第8話 魔領の飢饉は結構やばかった
家に着くとまず、マンス王が土下座した。
理由は火事の件だった。
王とは思えないほど見事な流れでの土下座だった。
いや、謝る理由はこれっぽちもありません。
むしろこちらこそごめんなさい。
だから地面に角を刺すのをやめて。
「して、セージよ。こちらの方々は?」
「神領に住んでいた者です」
「神領!?神か!」
また土下座した。
「いやいや、もう神じゃないよ。前は神を自称してたけど私たちは普通の召喚者だよ!」
「そうですわ。セージさんと同じように接してくださる?」
「王たるものがそう易々と頭をさげるもんじゃねぇぜ」
「そうだ。俺たちは神でもなんでもない。だから対等に接してくれ」
「相手は一国の王。対等はどうかとおもう。むしろ敬うべきじゃ?」
「う、クスリがいうなら」
うんうん。
本人たちもこう言ってるし、とりあえず頭上げようか。
じゃないと地面の穴が増える心配と、後ろで土下座しようと座り始めた兵士たちが可哀そうだから。
「えーとマンス王。それで今日の目的は?」
「セージよ敬称はもうよいとこの間言ったではないか。遠慮すな。今回の要件は家の改修と飢饉に関しての相談だ」
マンス王…いや、マンスだな。
マンスは前回建てた家で不足していた扉や石畳を作るための職人と材料、それから前回は人領に任せてしまった俺やカレンとマリアスたちの食料を持ってきたとのことだ。
そして飢饉に関して許しがあれば助言をもらいたいと。
もちろん助けられることは全部助ける。
そのためにも詳しく話を聞かないとね。
「感謝するセージ。気のせいかこの前よりお主のイメージがはっきりとしておるな。ふむ」
おっとそうか。
好感の才能が無くなったから俺に対して友情というよりは好意どまりになったんだな。
まだ一緒にいた人たちの変化はよくわからないが、きっと全員以前ほどの感情はないはずだ。
「まあよいか。それでセージよ。まずは何を聞きたい?」
「ではまず魔領にある食べ物と生産量。それから魔領の国民の数と食べ物の消費量をお教えください」
マンスは数名の部下を呼び、詳細な情報を教えてくれた。
魔領は現在21の部族がある。
全ての部族の頂点が王魔族。
その下に獣魔族、淫魔族、剛魔族、知魔族があり、さらにそれぞれの下に残りの部族がついている。
獣魔族の下には熊魔族、狼魔族、猫魔族、猿魔族が。
淫魔族の下には蛇魔族、鳥魔族、魚魔族、羊魔族、兎魔族が。
剛魔族の下には犀魔族、象魔族、虎魔族、鰐魔族が。
知魔族の下には鼠魔族、亀魔族、狐魔族が傘下にある。
マリアスはマンスとは違い王魔族全般を束ねているようだ。
これら部族は生態が違う以上食べる物が違う。
それぞれの部族で生産される食べ物は基本それぞれの部族用に作っている食べ物なので、消費もその部族で消費される。
獣魔族、熊魔族、羊魔族、兎魔族、犀魔族、象魔族は野菜。
淫魔族、知魔族、猿魔族、鳥魔族、鼠魔族 は果実。
剛魔族、狼魔族、猫魔族、蛇魔族、虎魔族、鰐魔族、狐魔族は魔物。
魚魔族、亀魔族は魚。
そして王魔族は雑食で各部族からの献上品を食べている。
今回の飢饉で問題になっているのは野菜だ。
2年も続く疫病で野菜の備蓄がほぼないそうだ。
人領も同じ状況らしい。
果実は樹木がやられることが少なく魔物や魚は潤沢にいるそうだが、野菜はもともと自然に生えているものを畑で増やしてきたものだ。
その野菜が2年連続の疫病でダメになり、現在は育てるための種すら僅かな状況だという。
さらにスニアの季節(冬はじめ)も近く、このままでは越冬できないものが多く出るという。
「野菜を食べる部族の民の数は?」
「約30万です」
「……1日に必要な食料の見積もりは?」
「換算野菜は何にして見積もりましょう?」
換算ということは基準となるサイズの野菜だな。
俺が知ってるのはとりあえずヘキサ草、ナルペル草、ロルット草だけどサイズ感的にロルット草が最適かな?
「じゃあロルット草で換算できますか?」
「ロルットでしたら、そうですね………………1日270万個は必要になります」
3食食べるとして1食90万、それをさらに一人でと考えると一人1食3個か。
「現在の備蓄はどれくらいですか?」
「備蓄はロルット草換算なら1000万ほどです」
え、それだけ?
全然足りてないじゃないか、というかそれだと5日も持たないぞ?
「現在は配給という形で日に1度1食分を支給している状態です」
まじか。
そんな状態じゃ隣の領地を攻めてでも食べ物を欲するだろうな。
「疫病の対策とかは?」
「疫病の対策?そんなものはないな。疫病は自然発生する。目にも見えぬしな。どうしようもない」
自然放置で病気になったら即終了か。
運だのみなやり方でよく今まで問題がなかったな、って今がその問題の時か。
「疫病になったのは全ての野菜ですか?」
「ああ。すべてだ」
全部、となるとウイルスが原因の可能性は少なそうだな。
種類が違う野菜で似たようなものだけというなら考えらるが全く違う別々の野菜全てが疫病になるというのは考え難い。
次に天気。
これは水分や日照りの問題だ。
長期間の雨季は日照時間を減らしかつ根を腐らせやすい。
「2年前から雨量が増えてるとかはないか?」
「ないな。気候の変化は毎年変わらない」
気候によるものでもない、となると後は土かな?
同じ畑で何度も育てると連作障害を起こす。
「畑は毎年同じ作物を育てるのか?」
「ああ、そうだ。我が王になってからの数百年は同じ育て方でやってきている。その前も同じはずだ」
連作障害はこの世界に無いのかな?
じゃあ何が原因だ?
これは直接見たほうが何かわかるかもしれないなぁ。
「マンス。よければ畑と疫病になった作物を見たいんだが」
「わかった。用意させる。また3日ほど待ってもらうがよいか?」
「ああ、大丈夫だ」
さて、原因究明はこれで後になった。
次は足りない食料をどう補うか。
「自然の野菜などは採取しているのか?」
「ああ、領内の分は採取しているがここ2年でほぼ採取しつくしたと言っていいだろう」
「なるほど、人領以外の他の領に食料を求めることはできそうにないのか?」
「無理だな。獣領は現在他の領と接触を断っている。というか元から交流が皆無だ。巨領も同じだ。霊領は話せるかもだが人領を通るしそもそもマニャ王がそれを試みておるだろう。しかし飢饉が続いている。つまりそういうことだ」
「そうか……」
となるとだ。
龍領に食料を分けてもらう、もしくは自然の野菜を採取させてもらうところだがあいにくリョウトと旅に出てしまった。
領同士の重要なことだからオルフェ不在の状態で勝手に決めるのはだめだろう。
神領にも食べ物なんてない。
あれ、これは詰んでるんじゃね?
「セイジ……」
カレンがこっちを見ている。
確かにカレンというチートがいるから食料の一万や二万、いくらでも出せるとは思うけど。
もともと俺が言い出したことだし、何かしら力になれないかとは思っていたんだけどまさか打つ手なしの状態とは思わなかった。
いや、戦争起こすくらいなんだから打つ手があるなら最初からやっているよな。
俺の考えが浅はかだっただけだ。
反省しよう。
素直に今回はカレンにお願いするべきだろう。
俺はその後で疫病の対策など飢饉が再び起きないように尽力しよう。
今俺にできることはそれだけだ。
「カレン、ごめんね。食料の用意をお願いしてもいいかな?」
「大丈夫です」
カレンが笑顔で頷く。
嫌な顔せず引き受けてくれてありがとう。
「じゃあマンス。食料はカレンが用意してくれる。俺のほうでは飢饉の原因究明と対策を考えるよ」
「ありがたいが、食料を本当に用意できるのか?」
マンスはカレンの力を知らないんだったな。
しかし才能は基本人に話すべきものじゃない。
とはいえこの家にいたメンツにはさらっと知られてしまっている。
リョウト生き返らしたりカンライを呼びだしたりしてるしね。
今更隠せるようなものでもないか。
「カレン。とりあえず今日の分の食料を出してあげれる?」
「わかった」
カレンが神の言葉を発するとすぐそばの空いてる場所に大量の樽が現れた。
「今日の分です」
「はい?」
マンスの目が点になっている。
まあそうなるよな。
俺はマンスにカレンの才能について説明を始める。
うう、評価いただきありがとうございますぅぅう!
ブックマークも感謝の極みですぅぅう!
この感謝を忘れずにどんどん続き書いていきますのでよろしくお願いします!
8話目にしてやっと飢饉の話に入ってきました。
まずは魔領から。
魔領の部族名が基本動物なのに五指の部族が動物じゃないのは他と差をつけるためなどの理由があります。
獣魔族は牛魔族がもとですが獣の要素の強い魔族を統べるため獣魔族になりました。
知魔族は蝙蝠魔族が元ですが名前が長いという理由から知魔族に改名されました。
淫魔族、剛魔族、王魔族は魔領では特別な種族で色々な種族の特徴を持っています。
そのため種族名はこの3つの種族だけは元から別格です。
このほかにもいろいろ設定を考えていますが半分ほど書きながら考えているので矛盾があったらご容赦を。
見つけ次第直します!
追伸 飢饉篇2話目から誤字修正しました




