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第1話 トイレ中に召喚するのはひどい

どうしてこうなったんだろう。


今、俺は二人のおっさんに左右を挟まれている。


おっさんたちの後ろには数万を超えるであろう軍勢が控えている。


俺は、そのど真ん中で考える人のポーズで便器に座っている。


そう、俺は異世界に召喚されたのだ。


トイレの最中に……。


時を遡るほどではないが5分前。


会社に出社してすぐ俺は猛烈な腹痛に襲われた。


「産まれる……」


元の世界で発した最後の俺の言葉を、隣の席にいる同僚であり同級生の男が無表情で受け止める。


そしてすぐさま俺は部屋を出た。


俺の会社は国が管理する施設で1つの建物にいくつもの会社が入っている4階建ての施設だ。


発足したての会社に国が一部支援をして会社の起業を助ける施設らしい。


その施設の1階にうちの会社があるわけだ。


むろん1階すべてではなく複数の個室のうちの一つを借りている。


この施設、3階以上と地下1階への階段は鉄柵で封じられている。


理由は知らない。


ただ過去に興味本位でエレベーターで3階以上に行けないかとボタンを押してみた。


『この階には止まれません』


ちょっと怖かった。


階段から行こうにも鉄柵があるし3階へ上る柵前には監視カメラがある。


地下への階段のところにはカメラが見当たらないが降りた先にあると考えるのが普通だろう。


そんなわけで俺はその先がどうなっているか知らなかった。


なぜこんな話を今するかというと、まあ想像がついているだろう。


わが身に宿る邪悪を解き放つため1階トイレに行った俺。


満室。


しかし焦らない。


2階にもトイレがあり入っている会社の数も2階は少ないためトイレは満席になっているのを見たことがなかった。


途中で悲劇を起こさないよう肛門括約筋に力を込めつつ俺は階段を上って2階へ。


すぐ目の前がトイレなので冷静に扉を開けた。


満室。


超焦った。


先ほどから出口をノックノーックとしている俺のベイビーは今にも暴動を起こす寸前である。


ここで出るのを待つか?


いや、いつ出てくるかわからん!


とりあえず1階に戻って再度トイレをみて空きがないかを確かめるんだ!


満室。


シィィイイイット!


このままでは人としての尊厳を失い同僚から可哀そうな奴という目で見られるだろう。


それだけは何としてでも避けたい。


社外のコンビニはどうだ!?


いや、俺の肛門括約筋たちが無理っす持ちませんって言ってる。


階段前でどうするか考えているとふと目に入る鉄柵。


その高さは俺の腰より少し高いくらいで飛び越えようと思えば飛び越えられる。


3階と違いぱっと見では監視カメラはない。


仮に降りた先にあったとしても色々限界だったんだと説明すれば許されるかもしれない。


そうだ許されるさ!


さっきからテンション高いし、俺は気づかないうちに正気を失っていたんだろう。


鉄作を飛び越え、階段を降り、薄暗い地下1階のトイレに駆け込んだ。


幸い地下のトイレも1階2階同様人感センサーにより自動で電気がついた。


紙も設置されている。


ズボンを素早くおろし便座に座ると同時だった。


突然の解放感。


目の前に広がる大草原。


遠くに森とマッキンリーのような壮大な山々が見える。


(ナニコレ・・・)


あたりを見回す。


右を向くと貴族らしい衣装を身にまとい、背中から黒い翼、額からは2本の角、肌は黒目の茶色で目は黄色に赤い瞳の髭の生えたおっさんが立っている。


その後ろには同じような容姿のものやアニメやゲームで見るような魔物に分類されるのがいっぱい。


正面を見て一息。


いい景色だな。


今度は左を向く。


王冠をかぶり、甲冑に身を包んだ赤マントのいかにも王様ですというおっさんが杖をかざして立っている。


その後ろには全身を甲冑に包んで騎乗した騎士団らしきものや傭兵やってますといった歩兵集団が群れを成している。


左右すべての視線は俺を捉えていた。


再び正面を向き、考える人のポーズをとる。


(便意我慢しすぎてとうとう幻覚が見えるレベルになったのか?それとも実は盛大に漏らして現実逃避してるとか?)


状況が呑み込めない。


そんな時でもあいつはやってくる。


猛烈な下腹部の痛み。


「っ!ふんっ!」


盛大に出した。


いやもう何も考えてないよね。


音とか匂いとか気にしてる場合じゃないし。


出すべきものを出した解放感から目を瞑る。


そして開ければトイレの扉が目の前に……きれいな山々が俺の目に映る。


改めて両サイドを見ると無表情のおっさんが俺の見つめている。


こんな状況でも体は素直だ。


第二波が俺を襲い間もなく俺は二度目の解放感に包まれた。


実にすがすがしい気分だった。


俺は出し切ったのだ。


この状況でも。


そして気づく。


(紙・・・・・)


左を向くと掲げていた杖を下したおっさんが悲しそうな顔でこっちを見ていた。


壁がないんだからそこに紙なんて無かった。


前かがみになりズボンのポケットをあさる俺。


普段はポケットティッシュなんて持ち歩いたことなどない俺だがこの日は偶然にも駅前で配られていたティッシュを受け取っていた。


冷静にポケットティッシュでお尻を拭く俺。


ふと昔、自衛隊で働いていたころお尻を拭くとき前から拭くか後ろから拭くかの話題になったのを思い出す。


いや、どうでもいい話だよね。


そういやポケットティッシュは水に溶けないからトイレに流しちゃダメなんだっけ。


これもどうでもいいか。


トイレットペーパーないんだし。


拭き終わった俺は極めて冷静にズボンを履き、トイレのレバーに手をかける。


一瞬流れるんだろうか?と思ったがレバーを引いた。


流れた。


タンクに残ってた水が流れたのかな?


どこに流れていったかは知らないが無事汚物の姿は見えなくなった。


よしっと。


改めて周りをみる。


広大な山々の景色は美しい。


その右に魔王と思われるおっさんと左は王様っぽいおっさん。


面倒なのでもう魔王と王様でいいか。


後ろは正面同様遠くに山々が見える。


間違いない、異世界だこりゃ。


ラノベやネット小説はよく読んでるからこの手の召喚に理解はある。


俺はトイレ中に召喚されたのだろう。


おそらくさっきまで杖掲げてたこっちの王様に。


相対してるところを見ると人間軍と魔王軍の対決前ってところだろう。


そして人間側の王様が勇者かなにかを召喚したつもりなんだろう。


召喚したのはトイレ中だった一般人30歳の俺だけど。


突っ込みどころは多々ある。


が、それは向こうも同じだろう。


さっきから両者ひと言もしゃべってないところを見るとよっぽどトイレ中の俺を召喚してしまったことが予想外だったのだろう。


とりあえずなんかしゃべんないとダメかな?


いや、そもそも言葉通じるのかな?


とりあえず話しかけてみるしかないか。


ここは素直に人間の王様のほうに話しかけるべきか?


でも召喚したのが王様なら魔王のほうに声をかけるべきか?


悩んでいたら魔王が声をかけてきた。


「貴様が神の作りし古の神獣なのか?」


魔王がニヤニヤ笑ってる。


どうやら王様のほうは神の作りし古の神獣とやらを召喚するつもりだったみたいだ。


勇者召喚じゃなかったのか。


なのにトイレ中の一般人召喚したとか相当恥ずかしいぞこれ。


振り返り王様を見ると俯いて両手で顔を覆っている。


そしてすぐに膝から崩れ落ちた。


羞恥マックスハートらしい。


とりあえずこの王様はそっとしておいてあげるか。


俺は魔王のほうを改めて見た。


まずは現状を把握することから始めるとしよう。

初めましてSnowFoxSKです。

つたない文章ではありますが読んでいただけますと幸いです。

プロローグのつもりで書いてたら16話くらいになったのでとりあえず一気に投稿します。

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