第11話 才能の片鱗再び
異世界生活4日目。
俺は大きなベッドで目を覚ます。
ひどい目にあった。
ただただ蹂躙された。
ひどい辱めを受けた気分だよ……。
隣で寝てるカレン達を起こさないようにベッドを抜け出す……ことができなかった。
起きたレイシェンが俺の左腕をつかんでニヤニヤと笑っている。
いや、何笑ってるんですか。
「おはようございますセージ様。朝からお元気ですね」
何処見て言ってんだ?
落ち着け、それは生理現象だ。
止めろ!
俺はベッドを抜け、逃げ出した。
しかし回り込まれてしまった!
「と、トイレ!トイレだから!」
そう言ってトイレに逃げ込む俺。
だめだ。
逃げ場を失っただけだ。
そもそも服がない。
全裸でトイレに座る俺とかもう……まんま考える人状態だよ!
……どうしよう。
「朝食のご用意ができましたよ!」
助かったイシリア!
イシリアまじ天使!
朝食を理由になんとか家を出ることに成功した。
「おはようございますセージ様」
「おはようイシリアさん」
貴女には心から感謝していますよホント。
「昨夜はお楽しみでしたね。しかし声をお控えいただけますか?なにぶんラナナとフェミが寝付けなかったようでして」
定番のセリフをありがとう。
そして声については本当に申し訳ありません。
全部あいつらのせいです。
俺は深々と頭を下げて謝罪する。
食事を受け取る際ラナナが恥ずかしそうにしていた。
本当に申し訳ございません。
焚火の前に座るとすでにいた神領の面々もちらちらとこちらを見ては目を逸らし顔を赤らめている。
マジですまん。
ていうかそんなに声聞こえてたの!?
「セージ。その、なんだ。昨日はすごかったみたいだがほどほどにな」
いやマンスまでマジでなんなん?
マンスたちのテントって家からは結構離れた場所にあったよね?
「えっと、マンス。聞こえてたの?」
「いや、聞こえてたわけじゃないんだが。その、お前の気持ちがなぜかわかった」
「え?」
気持ちが分かった?
感情の才能か!?
生命の書を開き確認。
『じぶんの感情を他者に共有できる』とあるがこれって自分で共有したいと思わないと発動しないん……あ。
心当たりがあるというか、うん、営んでる最中にいろいろ思っちゃってるな。
マジかよ。
え、これ効果範囲どこまであるの?
まさか世界中とかじゃないよね?
他のテントの人にも聞いてみる。
結果ある程度距離のあるテントで寝ていた魔領の兵士たちは知らなかった。
距離的にみて500メートルくらいの範囲で発動したらしい。
なにこの公開処刑。
こんな形で感情の才能の効果知りたくなかった……。
ともかく次からは気を付けないと。
感情共有あった面々がすごいこっちを気にしてる。
俺も恥ずかしくて困るから。
だからみんな忘れて。
ギクシャクしながら朝食を食べる。
とりあえず昨日のことは忘れて今日のことを考えよう。
「マンス。今日はどうする予定なの?」
「う、ごふぅ!す、すまん。今日は、その、なんだ。家の建設を終えたら畑や疫病になった作物をとりにまた魔領へ戻るつもりだ」
赤面しながら喋んな、こっちがつらいわ。
その赤面の原因つくったのお前の娘と部下だからなこの野郎。
「じゃあカレンや神領の面々もいるし、護衛は不要なので魔王五指の方たちは帰ってもらっても大丈夫ですよ」
マリアスやレイシェンも連れ帰ってください、是非。
「いや、こやつらは残す。護衛が不要なのは承知してるが人領のほうともいろいろやり取りがあるからな。われがここにのこってもいいがさすがに魔領をほったらかしにするわけにもいかんし、食料問題でやることが多い。マリアスとレイシェンはおぬしが……うぬ…‥その、なんだ。仲良うしてるみたいだしな」
黙れ魔王!
そしていちいち赤面するな!
こっちが恥ずかしいわ!
「人領とのやり取りに5人もいらないんじゃ?」
「まあ確かにそうだな。では護衛主体だったゴルガとラオファは連れて帰るとするか。スカルファスは交渉に長けているから残していくぞ」
個人的にはマリアスとレイシェンを連れ帰ってほしかったわ。
まあ当の両人は俺のそばでめっちゃ睨み効かせてるからマンスは言うに言えないのだろう。
そこは魔王の威厳というものを見せて欲しかったよ。
そんなこんなで朝食を食べ終えた俺は家の建設を手伝うことにした。
自分の家だしちゃんとお手伝いしたい。
「セージ様に仕事をさせたら我らが怒られてしまいます。どうぞ休んでいてください」
職人の方々に断られた。
しょぼくれながら焚火の場所まで戻る。
ゴードンとハクサンが生暖かい目で見てくる。
「なんだ?」
「セイジは良いよな。女性に人気で」
「好感の才能か、羨ましいな」
「いやもう好感の才能ないからね」
「なに!?じゃあなんでそんなに女性が寄ってくるんだ!?」
「そうだ!好感の才能以外に何があるっていうんだ!」
うるさいから感情の才能に変わったことを説明。
「じゃあ、何か?あのナイスバディときわどい服の姉ちゃんは素でお前が好きってことか……」
「なんて理不尽な世界だ!俺にも幸せを分けてくれ!」
いや知らねぇよ。
もう神領の女性陣にでもあたって砕けて来いよ。
ゴードンは一回砕けてるけど、いっそ塵になるまで当たって来いよ。
なんなら人領の女性陣もいるから。
ほら、イシリアさんとか。
「セージ。俺に好感の才能を付けるようカレンさんに頼んでくれ」
「俺も!俺も!」
ダメに決まってんだろ。
あと後ろちゃんと見て言えよ。
マリアベルとクスリがすごい目して立ってるぞ。
「底抜けのクズたちですね」
「才能使ってまで女性に近づきたいんですの?最低ですわ」
ですよね。
とりあえず俺は才能使ったわけじゃないから。
いやきっかけは才能だったかもだけど今は才能関係ないからな。
「じゃ、じゃあセージ。どうすれば女性に人気が出る?」
「ああ。俺もそれを知りたい」
「いや知らないから。俺何もしてないよ」
「嘘つけ!何もしてないのに女が3人もできたってか!?冗談じゃねぇぞ!」
「このほら吹きめ!正直にその秘密を言え!」
ゴードンとハクサンが絡んでくる。
ほんと面倒ですが、すぐに君たち終わるぞ。
カレンが笑顔でこっち向かってるからな。
あ、二人も気づいたか。
急に真顔になって青ざめてる。
「今すぐ死ぬのと異世界。どっちがいいですか?」
「「どっちもいやです。ごめんなさい」」
そそくさと逃げ出すゴードンとハクサン。
カレンも死と異世界の二択は怖いからやめような。
「大丈夫?あなた」
もう赤面せずに言うようになったな。
そりゃ昨日あれだけ恥ずかしい……いやなんでもない。
「ありがとうカレン。助かった」
カレンの頭をなでる。
「セイジは……好感の才能欲しい?」
「またそんなこと言って。いらないからね」
「うん……よかった」
そんなのなくても俺にはカレンがいるんだから。
これ以上なにも望まないさ。
望みすぎると罰が当たるってもんだ。
というか望まなくてもすでにマリアスとレイシェンという半分罰みたいなのが来てるんだからこれ以上は無理。
「座ろうか」
「はい」
笑顔のカレンと一緒に焚火の前に座る。
今日はもう何もしないでカレンとのんびり過ごしたいなと思った。




