるの?」
あ、そういえばそうだった。
神領から帰る際、龍領へ寄ったときちらっと見えてたけど、純金になってたな。
「えっと……初めて才能使った時の練習で……その……何かに変えるならお金がいいかなって……」
それを聞いてリョウトは笑ってた。
「よかったら今度来た時にでも戻してくれ。扉が重すぎてね」
「ごめんなさい」
「いいって。気にしてないよ。あとそうだ。セージにも言いたいことがあったんだ」
「なんですか?」
「僕のことも敬称なしで呼んでくれよ。君は僕の命の恩人の一人だからね。いや、生みの親ともいえるかな。カレンさんがお母さんなら君がお父さんさ。だからさん付けはいらないよ」
「いや、リョウトさんみたいなでかい子供はいりませんから」
確かに若返って俺より年下に見えるがそれでも俺より人生長く生きた人だ。
ましてや偉大な手記書いた本人だし敬いたくもなるってもんだ。
「だからさんはいらないって。次付けたらパパって呼ぶからね」
「それはやめろ」
「ははっ!冗談冗談」
パパって呼んだらカレンに頼んで俺より年上の見た目にしてもらうからな。
まじで。
「それで、リョウトたちはすぐ行くの?」
「ふふ。そうだね。でもオルフェはすぐ無理をするからなぁ。少し疲れてるだろうし、一度龍領で休んでから行くことにするよ」
「わしは無理などしとらんぞ」
「はいはい。いいから僕と一緒に休もうよ。ふたりっきりでさ」
「う、うぬ。あなたがそう言うなら」
いちゃつくならはよ帰れ。
オルフェたちはすぐに龍領へ戻っていく。
こっちも休みたいよまったく。
「あなた。私たちも休む?」
「いや、大丈夫だよ。それよりも魔法を教えてほしかったんでしょ?今から教えてあげるよ」
「魔法よりも一緒に休みたい……かも」
うーん、かわいい!
カレンがいいならそうしよう。
一緒に家に向かう……はいストップ。
家にマリアスとレイシェンが入っていくのが見えた。
いろいろ危険だ。
よし、このまま外でデートだ。
そういえば近くの森で山菜探しもしたかったし一緒に行くことにした。
が、ここで問題。
服装だ。
俺はこっちに来てからずっと上がトレーナーの下がジーパンというスタイル。
カレンは昨日の晩までレディースーツだったが今朝はマリアスとレイシェンが用意した魔領の服を着ている。
布地のワンピースに魔物の皮のコルセットだ。
お互い山に行くような恰好ではない。
元の世界だったらこんな格好で行けば草で擦り傷だらけになるし、ダニなどにも噛まれやすい。
この世界にダニがいるかは知らないけどいたら厄介なのでそれなりな恰好をしたい。
カレンにお願いしてツナギ、長靴、皮手袋、虫よけネットの付いた帽子を出してもらう。
「着替えは……家じゃできないからイシリアさんたちにテントを借りよう」
二人でイシリアのもとへ向かいテントを借りる。
カレンに先に着替えさせ、入れ替わりで俺がテントに入る。
すぐ判断を誤ったと気づいた。
テント内部は整理整頓されてて寝床が3つ。
天井に紐が這わせてあり下着がぶら下がってた。
そういえばこのテント女性しかいないテントだった。
俺は慌ててテントを出る。
カレンがどうしたのだろう?という顔をしていたがすぐにはっとなり、俺が出てきた理由が分かったようだ。
「イシリアさんすみません気が付かなくて。魔領の人のテントを借りてきます」
「気になさらずとも良かったのですよ」
「いえいえ、そういうわけには」
俺は魔領のテント前にいたスカルファスに事情を説明してテントを借りる。
こっちのテントの中も綺麗に整頓されていた。
寝床は3人分だが2か所はカーテンのようなものが設置されていた。
マリアスとレイシェンの寝床だろう。
今は我が家にいるけど……。
ゴルガとラオファは帰ったためその分と思われるスペースが空いている。
ここで着替えるか。
こっちに来てから着替えてなかったし、この服は洗濯したいな。
洗濯するための石鹸とかこの世界にあるのかな?
水洗いだけだろうか?
あとで聞いてみるか。
上下全部脱いでパンツ一枚になったとき、テントの入り口が開き……レイシェンが入ってきた。
目と目が合う。
瞬間やられると気づいた。
ラオファはマンスと帰還したので魔領のテント入るさいのくだりを修正しました。




